第56話『北門で、なにか騒いでるみたいです』
何度か素振りしていると、シルナから、とある提案が出される。
「いま、北門でちょっとした騒ぎが起きているのは知ってるかい?」
「いや、知らないな。 俺達も帰ってきたばかりだからな」
ギルドの職員が、慌ただしくしていたのを思い出す。
「そういえば、セラさんも忙しいとかで、相手にしてもらってないもんな。 なにか関係あるのか?」
「多分ね!」
シルナは頷く。
「どうやら、北門周辺に、オークの群れが現れたらしいんです。 それで、検問寸前の荷馬車が襲われちゃったみたいだよ」
察するに、そのオークの討伐が依頼されたから、ギルドも忙しかったのだろう。
オークは、個々でも手応えのあるモンスターで、それが群れでとなると、新人の冒険者には対処に余る。
かといって、ベテランは余程の金を積まなきゃ、わざわざ身を犠牲にしてまでは請けてはくれない。 基本的に、冒険者っていうのは身勝手な輩が多い。
エルミアちゃんみたいな、優しさの塊がいる事の方が珍しい。
「街の衛兵はどうしてるのよ。 こうゆう時のためにいるんでしょ?」
「それが、領主が今、街を離れているみたいで、上手く伝令伝達ができてなみたい」
中途半端な役職の人間では、なかなか判断を下すのが難しいのかもしれない。
そんな事では、街に住む人間はたまったもんじゃないと思うが、この街には規模の大きい冒険者ギルドがある。
騒動収束をギルドに、誰かが依頼した。 そんなところか。
「オークかぁ。 まあ、相棒の腕試しにはちょうどいいかもしれないな」
群れといっても、そんな大量にいるわけでもあるまい。
ゴブリンみたいに、数え切れないほどの群れで行動するイメージがない。
多くても10匹程度じゃないか。
「ライゼス、行ってきなさいな。 ギルドには、私から伝えておくから。 今さっき、ギルドマスターからお呼び出しがきたのよ」
そう言うカノンの腕には、白い鳥が留まっていた。
幾度か見た事がある。 ギルドマスターが、使う魔法で、伝えたい相手へメッセージを届ける。 鳥の姿をしているが、あれは魔力の塊。
目的を果たしたら、その場で消えてしまう。
思った通り、カノンの腕からも程なくして、魔力粒子となって消滅した。
「ちゃんと、報酬奮発するように言っといてくれよ? ボランティアなんてするつもりないからな!」
「分かってるわよ。 その辺は、私だって曲がりなりにも冒険者だからね」
特に急ぐ様子もなく、その場で身を翻し、ギルドの方へ向かうカノン。
「カノンさーん、まいどあり~」
シルナがそう声をかけると、それに振り向かず、手だけ振ってその場から立ち去っていく。
「んじゃ、新火力のお披露目にでも行きますかね。 エルミアちゃんは、どうする?」
「もっちろん、ついていきますよ」
「オークとは、戦った事ある?」
駆け出しと自称していたが、彼女の戦闘センスなら問題ないとは思うが、念のため確認。
「いえ、ないんですけど。 でも、やっぱり・・・・・・その・・・・・・ですし」
もにょもにょと、恥ずかしげにしながら、何かを伝えたいエルミアちゃん。
声は小さかったが、俺にはちゃんと聞こえた。
「あぁ! そうだな、仲間だもんな。 手ぇ貸してくれ」
「はいっ!」
察した俺に、キラキラの笑顔で答えるネコ耳の少女。
もう背中を預ける事のできる、立派な仲間だ。
「そういえば、なにを乗せた荷馬車なんでしょうね」
エルミアちゃんの問いに、シルナは、
「なんか都からギルドに納品される食料や飲み物みたいだよ」
ちょっと待て!
だとしたら、その中にはこれから俺が飲むかもしれない酒も含まれている可能性がある。
「チンタラしてられん。 猛ダッシュだ」
北門に向かって、走り出す俺達。
「豚共に飲まれて堪るかぁぁ!」




