第64話『ギルドマスターの頼み事です』
ギルドマスターからの呼び出しに応じていた私、敏腕魔法使いカノン。
家名もあるけれど、正直思い出したくもないので、あの家を飛び出してから名乗ったそれを名乗った事は無い。
「いや、すまんな。 忙しいのに急に呼び出して」
ギルドマスターは、机に肘をつき、両手を重ねる、
いかにも、といった風貌と威圧感を醸し出している。 かつては、彼も冒険者だったとか。
「いいのよ。 ちょうど、帰ってきたとこだったし」
ギルドには、ライゼスが請けた単なる配達の依頼の同行とだけ伝えてある。
でも、
「で? 遺跡の中は楽しかったか?」
やっぱりね。 さすがに、バレてたか。
私達の後を、遺跡への侵入直前まで何者かの魔法が追跡していたのを知っている。
十中八九、検討はついていたのだけれど。
「・・・・・・はぁ。 そんな怖い顔で見ないでよ。 一応、私はレディーなのだけど?」
「レディーだと? 堂々と国の衛兵にちょっかいを出しておいて、その言い草はあまり笑えんな。 お前ほどの魔法使いが、そう易々見つかるとは思っていないがな」
「なら、放っといてくれていいじゃない」
「ギルドから、犯罪者が出たとなると、わしが国から咎められるんだ。 危ない橋を渡るのは程々にしろと、あれほど・・・・・・」
ギルドマスターお得意のネチネチとする説教。
立場上、こういう場を設けないといけないんだろうけど、早く本題に入ってほしい。
小言をはいて終わり、という事はまずない。
「――であるからな、お前も他の冒険者の見本になるよう」
「分かったぁ、分かりましたから、早く用件を言ってちょーだいよ。 耳が疲れちゃうー」
足をバタバタさせて、子供さながらに駄々をこねてみせる。
綺麗にフローリングされた床をバンバン踏む私を見かねて、
「わ、分かったから! 昨日、床にワックス塗ったばかりだから、あんまり汚すようなことするんじゃない」
「だって、ギルドマスターがいつまでもグチグチ言うから~」
「お前が、そもそもの発端だろうが・・・・・・」
諦めたのか、大きなため息をつく。
年相応に薄まった頭をぼりぼりと掻き、本題を口にする。
「まぁ、それでお前に頼みたい事があるんだがな」
「はいな」
こっちもそのつもりで来ているのだから、別に出し惜しみしなくてもいいのに。
「宝樹のダンジョンは知ってるよな?」
「えぇ、もちろん。 ここ最近、よくそこの名前が上がるわね」
ライゼスとエルミアが出会った場所で、先の『チギの遺跡』とも繋がりあるドライアドのオリナが言っていた。
そういえば、あの子あの後、どうしたのかしら。
「それで? そこに行けって事よね、その言い方は。 良いわよ別に。 なにか捜し物の依頼でもあったの?」
「うむ・・・・・・。 カノン、お前にも頼みたいのだが――」
「?」
――♦――




