第44話『精霊玉との事です』
長い階段を降りていく。
湿り気が増えていき、足下に気をつけないと滑ってしまいそうになるほど、苔も多くなってきた。
辿り着いた場所は、ツタが一面に張り巡った空間。
さっきまでいた部屋よりも、さらに長い歴史と古さを感じさせられる。
地面は同じ石造りだが、壁に沿うよう水路が通っている。
どこから流れてきていて、どこに繋がっているのだろう。
「こんな空間があったなんてねぇ」
「神秘的ですね。 なんだか空気も澄んでますし」
水路が通り、外からの空気も入って、ジメジメしすぎた肌感はなかった。
「そもそも『チギの遺跡』というのは、私達ドライアドの事が多く記された遺跡なんですよ」
「そうね。 他の遺跡は、それぞれ別の精霊について、的を絞った情報が多かった。 やっぱり、それと関係があったのね」
オリナとカノンが、情報の出し合いを始める。
俺が知っている事といえば、ドライアドの酒は、流通量の少ない貴重なものくらいしか知らない。
話題に聞く耳を向ける気のない俺は、2人をそっちので、部屋の中心にある玉に意識を向く。
オリナの、魔力を貯めた時の色に似ている。
燭台に灯るろうそくの火のように、ポワリと淡く静かに輝いている。
「あれなんですかね。 すっごく綺麗ですけど。 いかにもお宝みたいです」
同じく2人の会話に理解が追いつかなかったエルミアちゃんが、俺と同じものを見て言う。
「エルミアちゃんも、そう思うか。 この流れは、俺があれもらう感じで合ってるよな」
今までの無理矢理カノンに連れて行かれた、遺跡の調査では巡り会わなかった、明らかに高価そうな物体。
さっき、オリナはお酒をあとでたんまりくれると、そう言っていたので、それだけ十分だったのだが、他にも換金できそうな物があるというならもらっておこう。
「あれは、精霊玉です」
オリナが、割って入ってきた。
とことん、遺跡に興味がないのだなと、嘆息をして、俺が目を輝かせる対象について話し出す。
「精霊玉? 聞いた事ないな。 高く売れるのか?」
売れるか売れないか。 それだけが知りたい。
「売るとか売らないとか、そういう類いのものじゃないわよ、バカ」
カノンはこの精霊玉というものを知っているようだ。
さすがは博識な魔法使い。
「ライゼス様の仰るとおり、この試練の報酬がこの精霊玉です。 その名の通り、精霊の力を凝縮させた大変貴重な品です。 売るとなれば、一生遊んで暮らせる額にはなるかと――――」
「はい決めました! 決まりました! これは、俺がもらっていきます。 カノン、お前にはやらんからな。 駄々こねたとして、これだけは譲りません。 知りたいことが知れたなら、もうういいよな。 これさえあれば、借金どころかお前からの貸しだって、チャラにできるし」
欲しがってもあげません。
オリナも、報酬って言ったもんな。
隣に居て、聞いてないとは言わせない。
「ただ、その、売る以前に、形に残しては、この遺跡から持ち出せないかと」
欲にまみれた俺の言い分に、苦笑いをしながらそう告げるオリナ。
「え、じゃあどうやって金にすんの?」
彼女曰く、精霊玉を巡るためのあの試練は、精霊の力を譲渡する事で完了するとの事。
つまり、なんだ?
「あれは、金にならないと・・・・・・?」
「まず、そこの視点から離れなさいアンタ」




