第45話『ノット タッチです』
そんな事を言われても、それならただの石ころと、なんら変わらないのだ。
「じゃあ、いらん。 カノンにでもくれてやれ。 こいつなら、ちゃんと相応の使い方を知ってるだろ」
「な、なにを言っているのですか!? 精霊の力を使えるようになるんですよ?」
精霊玉を、その身に宿すと、強力な力を持つと呼ばれるオリナ達、ドライアドと同じ力を行使できるようになるという。
「なぜ、このタイミングで精霊玉を、人間に授けるのかは分かりません。 ですが、近い未来に、太古で起きたようなモンスターとの大きな大戦が、起きようとしているのかもしれません」
「な、なんだかスケールの大きな話になってしまいましたね、ライゼスさん」
俺達が、生まれるずっと昔に、モンスターと人間の大規模な戦争があったというのだけは、知っている。
小さい子どもでも、知っている周知くらいなのだ。
当時は、名だたる英雄が、精霊と力を合わせて、対抗し、事なきを得たのだ。
そこからは、歴史の問題が複雑になっていくので、カノンとか勉強熱心な奴らがよく知っているだろう。
「俺は、そんな力いらんし。 そもそも冒険者になったのも、テキトーに自由に生きていくためってだけだし。 『宝樹の短剣』とやらだって、たまたま見つけたんだよ」
キングドロカラス討伐だって、担当受付嬢のセラから提案された依頼を請けたにすぎない。
愛着があるようなら、『宝樹の短剣』だって、エルミアちゃんにあげてもいいくらいだ。
「モンスターと戦うのは、冒険者としてやってるだけだ。 別に英雄にもなりたくないし、俺の生活に影響が出るような戦いが起きるなら、俺はさっさとトンズラこかせてもらう」
「まぁ、ライゼスならこう言うわよね・・・・・・」
力に、興味は無い。
金と酒。 それで、楽しく生きていけるならそれ以上のものは望まない。
カノンも、そんな俺の性格を知ってか、ため息をつきながらも納得しているようだ。
「さぁ、帰ろうぜ。 オリナさんや、すまんな。 他に試練を受けに来た、英雄様になりたい奴にでもくれてやってくれ」
そう言い残して、俺は来た道を引き返そうとする。
カノンも衛兵が、独占して調べていた事がなんだったのか知れただけで満足しているようだ。
特に、俺を止めようとはしなかった。
エルミアちゃんは、俺の後ろについてくる。
「それでは困るので。 もう私が、ライゼス様を譲渡相手に決めたと、宝樹には伝わっています」
部屋の中心に、飾られた精霊玉は、ゆっくりと浮遊する。
「さぁ、この者の身にその力を宿すのです!」
オリナは、両腕を大きく左右に広げ、ふわふわと浮いている玉に向かって宣言する。
「この方です!」
そして、俺に指をさす。
「何勝手な事言ってんの!? え、なになに。 こっちきたぁ!」
オリナの指示に従ってなのか、精霊玉が俺を目がけて飛んでくる。
「思い通りになってたまるか!」
その場から、逃げ惑った俺だったが、抵抗虚しく。
玉が身体に入った瞬間、グラつくように一瞬、立ちくらみがした。
急速になにかが俺の体内を駆け巡るような、奇妙な感覚に襲われる。
俺が、自分を保てなくなってしまうのでは。 そんな恐怖が脳裏をよぎり、心臓がドクンドクンと鼓動が早まるのを感じる。
「落ち着いてください。 大きく~しんこきゅ~」
オリナが、「真似してください」と、深く深呼吸の動きをして、大きな胸をぷるんと揺らす。
「おぉ・・・・・・」
今のいままで余裕のなかった俺は、その柔らかそうな動きを目にして、正気を取り戻した。
「いま、どこを見てました? ライゼス様」
「胸。 ・・・・・・じゃなかった! しんこきゅー、しんこきゅ~」
正直に生きていく事が俺のモットーだ。
しかし、今の発言はアウト。
仲間の2人から、冷たい視線を浴びてしまった。
「ライゼス様は、お胸がお好きなようですね・・・・・・」
当たり前である。
むしろ、嫌いな男がこの世に存在するとでも?
大きさの問題じゃない。
殺気、この手に掴んだその大きな双丘を、思い出したら、一時的な体調不良などふっとんだ。
それだけの事。
ちなみに、大きさは関係ないと言ったが、俺はデカい方が好きだ。
カノンみたいなのは、ノット タッチ キョーミ ナイ!




