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第5話『ドロカラスの集団が襲ってくるのです』


「やああん、もう。 ったぁ!」


 女の子のようだ。 俺と同じで、泥まみれになっていて素顔が確認できない。


 魔法で一掃しないところを見ると、彼女も近接型の職業かもしれない。


 「どうやら親玉は、子分のドロカラスに獲物を弱らせてからトドメを刺すつもりだな」


 モンスターにしては、ずる賢い作戦を立てるじゃないか。


 あの子もキングドロカラスを狙って、挑んでいるのか? それも俺と同じようにソロで?

 たまたまエンカウントしたって事もある。


 どちらにしても、あのままじゃまずいよな。


 俺は、足下に転がっていた小石を拾う。


 それをドロカラスの群れの一匹を狙って、投げつける。


 ひゅっと一瞬音を鳴らし、線を引くように飛んで行った小石は、見事に命中。 貫通した。


「グェッ・・・・・・ピ・・・・・・」


 自分に何が起きたか分からないままに、そいつは絶命する。

 どうだ、ライゼス様の筋力から放つ弾丸のような「ただの小石投げ」の威力は! 

 


 隠れているつもりもなかった俺。 

 一斉にドロカラスの群れは動きを止めて、こちらを見る。


 親玉であるキングドロカラスも、その大目玉をギョロリと方向転換させる。


 うえぇ。 気持ち悪い。


「ゴォォォォガァオォォ」


 とキングドロカラスが大きいクチバシを開けて、野太い声で叫ぶ。

 それに同調して、女の子を標的にしていた群れが俺にターゲットを変えたようだ。


 低空飛行を保ったまま、まとめて襲いかかってくる。


 まぁ、とりあえず彼女から意識を外せたのは良かったな。


「「ガァガァガァァァ」」


 一番のりで俺の間合いまで辿り着いたドロカラスは、自慢げに鳴く。


「なんか喜んでるみたいだが。 おめでとさん、お前が一番のりであの世行きだ!」


 バスターソードを地面に突き刺す。


 それを軸にして、俺は回し蹴り繰り出す。


 勢いよくドロカラスは吹き飛び、後方の数匹を巻き添えにする。


「馬鹿正直に突っ込んでくるからだ」


 その攻撃を見ても、絶え間なくドロカラスの群れは続いてきた。


「おうおう、ビビるって事を知らないのか。 勇敢なのかそれとも馬鹿なのか?」


 俺は、クチバシで突いてくる敵を蹴りと拳で攻撃していく。

 駆け引きをしらない攻撃なんて、俺に当たるわけがない。


 その前に、蹴散らしてしまえばいい事だ。


 おっさんだってな、まだ体力はあるんだ。 まだまだ来てみろ!


「おーい、そこの女の子。 今のうちに回復するか逃げな!」


 親玉は、まだ最初確認した場所から見下ろしているだけ。


「あ、あの。 大丈夫なんですか?」


 聞いた事のある声だな。 泥まみれだし、少し距離あるから誰か分からない。


 とりあえず。


「大丈夫大丈夫、これくらいの雑魚なら一人で片付く。 剣を使うまでもないさ」


「――すごい」


 話している間にも、鬱陶しいほどにツンツンしてくる。


 ツンツンツンツン――。

「ガァガァガァ!」

 ツンツンツンツンツンツン――。

「ガァガァガァガァ」

 ツンツンツンツンツンツンツンツンツン――。

 ツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツン。

 

「うわぁぁぁ! うぜぇぇええええ!」


 今しがた「剣を使わなくても大丈夫」と言ったが、どうにも我慢できない。


「お前ら、泥やら唾やら一緒に飛んでくるんだよ!」


 ダメージこそ皆無に等しく俺には効いてないのだが、ひっきりなしの泥と唾の汚物のオンパレードに堪忍袋が爆発した。


 地面に突き刺していたバスターソードを引き抜く。


「お前らぁ、覚悟しろよ。 ヨダレ掛けつけて面倒みてやる気なんて、俺は一切ないからな」


「「ガァァ」」


 俺は走り出し、ドロカラスから距離を取る。

 もちろん追いかけてくる。 俺の急な攻撃スタンスの変更で、一瞬こちらが早く動きを先行できた。 


 距離を取る事に成功。


 一本の枯れ木の幹を、バスターソードで一撃。


 ドガーン。


 低い位置を飛んで追いかけてきたドロカラスの半数を木の下敷きにする。


「「グキョッ!?」」


 倒れた枯れ木に飛び乗り、間髪なく後方の余り者に俺が剣を振る。


 近くにいた輩は、その刃の餌食になる。

 

 更にその斬撃は威力を落とさず、空中で飛ぶ。


 直接触れていない敵も同様に刈り取る。


「おっ。 ラッキー、結構減らせたんじゃないか?」


 上空にも2~3匹残っていたが、もう攻撃をしてくる様子はない。

 親玉の方に戻るでもなく、各々に飛び去っていく。


 

 とりあえず雑魚は片付いたみたいだな。


 そういえば、女の子はどうした? ダンジョンにいるという事は冒険者のはずだよな。


 視線を巡らせると、枯れ木の影に隠れていた。


 タオルで泥を拭いたみたいで、その姿に見覚えがある理由がわかった。


「あっ! 君は串焼きを恵んでくれた天使じゃないか」


 猫の獣人のエルミアちゃんだ。


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