第58話『飲み仲間が先に戦ってました』
北門へ辿り着くと、慌ただしい人の行き交いになっていた。
検問を終わっていない馬車も、オークのせいで一時的に街へ非難させてしまっている。
だが、それ以上先に行かせるわけにもいかないため、たくさんの外からの人間が北門周辺でごった返しているのだ。
「おおっと。 これは、なかなか穏やかじゃなさそうだな」
「オークは、街の外にいるんでしたよね。 さすがに、そんな所でこの人達を待たすわけにもいかないですから・・・・・・」
門は閉まっていて、俺達のいる街の中からでは、外の状況が分からない。
街の管理を任されている役所の人間が、複数人で対応しているが、まだまだ事態の収束には時間がかかりそうだ。
「あ。 ライゼスさん! なんでこんな所に?」
そんな中、声をかけてきたのは、ギルドで俺の担当受付嬢をしてくれているセラさんだった。
「この騒動を耳にしてな。 ちょっと様子を見に来たんだが・・・・・・」
実際は。新しく新調したバスターソードの腕試しができると思っての事なのだが。
この忙しそうな雰囲気の中、そんなのんきな発言ができそうもない。
「私も、検問や誘導の人手不足に、かり出されてしまいまして」
「どうりで、ギルドに帰ってもいないわけだ」
「すみません。 配達の依頼は完了したみたいですね。 申し訳ないですけど、その報酬の対応、もう少し待ってもらえますか」
「この様子を見せられちゃあ、嫌だとは言えんだろ」
俺もそこまで鬼じゃない。
まぁ、ご機嫌だからっていう理由も少なくともあるには・・・・・・ある。
「ありがとうございます。 今、ギルドでオーク討伐の依頼を張り出していると思うのですが・・・・・・」
「その依頼は、俺達が請け負った感じになってるぞ」
今頃、カノンがギルドに行って、受注手続きをしている頃だろう。
そうセラさんに伝えると、
「カノンさんがやってくれているなら、安心ですね」
「俺だと、違うみたいなニュアンスに聞こえるのは気のせいか?」
「あはは。 気のせいですよぉ。 深読みしないでください。 本音が漏れちゃいますよ、も~」
それ、もう本性出まくってるからね?
今の最後の一言めちゃくちゃ余計だった。
「でしたら、正式な依頼という事で。 街の外で暴れているオークの討伐を、よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をする。 ギルドカウンターでの対応と同じで、こんな時でも律儀な人だ。
普段から、仕事に真摯であるのが分かる。
「あいよぉ。 でも、ちゃんと報酬金は弾んでくれよ?」
「それは、それです。 特別待遇はしませんよぉ。 だって、ライゼスさんに1度でも甘い顔をすると、調子に乗っちゃいますから」
「・・・・・・どれだけやらかしてるんですか?」
ほらぁ、エルミアちゃんにも、軽く引かれてるじゃん。
「まぁ、いいや。 それで? オークの数はそれくらいなんだ?」
頭を切り替えて、本題の討伐対象の数だ。
「今、その場に居合わせた他の冒険者の方も、戦ってらっしゃるんですけど・・・・・・」
なんだ。 もう先に退治してくれている人間がいるのか。
だったら、俺が出る幕はそんなにないかもしれないな。
「オークの群れっていっても、10匹もいないだろ。 あいつら、集団行動するようなイメージないし」
「それが、30匹は軽く超えていると、さっき報告を受けまして」
「30だと!?」
なんでそんなに。
オークは、低知能でこそあるが、怪力が自慢の厄介なモンスター。
しかも大食らいときた。
「なにか、オークの好きなものでも積んでたんでしょうか?」
エルミアちゃんの疑問がもっともだ。
「あいつらの好物ってなんだ。 なんでもかんでも、考えなしに食べるような奴らだぞ?」
昔、俺がオークと交戦した際に、誤って雑嚢を落としてしまった事がある。
その中には、確かにパンは入っていたのだが、その他はナイフやその他冒険者用のツールしかないはずだったのだ。
なのに、その時のオークはそれも含めて、ガツガツと平らげていたのを覚えている。
ナイフで口を切っても、なお、暴食していたのには、さすがの俺も顔を引き攣らせた。
「襲われた荷馬車には、ギルドへの食料などが積まれているはずなんですが、どうやらその中にモンスターを引きつける効果のある果物があったようでして」
「なんでそんなもん・・・・・・」
「ギルド経由で、加工してアイテムする事もありますから、多分それ関連でだと思います」
囮作戦の時なんかには、モンスターの注意を引きつけるためのアイテムがある。
それの原料なんだろう。
「わかった。 とりあえず、俺達は急いで現場に向かう。 門が閉まってるけど、どうしたらいい?」
「はい。 今は、門の上からロープで下りるようにと」
「なかなか雑な参戦になりそうだな。 おっけー、行ってくる」
「行って参ります!」
「お気をつけて!」
セラさんを背に、俺とエルミアチちゃんは門の内側から階段を上る。
そして、見下ろした先には・・・・・・。
「うわぁ~・・・・・・」
「初めて見ましたけど、ちょっとグロいですね」
躍起になって、件の果物を取り合っているオークの集団。 その数、30匹どころではない。
先に戦っているという冒険者が、その一部とやり合っているのが見える。
「アイツは・・・・・・」
「お知り合いですか?」
知ってるもなにも、俺の飲み仲間の中でも、1番親しくしている人物だ。
「俺の酒飲み仲間だ。 良い奴だぞ」
「なら、急いで助けないと!」
ロープの先についた鉤をしっかりと壁の間に食い込ませる。
「さて、豚共! ライゼスさんの登場だぁ!」




