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最終話『二日酔いで旅立ちます』


 カノンが、ギルドマスターから頼まれた、宝樹のダンジョンへの救援。

 俺は、それに同行する事になった。

 俺が出来ることと言えば、護衛くらいしかないのだが、「借金のアテになるなら、ついてきなさいな」という彼女からの推しもあって、それをアテにさせてもらう事になった。


 そして、エルミアちゃんを連れてこいという、もう一つの内容。 これは、エルミアちゃん自身が1番理解している事のようで、文面を読んだ時に顔が真っ青になっていた。

 アルバスという男が、どういう人間なのかはその表情1つで、手に取るように分かった。


「留守番っていう事でも、いいんだぞ? 行かなければ、会わない可能性の方が高い」

 宛先の名前は、別の者のようだが、付け足したように書かれた筆跡は、アルバスで間違いないと、エルミアちゃんがいう。 ずいぶん下手くそな字だ。 

「あんたと、どっこいどっこいで下手くそ文字ね・・・・・・」

「そんなことない」

  


 エルミアちゃんは、一緒に行くことを選んだ。

 「1人でいることの方が、よっぽど怖い・・・・・・です」

 とのこと。

「そんなに嬢ちゃんを怖がらせる奴には、俺が一発言ってやらないとな」

 斧使いのリーエンも、一緒に同行してくれる事になった。

 エルミアちゃんの事も放っておけないのも本心なのだろうが、正直な意見としては、オーク討伐報酬を使い切ってしまって、今にでも生活費を稼がなきゃというのが事実だろう。


 とはいえ、信用ある仲間が一緒なら心強いというものだ。



 俺達は、飲んだくれた日をまたいだ、翌日に出発する。 

 このネコ耳天使に初めて出会った、宝樹のダンジョンに。

 二日酔いのおっさん、2人に呆れる女性メンバー2名。

「あんたたち、揃いもそろって・・・・・・」


「「う・・・・・・うぶっ。 ずびま、ぜん」」


 俺とリーエンは、膝に手をつきながら面目ないとばかりにうな垂れる。

「このあと、馬車で行くんだけど、中で吐かないでしょ」

 今回も、歩いて行くとばかり思っていた。

 しかし、そんな貧乏旅を金を持て余している魔法使いカノン様が許すはずもない。

 ラクして行けると、普段なら喜ぶ所だが、現状の頭痛と気持ち悪さでの、馬車移動は地獄でしかない。

 


 憂鬱な気分で、馬車の停泊所まで歩くパーティ4人。 

 頭目は、カノンとしたいところだが「私そーゆうの嫌いだから」と、いつもの事ながら俺にになる。 責任って言葉、俺も嫌いなんだけどなぁ。

 俯かせがちに、歩く俺にリーエンが小さな声で俺に耳打ちする。

「実はな、今回のこの依頼、強制ってわけじゃないんだぜ?」

「どうゆう事だ? う・・・・・・まだ気持じ悪び・・・・・・」


「緊急で急ぎだし、報酬もそれなりに高いわけだよな」

「・・・・・・そうだな。 しかも、名指しって事は、少なからず上乗せもされているだろうし」

 冒険者の名指しの依頼は、指名料みたいなものが発生するわけで、カノンほど名の通った冒険者を雇うとなると、その金額も格段に上がるのだ。


「セラのお嬢に聞いてたのを、俺が盗み聞いちまったんだけど、『ライゼスの借金返済の足しにでもして』っていう条件で、これ請けたんよ」

「まじでか!」

 昨日の膝枕といい、急にこの態度の変化はなんなんだろうか。

 何食わぬ、あくまでいつも通りを貫いているカノン。

 今の会話を、エルミアちゃんは獣人の聴力で聞こえていたようで、ピクピクと耳を動かして、「ほえ~」と魔法使いの方を頬を赤らめて見ている。 ちょっと恋的なものを察した反応に見えるが、多分これは違うぞ。


 俺は知っている。 数日の恩を逆手にとって、どこかで俺にまた無茶な要求をしてくるに違いない。

 何度も引っかかっている手口だ、学習しないわけがあるまいて。

 そして、それに有無を言えぬ自分がいる事も・・・・・・。

 命を張ったり、はたまた変態者の烙印を押される事も何度もあった。

 

 だが、まあ引き換えに今の俺がいるのもまた事実なんだがな。


「口は悪いけど、やっぱいい女じゃねぇか、カノンはよぉ」

「・・・・・・ん、そうだな」

 素直に受け止めれない俺もいるが、感謝しているのも確か。


「ライゼスさん、ライゼスさん」

 聞き耳を立てていたエルミアちゃんが、いまだに顔色が回復しない俺に話しかけてくる。


「実際のところ、カノンさんとは・・・・・・その・・・・・・恋愛的なものは、あったりするんですか?」

 ぶっ込んできた。

 結構、大胆に聞いてくるのね、君。

 今のは、さすがのカノンにも聞こえたようだが、特に大きな反応は見せない。

 ここで、へたに「あるぞ~」と答えると、大体の場合、鉄拳が飛んでくる。

 ちゃんと学んでる。 学んでるぞぉ。 俺!


「ないない! あいつと俺なんて月とすっぽん。 相手にもなりゃしねぇって」


 刹那。 俺の目の前に、魔方陣が展開される。


「え、なになに!?」

「・・・・・・そうよね。 ありえないわよねぇ~。 って事は、すっぽんの私がアンタの借金の心配する必要もないってことだもんね~」


 なんで!? なんで怒ってんの!?

 なにやら、言葉の選択を誤ったようだ。

 そうか、月とすっぽんか!


「ち、違うぞ! すっぽんが俺でだなぁ」

「そうゆう事じゃないと思うぞ、ライゼス・・・・・・」

「女心を分かってないです」

 リーエンとエルミアちゃんが口々にそう言う。


「助けてください! 手伝ってくさぁぁぁぁぁ―――――」




 俺は、カノンの攻撃魔法でタコ殴りになれたのち、たまっていた酔いを吐き散らかした。

「・・・・・・ライゼスさん、ばかなんですね」

「エルミアちゃんまで~・・・・・・」

 顔をパンパンに張らした俺は、馬車の中で人生二度目の膝枕をしてもらっていた。

 なぜか怒って、そっぽを向いているカノンではなく、エルミアちゃんにだ。

「お前も女心、もう少し勉強しねぇとな」


 そんなの、俺には無縁な話なんだよリーエン。


「大丈夫ですよ~。 馬鹿で借金まみれのライゼスさんでも、私はちゃんと最後まで、返済を手伝いますから」

「えるびあぢゃ~」


「・・・・・・私のときと、ぜんぜん違うじゃない・・・・・・」

 ポソリと、遠くでカノンがなにかつぶやいたが、泣きすすっていた俺の耳には入ってこなかった。

 深く嘆息するエルミアちゃんは続けて、こう言った。

「だから、私のことも・・・・・・助けてくださいね。 この先、なにがあっても・・・・・・」

 珍しく、自分の話を持ち出すエルミアちゃん。

 その真意は、この宝樹のダンジョンでの戦いで分かる事なのだ。


「当たり前だ、マイエンジェル! どんな奴からも、守ってやるよ!」

「パンパンに張らした顔で言っても、格好良くないのよまったく」

「お前だよ、こうしたの!?」


 どんな事があっても、仲間は見捨てない。 借金も返す。

 俺は、また再び酒飲んで、笑って、踊って・・・・・・。 楽しい冒険者ライフを取り戻すのだ!



                         終わり


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