表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/72

第40話『我慢の限界です』


「何する気だぁ! やめろ! おめぇ、たかが冒険者だろ!」


 往生際が悪く、盗賊のリーダーらしき人物が、ツルで巻かれた身体を、ジタバタとその場で暴れ動く。

 詰めに詰めて、いっぱいになっていた風呂敷から、お酒が入った瓶が1本落ち、割れる。


 中身に入っていたお酒の、まろやかで、鼻の奥を透き通っていくような酒好きには堪らない香りが、辺り一面に漂う。



 ブチッ!



「ぬぉぉぉおぉぉおおおおお! さけがぁぁああああ!」

 



 瞬間。 最後の我慢の線が切れたかのように、若き冒険者は叫んだ。


 鍛え上げられた腕の筋肉に、青白く太い血管を浮かばせ、ものすごい勢いで盗賊のリーダーの顔面を殴った。


「こんのやろぉぉぉぉおおおおおお! 酒を無駄にしやがってぇぇ!」


「ぼへっ!? ぶご! んな、や、やめ! ぶふぉ!?」


 リーダーが、力なくうな垂れると、手下の盗賊も同じように制裁を与えていく。

 オリナの役目を代わりにやってしまった。


 ギリギリ意識を保っている、という状態まで殴って、気が済んだのか。


「んじゃ、あとは姉さん達にまかせるよ。 こいつら、煮るなり焼くなり好きにしな」


 そういって、その場を足早に立ち去っていった。



 ――――



 その時の、駆け出し冒険者の、雰囲気そっくりな、現在目の前に立っている資格を持ちし者。

 叫んだ時の声、威圧感、そして悲壮感・・・・・・。

 私は、知っているこの者は、あの時に盗賊を滅多打ちにした冒険者。


 こんな所で、再び会う事になろうとは。

 恩返しの機会が、巡ってきた。

 だが、今は試練の最中。 

 宝樹の命に従い、続行する、



♦♦♦♦♦



「あちゃ~。 ついに我慢の限界がきちゃったかぁ」


 カノンが、意識が朦朧とする中、独り言ちる。


 俺は、積み重なったストレスの上に、オリナからの酒ビームを喰らい限界を突破してしまった。

 オリナは、どうやら度数の高い酒を所持しているのか、それとも生成できるのか。

 

 どちらにしろ、俺はもう耐えられない。


 その酒を、もっと俺に飲ませてくれ。

 俺は、目をギンギンにさせて、飢えた狼のように1歩、また1歩とオリナのいる場所へ、歩みを進めた。


「近づかせるわけがないでしょう!」


 ツルの大拳をの連打の猛攻撃が、俺を襲う。


 シュッ、シュッ。 


 それを最低限の動きで、躱しながら、確実に距離を詰めて行く。



「どこに隠してるんだ~。 そっちが仕掛けてきたんだろぉ~」


「な、なにを言っているのです!?」


「頼むから、もう1回だけでも、さっきの液体のビームをかけてくれよ! あんな美味いもん浴びせておいて、はい、さよなら死亡。 なんて、死んでも死にきれるか!」


 オリナに触れれば、試練はクリアなんだよな。

 じゃあ、その後はもちろんご褒美があるはずだ。

 遺跡なんぞに興味は無いし、期待もしていなかった。

 街に帰るまではと、耐えていたのにぃ。


 もう畜生でも変態でもなんでもいい。


 目の前の、酒の在処を知るドライアドに直接、いただくしかない。


 泥棒じゃない。 正当な報酬としてもらえばいいんだもんな。


 ここからは、真剣に試練をクリア目指してやろうじゃないか。

 やる気出てきたぁぁ!


「ぬほぉぉぉぉぉおおお!」


 俺は、一気に身体を加速させ、オリナに急接近する。


「っ!?」


 魔方陣からのツルも、対処に遅れ、頑なに余裕の態度を貫いていたオリナが遂に動く。

 だが、触れる事が勝利条件なので、俺に直接殴るなどの行為はできない。


 勝機! 

 俺は、ニヤリとし、舌なめずりをする。


「あ、あなた、さっきとはまるで別人みたいですよ」

「こうさせたのは、お前だろぉぉ」


「きゃぁ!」


 あと数センチという所まで、俺はオリナまで近づき手を伸ばすが、


「ぶふぉっ!」


 更に、増えた魔方陣の中からツルの大拳が、俺を殴り、叩き、投げ飛ばす。

 合計8つの魔方陣が、オリナの周辺に召喚されている。

 だが、増えたからなんだ。


 目的は変わらん。


「よぉぉぉこ~~せぇぇ!」


 猛威を払いのけ、


 喰らっても立ち上がり、


 オリナをただ一心に目指した。


 もはや、鬼ごっこの状態だ。

 どれだけ攻撃しても、怯みもしない俺に戦意を失ったオリナは、ただただ部屋中を逃げ惑う。


「た~すけてー」


「な、なにが助けてーどぁ! 早く触らせろぉぉぉ」

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ