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第50話『にょきっとさせたいです』



「残り、2分か・・・・・・」


 運が良ければ、ワンチャンあるか?

 いやぁ、俺、そもそも泳ぐのすら、そんなに好きじゃないしな。



「泳ぎ得意ですよ。 私が、ちょー頑張って、2人を引っ張って、泳ぎます。 そしたら、なんとかなりませんか?」


 エルミアちゃんがいう。

 獣人ゆえの身体能力の高さは、俺ら人間より上。

「それに、賭けるしかないか。 どうやって、引っ張って泳ぐかだが」

「試しに、アンタの新しい精霊の力とやらが、役に立つんじゃない?」


 修行しないと、簡単に使いこなせるものではないと、オリナは言っていた。


 だけど、ツルくらいなら出せるのでは、とも答えた。


「そもそも、俺、魔力が極端に少ないから、魔法自体、魔石でしか使った事ないんだよな」


 魔法を使う感覚が分からん。

 カノンから、ひょいっと杖を奪うように拝借する。


「こうか? ・・・・・・いや、違うな。 ほっ! はっ!」

 ぶんぶんと杖を振り回したり、イケてるポーズをとってみたりしたが、うんともすんともいかない。

「ちょっと! 勝手に私の杖で乱暴しないでよ。 頭すっからかんのアンタが、即席で発動できるのなんてないわよ」

 杖を取り返して、俺の触れた部分をふところから出したハンカチで、汚いものを拭き取るように念入りにこするカノン。




「ライゼス様、精霊玉で得たのは精霊の力です。 魔法のように知識と魔力から形成されるものではないんです。 本能とコツといったところでしょうか。 魔力は、関係ありません」


「え、そうなの?」


「とまぁ、こんな事も知らないのが、ライゼスなのよ」

 俺はともかく、ぽそりと、エルミアちゃんも「わたしも知らなかった」と密かに独り言ちていたのを、あえて聞かなかった事にしてあげよう。


 少し恥ずかしそうにしているしな。


「ある意味、体力馬鹿のコイツには相性がいいわけなのよね」


 もう今更、カノンからの印象を訂正したくなる気持ちも失せる。

 それでも、なにかと俺の長所を把握しているら辺は、実は好きなんだろ? とからかいたくなる余地を残している。

 それを口にしたら、絶対に俺を衛兵に売り飛ばすだろうけど。




「あまり、時間がありませんね。 私が、衛兵に適当な理由をつけて説明しておくので、その間に、その水路に飛び込んで流れちゃってください。 ライゼス様、ツルのコツはにょきって感じです。 ではっ」



「ちょまっ!? えぇ~・・・・・・」


 めちゃくちゃ雑な使用方法を説明して、オリナは先ほどの部屋に続く階段を上っていった。


 樹の根は、引っ込んでしまったので、オリナが上手い具合にごまかしてくれても、万が一にもここまで衛兵が来てしまう事も、頭にいれなければいけない。


「ライゼスさん、にょきって感じやってみましょう!」

「いや、そんな・・・・・・恥ずかしいんだけど」


「恥ずかしがってる場合じゃないでしょ。 恥の集大成を擬人化したみたい男がなにを言うのよ」


 遺跡の侵入の際に、自分がどんな痴態を晒したかを思い起こすと、なにも言い返せない。


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