第32話『やってのけてしまうのです』
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途中でモンスターに襲われる事、数回。
無事に、カノンの言う『チギの遺跡』の最深部まで到着する事が出来た。
道のりは、ひたすらに狭い通路を歩いた事になる。
分かれ道でも、衛兵のおかげが松明を道なりに灯していてくれたおかげで、迷う事なく進む事が出来た。
俺達、冒険者のためにやった訳ではないんだろうが、そこは勝手に役立たせてもらいました。
影に隠れて、襲ってくるロックゴブリンには何度か手を焼いたけれど、俺とエルミアちゃんで片付けれる程度で良かった。
他の遺跡にも、カノンの手伝いで訪れた事があるのだが、それらを思い返しても、さほど大変な探索ではなかった。
この遺跡においては、迷子になるのが一番苦労しそうだなと思った。
「ここが、最深部のはずよ」
カノンが、指すのは狭い通路の先にある扉のない大部屋。
そこにいる衛兵達に見つからないように、息を潜めて3人で、部屋を覗く。
「ふーん。 ただ壁に変な文字書かれただけの部屋じゃないか」
「私にも読めませんね。 古代文字というものでしょうか」
「そうよ。 一応、全部では無いけれど私も読めるわ。 あと、この部屋に張り巡って書かれている内容も、把握しているつもり」
そういうカノンは、特に自慢気でもなく、知っていて当然のような振る舞い。
この最深部という部屋は、通路とは違い広く、四角の形状をした大部屋だ。
同じなのは、所々に苔やら雑草が生えているといった様子だけ。
ちなみに、地面だけには何も書かれていない。
始めて来る俺には、何が依然と違うのか分からない。
だが、カノンは何度も訪れた事があるので、すぐに気付いたようだ。
天井もを含めた、5面の古代文字の壁の1枚。 俺達から見ると、丁度正面に当たる壁の手前から大きく地面から天井を突き破る寸前まで、太くてガッシリとした木の根が突き抜けて伸びていた。
まるで、壁の向こう側を守るかのように。 ホワン、ホワンと青白く幻想的な光がを淡く点滅している木の根。
「あんなもの。 以前はなかったのよ。 これが今回の封鎖の理由ね」
「ただ根っこが、自然と伸びただけじゃねーのか? たまたまだろ」
「あんなデカい根っこが、突然出てくるわけないでしょ」
まぁ、確か一理ある。
根っこが光っているというのも、変な話だ。
「衛兵2人と、考古学者が1人か」
合計3人で、調査しているようだ。
衛兵2人は、護衛の役割を担っているのだろう。
真剣に光る木の根を探る考古学者の男は、明らかに興味津々なのは見ては分かる。
他の2人は、俺同様、面白くもなんともないのだろう。
ぼけーっとしている小太りの衛兵。 壁の文字に、理解でも出来ないがただ眺めている衛兵。
「あんまりボヤボヤしていると見つかるのも時間の問題ね。 入り口に残してきた衛兵にも不信に思われちゃうし」
「どうするんだ? また眠らすか?」
「そのために、ここまで魔力を温存しておいたのよ」
ほんとかなぁ。 さっきまで、本を読んでただけの気がするけど・・・・・・。
幸い、衛兵も考古学者もこちらには気付いていない様子。
カノンが、【催眠】の魔法を後ろかけたら、あっさりと眠ってしまった。
彼らは、なにが起こったのかも分からなかっただろう。
「しかし、どうなってんだ? 【催眠】の魔法って、相手の目を見て直接的に干渉しないと発動しないはずだろ?」
一部を除けば、こういった幻惑系の魔法って、目を見て一度相手を自分に意識を向けさせないと発動しないものなんだ。
原理は分からん。 しかし、後ろから気付かないまま、そんな魔法を使われてみろ。
奇襲作戦なんてしようものなら、仕掛けた側が100パーセント勝ってしまうじゃないか。
「あんたに魔法の応用を話した所で、理解出来るとも思わないけれど・・・・・・」
「一言余分なんだよな~・・・・・・」
「あいつらの脳内に、『そこに人が居る』って誤認させるのよ。 一瞬だけね。 もちろん私って正体はバレないように、更にプロテクトしているわよ? それで、その瞬間に【催眠】の魔法を使うと、あらお見事。 効果が発動するって訳よ」
理解できないって程、難しい話でもない。 俺は、馬鹿に見えるのかもしれないが、猿のまま進化していない訳じゃない。
「でも、それって一瞬で、複数の魔法を同時に発動してるって事ですよね」
「そうよ」
「それって・・・・・・。 カノンさんって、改めてすごい魔法使いだったんですね」
「自分ですごいとは思わないけれど、そう言ってもらえるのは嬉しいわ。 ありがと」
1つの魔法に使う魔力というのは、もちろん大なり小なり差があるものだ。
威力や効果が高い魔法は、一気に魔力を消費する事になるわけなんだが。
同時に、2つや3つの魔法を発動するとなると、それは1+1=2というわけではない。
何倍も膨らんだ魔力が身体が吸い取られるわけだし、集中力もかなり必要になる。
1つの魔法を連発するより、遙かに難しく疲れる。
それを軽々やってしまうのが、この魔法使いカノンなのだ。




