第43話『最初からそれやってください』
羞恥心から、やっと復活したオリナが本題に戻す。
待ってましたとばかりに喜ぶカノン。
「お酒があるんだな。 そうだよな」
そうでなければ、ここまで身体を張った意味が無い。
「あ。 お酒は、私が以前に造っていたものなので、後でいくらでも」
「あ、もうこれ勝ちだ。 帰るぞ」
もう他に用はない。
オリナから、それもらって帰ろ。
一刻も早く、続きが飲みたい。 あんなビーム少し喰らって、おあずけ状態なんだぞ。
酔いなんてとっくに冷めてる。
「何言ってんのよ。 オリナが守ってた遺跡の秘密が本題でしょ」
「えー、どーでもいいよそんなの。 エルミアちゃん、悪いんだけど俺を背負ってもらえるかね」
みっともないのは承知の上。
でも、ちょっとこのままじゃしばらく動けないんだ。
「え、あ、それはいいんですけど。 カノンさん、絶対怒ります」
「オリナ、さっさと話進めちゃって。 ライゼスの事はほっといて良いから。 どーせ、1人じゃ動けもしないし」
こんのやろ!
俺が、腰痛で動けないのをいい事に、勝手に話を持って行くつもりだ。
「私としても、試練を合格して頂いたので、この先をお教えせねば、役目を果たした事になりませんからね。 ライゼス様には、申し訳ないですがそのまま、どうか」
オリナも、強行突破に賛同した。
「こいつに『~様』なんて付けなくていいわよ」
「いえ、そうはいきません。 ライゼス様は、私が認めたと判断したお方。 それに、過去にも・・・・・・。 いえ、では、こちらに」
何か最後に言いかけたが、すぐに言葉を濁してしまった。
聞こうとする前に、オリナが事を始めてしまったので分からずじまいに。
俺がもともと持っていた『宝樹の短剣』を、樹の根の前に置く。
オリナが、なにか呪文のような言葉を唱えると、ものすごい勢いで根っこかが、地面に潜っていった。
古代の文字の羅列が施された壁が、俺らの前にそびえる。
カノンが言うには、そもそも、これがあるべき部屋の状態であったわけだ。
まさか、これで終わるわけもない。
樹の根で、ちょうど隠れていた箇所に、扉が現れる。
「やっぱり、この先にまだ秘密が隠されていたのね。 でも、なんで今なの? このチギの遺跡には、これ以上なにかあるなんて、示される情報はなかったわよ」
カノンは、チギの遺跡にある情報をすでに読み解いて研究してある。
もちろん、他の遠方に多々ある遺跡も渡り歩いて、調べている。
「そうですね。 詳しい事は私にも分からないのです」
「へ? それって・・・・・・。 じゃあ、何のための試練なのよ」
「宝樹からは、この先にある物を認めた人物に捧げよ、とだけ」
つまり俺にって事か?
「おいおい。 俺、遺跡にあるものなんて興味ないぞ。 カノンみたいに歴史に興味ないしな」
「とりあえず、いってみましょ。 この先に行けば分かるんだし」
壁に現れた扉からは、下に続く階段があった。
「じゃあ、ライゼスさん。 私がお姫様だっこしていきますね」
エルミアちゃんが、そう言って俺を地面から持ち上げようとする。
「ありがとう。 でも、ちょっと待って。 もーちょっと。 ゆっくり、ゆ~っくり頼むよ」
「え、あ! すみません。 そ~っとですね」
俺から頼む前から、すすんで運んでくれようとするなんて。
本当によく気配りの出来る子だ。 ご両親の育て方がさぞ良かったのだろう。
「あ。 いいわよエルミア。 そんな事しなくて。 ほい、治癒魔法」
カノンが、俺にむけて杖を振る。
ほんのり柔らかい綿毛のようなものが、杖先から俺の腰へフワフワ飛んで、はじける。
すると、今の今まで苦しめられていた腰痛があっという間に、消えて無くなった。
「お!? 全然痛くなくなったぞ」
「カノンとやらは、なかなかの魔法使いのようですね。 今の魔法も無駄のない綺麗な魔法でした」
オリナは、カノンの治癒魔法をみて、感嘆と述べる。
「そ? ありがと。 精霊に誉められるなんて、こいつが苦しんだ甲斐があったもんだわ」
「なぁ、最初からそれやってくれれば良かったじゃねぇか」
「ちょっと面白かったのよ」
最低だこいつ。 いつか同じ目に逆の立場になる事があるならば、必ずからかってやろうと、心に誓った。




