第61話『何もないです』
「心配するな! それよりも、早くその子を安心させてやる事の方が大事だ」
泣き出さないだけでも、偉い女の子だ。
遠目からでも、まだ5~6歳くらいの女の子だと判断できる。
俺があのくらいの歳の頃は、ゴブリンくぉ見ただけでも、しょんべんを漏らしていたもんだ。
しかし、先頭を突き進むオークが、もうエルミアちゃんたちのすぐ側まで迫っている。
彼女達からして見れば、大きな壁が迫っているようなものだ。
抱きかかえたままでは、エルミアちゃんも自慢の瞬発力は出せまい。
盾にできるものも装備していない。
軽装のデメリットが、これだ。
このままでは、格好の餌食になってしまう。
「おい! ライゼス! お前、なんか飛び道具とか持ってないのか!?」
女性2人のピンチに、声を荒げるリーエン。
「・・・・・・ないっ! くっそ、どうする」
飢餓状態のオークを止めるには、どうしたらいい。
次のターゲットを絞ってしまったこいつらの、気を変えさせるには・・・・・・。
「リーエン、 食べ物とか、あと強烈な臭いのするアイテムとか」
せめて、その類いがあれば、可能性はある。
それをエルミアちゃん達から、少し離れたポイントに投げる。
それくらいしか・・・・・・思いつかない。
走りながら、雑嚢を手探りにかき分けるリーエン。
俺は、探すまでもなく空っぽだ・・・・・・。
苦し紛れに、まだ到底使い物にならない、ドライアドの能力に頼ってみる。
なかなかイメージが湧かず、上手く発動する事が出来ない。
「・・・・・・なんっちゅー役に立たねぇ力だ!」
チギの遺跡で、不本意にも手に入れた余計な能力。
面倒な命運を託されたが、当人のオリナも言っていたように、そんなものは気にするつもりはない。
くれるならもらうが、必要な時に使えないなら、ないのと一緒だ。
この精霊の力は、本能とコツと言っていた。
そんな大雑把な説明じゃ、なんもわかんねーよ。
「あぁ、くっそぉ! 俺もなんにもねぇ!」
リーエンも、使えそうな物はないようだった。
彼も、たまたまこの場に居合わせただけ。 準備周到で挑めているわけではない。
そんな葛藤をしている間に、エルミアちゃん達にオークの魔の手が迫る。




