第57話『それ以上は言えません』
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私は、ライゼスさんの相棒であるバスターソードの金額を見て、目を丸くした。
これを払うくらいなら、彼本人の借金を返してあげた方が、安く済むのでは。
「けっこう、するわね・・・・・・」
と、口では言うが、カノンはさらっとそれを支払ってしまった。
どこから出したのか、高級そうなお財布からたくさん金貨が出てきた。
カノンさんの性格上、お金にも厳しいのかなと思っていたので、なにも言わずに支払う事にも、意外だと思った。
それを悟ったかのように、私に言う。
「なに驚いてるのよ。 シルナは、ぼったくりするような三流者とは違うのよ。 一流には、それに見合った対価を払うのは当然よ」
まるで、自分の心内を見透かされたような答え方だった。
「カノンさんは、毎回おっきな仕事をくれるから、ウチも助かってるんだよ♪」
Win-Winな関係なら、それは良いことなんだけど。
自分には、まだ手の届かない羽振りの良さだ。
ライゼスさんは、こちらをあえて見ないようにしているのが、手に取るように分かる素振りをしている。
いや、これは見ないで正解かもしれない。
私だったら、こんなに積まれたお金から成り立つ武器を、振り回したりなんか出来ない。
部屋に飾って、家宝にするかも。
それを知ってか、あえて知らないふりをしるのか、平然と店前の小道でバスターソードを素振りする中年剣士。
お金持ちの魔法使いさんは、ギルドからの呼び出しに応じて行ってしまった。
私達は、シルナさんから教えてもらった騒動に向かって、走り出す。
その道中、おもむろにライゼスさんの顔をチラリと見る。
その嬉しそうな笑みは、まるで新品のおもちゃを買ってもらった子供みたいだ。
普段は、ダメな大人ぶっている彼の、たまに見せるこーゆう表情が可愛くて仕方ない。
「顔に出てますよ~」
一回り年下の私にからかわれて、ライゼスさんは、即座に顔を作り直す。
「・・・・・・そんなに分かりやすかったか?」
「そりゃもう。 丸出しでした」
自分で言った言葉が、レディーらしからぬ、はしたない言葉だった事にペロッと下を出してごまかす。
ふと、彼の『鼻くそ半裸男』と呼ばれた時の、丸出しの格好を思い出して、顔が熱くなるのを感じる。
「なんで、エルミアちゃんが顔赤くしてんの?」
「い、いえ、気にしないでください!」
顔に出やすい性分は、人に言えた事ではないなと反省したのだった。
「なんだかんだカノンには、感謝してるよ。 そうじゃなきゃ、コイツもしばらく活躍できなくなるところだったからな」
「ふふっ。 カノンさん、口は少し悪いかもですけど、優しいですもんね」
「優しい~!? ・・・・・・いや、まあ。 そうかもしれんが、それを認めるのは、ちょっとシャクだな」
「だめですよ。 こんな高いお買い物してくれたんですから、そんな事言っちゃあ――」
「言わないで。 それを聞いたら、俺の心がどうなる分かってるから」
思わず出そうになった金額を、ゴクンと飲み込む。
知らない方良い事があるのを、彼は十分知っていた。
もうすぐ北門に到着する。
オークと戦うのは初めてなので、気を引き締めていかないと!




