第33話『木の親戚ではないです』
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敵もいなくなり、堂々と木の根まで一直線に進むカノン。
遺跡の中が初めてのエルミアちゃんは、「なにがなんだか分かりません」と言いながらも、古代文字には探究心を持っていかれている。
俺は、全く興味がないので入り口付近で腰を下ろす。
この板切れもとい大剣を背負っているのもくたびれた。 背中から外す。
壁に立てかけようとしたら、カノンに「文字が欠けたら、どうすんの。 考えろバカ!」と怒られてしまったので、地面に横倒しに寝かせた。
「さっさと、調べちゃえよ。 お前なら、すぐ分かるんだろ」
さっきほじった鼻が少し痛い。
カノンは、光る木の根を調べ出した。
「特に触れても、なにが変わる訳でもなさそうね」
「こんなに大きな根を持った木なんて、この遺跡の周辺にあるんですか?」
エルミアちゃんは、ふと疑問に思った事をカノンに聞いた。
俺が記憶を辿らせても、『チギの遺跡』の周りの木は標準サイズとしか思い当たらなかった。
「この辺は、普通の木ばかりだと思うのだけれど」
カノンも同意見のようだ。
「ライゼスは、なにか知ってるかしら。 私が遠出の依頼に行っている間に変わった事は?」
「俺がそんなの知ってるわけねーだろ」
「そうよね、聞いた私が馬鹿だったわ。 お酒しか頭にない男に聞いたのが間違いだった」
悪口言うだけのために話しかけてくるの辞めてくれます?
カノンは、他方から名指しで依頼が来る事もあるほど名が通っていて、ギルドにいる方が珍しい。
今の街から、滅多な事では離れない俺なら何か知っているかも、という考えは正しい。
しかし、残念だながら俺なのだ。
あったとしても、気にしない。
しかし、カノンも何かしら情報を得ないと、帰ろうとはしないだろう。
それは困る。
衛兵の事もあるから、長くこの場所にいる事もできない。
また潜入するとも言いかねない。 いや、こいつなら確実にそうするに違いない。
そして、なんだかんだ俺を丸め込んで、また危険な橋を渡る事になるんだ。
それも困る。
「つってもなぁ。 木の事なんか、まともな冒険者だって、そこまで気にしないだろ。 木こりじゃあるまいし」
俺も光る木の根に近づいて、気だるい顔全開でカノンの調査に加わる。
見たってなんにも分かりゃしないんだが。
すると、俺が近づいた途端、光が強くなった。
「ん?」
元の位置に戻ってみる。
光は、また先ほど同じくらいの明るさに点滅する。
「いや、まさかな」
もう一度近づく。 さっきよりも、少し多めに歩幅を大きく進める。
そのまさかの想像通りに、光は強まった。
「なぁ、これ俺に反応してないか?」
これ以上、側に寄るとなにが起きるのか分かったもんじゃない。
確信を持った場所から、俺は動かない。
「あんた、木の親戚か何かなの? 木偶の坊とはよく言ったものね」
「んなわけあるか! 俺は、ちゃんと人から生まれた人だ! 地面から生えてきたわけじゃねぇ」
でも、なんだってこの根っこは俺に反応してるんだ?
爆発とかしないよな。
「さっさと、前に進んでみなさいな」
カノンが俺の背中を後ろから押して、近づかせようとする。
「待て待て待て! 何かあったら、どうするんだよ。 実は木の根に化けたモンスターでした、なんて事になってみろ。 食べられたりとか・・・・・・」
「そしたら、その時はエルミアを連れて逃げるわよ」
「俺! 俺が食べられたらの話!」
探究心の前では、俺の犠牲も厭わないらしい。
アメとムチの比率が合ってないぞ、こいつ。
「あ」
俺とカノンが、一悶着しているとエルミアちゃんが、何か思い出したように声を上げる。




