第60話『取り残されてます!』
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「ライゼス―。 まだまだ動けるじゃね~の」
「あったりまえだろ。 腐ってもまだ現役だボケぇ」
とお互いに鼓舞し合いながら、なんとかオークの数を減らしている。
半分ほどまで数が減ってきた。
「それにしても、あの嬢ちゃんすげぇな。 息切れ1つしてないじゃね~の」
「若さって、こわいな」
ケタケタ笑いながら、彼女の戦いっぷりに感心する。
今のところ1番、オーク討伐に貢献しているのは初見である、あのエルミアちゃんなのだ。
素早い動きで、地面を蹴りながらオークの巨体を翻弄している。
目を回しながらも、足下を動き回るネコ耳の獣人を屠ろうとするも、オークはまるで追いつかず、気付けば倒されている。
俺とリーエンも、力押しで倒してはいるものの、あそこまで動き回れる体力があるかと聞かれると、頷ける自信はない。
新調したバスターソードの使いやすさは、さすが腕の立つ鍛冶屋シルナと太鼓判を押せるほど。
色々とパワーアップして、新しい性能までつけてくれたのに、普通に戦う分には、以前となんら変わらない安定ぶりだ。
「つっても、いくら頑張ってもこうも頑丈だと、嫌になるな。 奴ら、他の積荷まで手を出し始めたからな・・・・・・」
オークは、最初に吸い寄せられたギルド運搬用の荷馬車の中身を食べ尽くし、他の馬車に動きを進める。
「ライゼスさん! あっちの馬車に小さい女の子がいるみたいです!」
「なに!?」
それは、今まさにオーク集団が標的に向かっている先だった。
やけに食欲に飢えた状態のオークは、普段よりさらに見境がない。
ここまで、多勢で集まる事態がおかしいのだが、それは今考えていても仕方ない。
その腹を満たすためなら、人間だろうと鉄くずだろうと、口にしてしまう食魔の権化。
「逃げ遅れた子がいたのか・・・・・・」
「ったく、親はなにしてんだ!」
「私が、あの子を助けてきます。 今からでも、先回りできるはずです」
確かに、彼女の俊足なら間に合う距離だ。
「頼む! フォローする! リーエン、急ぐぞ」
「おうよ」
ドスン、ドスンと、意思なきゾンビのようにこの惨状を突き進むオーク。
非力な少女が、この場に居るとなると、ゆっくりとしているわけにもいかなくなった。
少なくとも、取り残された少女を助けたら、エルミアちゃんには一旦、その子を街へと連れて行ってもらわないといけない。
俺とリーエンは、その場の敵から、一時撤退し、進行する側へと走り出す。
こんな時、遠距離の支援があったら、と考えてしまう。
「ははっ。 カノンのありがたさをこーゆう時に限って分からされるよ」
「脳筋コンビの悪いとこだぁな」
俺らが、集団の後方に追いついた頃に、エルミアちゃんは見知らぬ少女に手を差し伸べるところだった。
泣くのを必死で堪えていたのだろう。 小さな身体を震わせながら、目をギュッと瞑っている。
「もう大丈夫だからね。 おねーちゃんが、守ってあげるから」
「エルミアちゃん! そのまま、街に向かってくれ! あとは、俺達でなんとかする!」
「ライゼスの言うとおりだ。 その子をかばいながらは、効率的じゃない」
「でも・・・・・・大丈夫ですか!? まだ、こんなに残ってますよ」
彼女自身は、かばいながらでも戦えると考えていたのだろうが、そうゆう無茶は身を滅ぼしかねない。
俺もリーエンも、長い冒険者生活の中で、似た場面を何度も経験して来ているからの、撤退命令だ。




