第6話『エルミアちゃんと再開です』
「て、天使じゃないですよもう。 あっ、でも助けてくれてありがとうございました」
深々と頭を下げてお礼をいうエルミア。
「いやあれは鬱陶しいよな。 よく耐えてたな。 怪我はないか?」
「はい、なんとか。 掠り傷程度なのでポーションでなんとか」
「そりゃよかった。 でもなんで一人で?」
確か昨日は仲間がいるような事を言っていた気がするんだが。
「あ、えっと・・・・・・それは、その、はぐれちゃっ――」
「グォォォッォォガガァァァ!」
エルミアの声を遮って、親玉のキングドロカラスが喉を鳴らす。
カラス独特の黒い両翼を広げて、重い腰を遂に上げた。
枝から足が離れ、翼からは泥がはじけ飛ぶ。
「おっと、動きだしたか」
「はわわわ」
「話の途中だったけど、ひとまず中断しよう。 エルミナちゃんは、奴を目的でこのダンジョンに?」
もしそうならターゲットがかぶる事になる。
「いえ、たまたま襲われてしまって。 一人じゃ勝てる訳もないので本当に駄目かと思いました」
「そうか。 分かった、ならもう行って良いよ。 俺が一人で相手をする」
「えっ!? そんな無理ですよ!」
無理でもなんでも、こいつを一人で倒して依頼を達成しないと借金返せねぇんだよ。
それに、他のドロカラスの頭の悪さをみて分かるように、こいつもどうせ図体がデカいだけのカラスに変わりない。
1人でも平気だろう。
「わ、私も戦います。 助けてもらって、しかも1人で逃げるなんて出来ません!」
「駄目だ。 君では、こいつと戦うには早すぎる。 俺に任せたまえ」
報酬金だけでもギリギリみたいなんだよ。 山分けできないんだよ。
「大丈夫さ。 俺はこれでもベテランなんでね」
本当の事は言わない。 そんな格好悪い事言える訳がないからね。
「でも・・・・・・でも・・・・・・」
エルミアは、よほど責任感が強いのだろう。
それでも、なんとか俺を手助けしたいようで、その場でモジモジしている。
「気持ちはありがた――」
「ゴォォォォガァァ!」
遂に、キングドロカラスが俺とエルミアを目がけて急降下してきた。
「危ない!」
俺はエルミアを敵の攻撃範囲から外すために、ドンと押した。 俺の視線は、キングドロカラスを捕らえている。
むにゅっとした。
彼女を押した時に手にむにゅって、柔らかい感触があった。
やっべ、多分おっぱい触っちゃったよな俺。 やっべセクハラじゃん。
そんな事を思っている隙に、キングドロカラスの攻撃が俺のすぐ手前まで迫っていた。
「こんなろっ!」
俺は真っ向勝負で、迎え撃つ事にした。
力比べといこうじゃないか。
そして、俺と急降下で加速する大鳥が衝突した。
「でぇぇ~・・・・・・い」
見事に俺は吹き飛ばされた。
しかも、腹部に激痛が走った。
これは、やばいぞ。 思っていた以上に攻撃力が高い。
泥まみれの手でクチバシを掴もうとしたが、ぬるっと滑り掴み損ねた。
クチバシは俺のヘソ辺りをクリティカルヒットしたのである。
「ぐあ。 お、お前、俺のヘソの穴がデカくなったらどう、責任とるつもりだ」
まだ冗談が言えるくらいには大丈夫だ。
「ライゼスさん!」
エルミアが、吹っ飛んだ俺の元へ駆け寄ってくる。
女の子に心配してもらえるなんて、幸せだぜ俺は。
「やっぱり無理ですよ。 1人で戦うなんて。 私、冒険者は駆け出しって言いましたけど、それ以前に戦闘経験はありますから。 なんとか力になれるはずです!」
「だめだ!」
それは駄目だ。 駄目だ駄目だ駄目だ!
「なんでですか!?」
「報酬を山分けしたら、借金返せないんだよ!」
なかなか引き下がらないエルミアに言ってしまった。
ぎゃああ、恥ずかしい情けない!
俺は、カッとなって言葉にした本音に悶絶する。
顔を両手で覆った。 情けない顔を見られたくない。
余計に顔は泥だらけになった。
一方でキングドロカラスは、飛んでいった俺にゆっくりとにじり寄ってきている。
その内、次の技を仕掛けてくるはず。
もう本音は言った。 恥ずかしさを俺は脱ぎ捨てる!
「ということで、俺はどうしてもこいつを倒して報酬金をたんまり頂かないといけないんだ。 察してくれ」
10代の女の子にすら、大人の威厳を保てない俺まじかっこ悪い。




