第67話『不穏な雰囲気・・・・・・です』
カノンと、そんな話をしていると部屋の扉が、コンコンとノック音を立てる。
「どちらさま?」
こそっと、俺に「そろそろいいでしょ」と目配せで、意図を伝えてきたので、俺はカノンの膝から頭をあげる。
少し名残惜しかった。
「あ、えっと・・・・・・エルミアです」
「どぉぞ」
そっと入ってきたエルミアちゃんは、俺が目を覚ましているのを確認すると、パッと笑顔を見せる。
「ライゼスさん、目が覚めたんですね! よかったー」
「心配かけて悪かったな。 エルミアちゃんも大怪我じゃなくてよかった」
「はい! おかげさまで。 あの時のライゼスさんすごかったですからね~」
「俺、あのあとすぐ倒れちゃったから、どうなったかよく分からないんだよなぁ~」
直前の事までは、なんとか覚えてはいるんだけど、後始末はどうなったのかは知らない。
そういえば、カノンからもそれは聞いていない。
「あ~・・・・・・それでですね。 受付嬢さんからお話があるみたいで~・・・・・・あはは・・・・・・」
途端に引き攣った表情に、顔色を変えるエルミアちゃん。
どうしたんだ? まだ生き残ったオークがいたのか?
もしそうなら、もう他の冒険者か衛兵に頼んでくれないかな。
俺は、もうクタクタなのだ。
エルミアちゃんに続いて、部屋に入ってきたのが、俺の担当、鬼畜の受付嬢セラさんだ。
「無事でなによりです。 オーク討伐お疲れ様でした」
そう言って、ぺこりと頭を下げ、依頼達成の報告が終わる。
「・・・・・・はぁ」
「ん?」
顔を上げたと同時に、そんな大きなため息も一緒に出たもんだから、俺も不信に思う。
「な、なんだよ。 この微妙な空気は」
見ると、カノンまで俺から目を晒して、どこ吹く風といった感じ。
「ら、ライゼスさん、あのですね、あのあと――」
「いえ、エルミアさん、ここからは私がお伝えします。 ・・・・・・慣れてますので」
なにか言葉をいいかけたエルミアちゃんに、言葉を被せて止めるセラさん。
なんか嫌な予感がする。
この呆れたような表情。
慣れている、という言葉の意味・・・・・・。
そして、なにより俺を囲む2人の仲間の哀れむような目。
セラさんは、俺に告げた。
「こちら、請求書です・・・・・・。 全部で、100万ゴールドです」
「・・・・・・――スゥ~・・・・・・―――」
面白くない冗談を受け、ツッコみを入れる前に、息を吸い込み、冷静になる。
差し出された1枚の紙。
いやいや、そんなまさかね。
「は、拝見します~・・・・・・」
報酬金を受け取る覚えはあっても・・・・・・え? そんな――・・・・・・え?
しっかりと、ギルドマスターと領主代行からの印鑑が押され、告げられた通りの金額が書かれている。
俺宛に。
俺の肩にポンと置かれた、カノンの手。
「・・・・・・そうゆう事なのよ」
それが、さっきまで優しくしてあげていた理由、とでも言いたげな魔法使い。
「ライゼスさん・・・・・・。 なんであんな事まで」
目に微かな潤みを浮かべるネコ耳少女。
「・・・・・・」
眉間にしわを寄せ、笑顔の裏側に屈強な鬼を思わせるオーラを纏った、美人な担当受付嬢。
なにがあったの!?
俺は、なにをやらかしたの!
だって、豚倒したじゃん。
お礼言われるはずだろ!?
「どぉぉぉゆう事だぁぁぁぁぁ――・・・・・・」




