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第65話『膝枕です』

――♦――


 柔らかい・・・・・・。

 俺が、どれくらい意識を失っていたかは分からないが、どうやらオークを倒した後、誰かにギルドまで運んできてもらったみたいだ。

 うつらうつらと、意識を取り戻した俺は、まだ目を開けていないので、全ての状況は把握できていない。


 確かなのは、自分の身体が横たわっている事。 少し遠巻きに、いつも通りのギルドの騒々しい声が聞こえている。 多分、客間かどこかに寝かされているのだろう。


 あとは、この俺の頭を優しく支えているものに関してなのだが。

 たぶん、これは膝枕というやつではないだろうか!

 間違いない。 経験はないんだが、これはどう考えても人肌だ。

 かいがいしくも、俺の体調を気遣ってくれた心優しい人。

 俺が、思い浮かべる限りでは、エルミアちゃん、セラさん、シルナ? は忙しいだろうから、それはないか・・・・・・。


 エルミアちゃん・・・・・・。

 そうだ! たしか、オークに攻撃をされて、怪我して・・・・・・。 それで、それに俺はキレて。

 俺は、頭の中で状況を整理する。


 リーエンも一緒だったわけだし、こうして俺も無事なのだから大丈夫だとは思うけど、やっぱり気になる。

 でも、この心地よい膝枕をもう少し堪能していたい気持ちもあるわけで・・・・・・。

 うっすらと目を開け、このやわっこいクッションの主を確かめる。



「・・・・・・のあ!? カノン!?」



 意外な人物の太ももで、俺は思わず声を上げてしまった。


「あら、気づいたのね。 あんた、倒れたときに頭を打ってるから、もう少し安静にしといた方がいいわよ」

「お、おう・・・・・・」

 なんだよ、いつもならこんな事してくれる奴じゃないだろ。

 この部屋には、いま、 俺とカノンだけのようだ。


「はやく退け、とか言わないんだな」

「一応、怪我人のあんたをそこまで邪険にしないわよ」

「こんな事、今までしてくれた事ないだろ・・・・・・」

 過去に、本気で死にそうになった時も、治癒魔法かけて、はい終わりだった事を今でも記憶してるぞ。

「ま、たまにはね」

「そうか・・・・・・」

 


 そこで会話が途切れてしまう。

 二人きりになる事は、今までも何度もあったが、こんな甘塩っぱい雰囲気になるのは初だ。

 なんか・・・・・・こそばゆいな、こーゆうの。

「他のみんなは? エルミアちゃんも怪我してたろ。 あと、リーエンも」

「リーエンは、そこの酒場でもう騒いでるわ。 エルミアも、骨に異常はなかったから、治癒魔法ですぐ治ったわよ。 もう痕も残ってない」


「そりゃ、よかった。 さすが」

「今は、リーエンに付き合わされて、同じく酒場でご飯食べてるわ。 お腹鳴らしてたから。 おっと、これは言わないでって言われてたっけ」

「言っちゃったよ。 まぁ、別に聞き流すけど」


そのまま、しばらく俺を雑に扱う事もなく、そのまま膝枕を続けてくれた。

改めて、近くで顔をみると、やっぱり美人ではあるなと思う。

いまだに特定の相手がいないのは、あの強烈なまでの強気な性格ゆえだろうが。


「なによ。 あんまり人の顔みないでちょーだい。 今更でしょ」

「んあー、まぁ、そうなんだが。 でも、優しくされると、見え方も違うもんだな、と」

「なに? たかが膝枕ごときで惚れそうになった?」

「そーゆう言い草されると、全くトキメかなくなるんだがな」


 カノンとは、付き合いも長いが、恋愛的な意味での関係は一切なかった。

 まぁ、むか~し、出会って間もない頃は、少し期待したこともあったりしたが、そんな緩徐はすぐに消え失せていったっけ。


「そーいえば、お前、ギルドマスターに呼ばれたんじゃなかったっけ?」

「うん、まあね。 遺跡の事、バレてたわ」


「だろうな。 いつも通り、他言はしないんだろうけど」

「そうね。 あとは、宝樹のダンジョンに行く事になったわ」

「へぇ~。 そうか、1人でいくのか?」


「いえ、パーティは組んでいくつもりなんだけど・・・・・・」


カノンにしては、歯切れが悪いな。



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