第31話『もう少し優しくしてください』
カノンは、基本的に俺の後ろで傍観している。
必要とあらば、攻撃魔法も使って支援してくれるが、魔法使いの主力は、その身に宿す魔力に限る。
魔法をそうポンポンと連発してしまえば、いざ必要となった時に何も出来ないなんて事にもなりかねない。
・・・・・・分かっちゃいるが、本を読みながらというのは、どうなんだろうか。
なにかブツブツ言ってるけど。
俺1人だったら、大変だった。
エルミアちゃんがいるので、手数で困る事が段違いなくなっている。
俺やカノンなら、ロックゴブリンくらいなら1発で倒せる。
エルミアちゃんは、どうなのかと思ったが無用な心配だった。
以前一緒に討伐したキングドロカラスとの一戦よりも活き活きと動き回り、ロックゴブリンを翻弄。
隙を見て、戦闘状態に強化した爪で確実に倒している。
むしろ俺より役に立っている。
「エルミアちゃん、すごいね。 俺の倍は倒してるんじゃないか? この前とは段違いに速いし」
「いえいえ、ここ通路が狭いので足場に困らないんですよ。 壁を蹴って動き回っちゃえば、勝手にモンスターは混乱してくれますし。 それに、今日は泥だらけって事もないですいね」
確かにこの遺跡の通路は、今の所、天井も高くないし、幅も広くない。 2人横に並んで歩けるかどうかってくらい。
そう言っている間にも、ロックゴブリンは「ゴブ~」と叫びながら、考えなしに俺達に遅いかかってっくる。
奴らの身体を覆っている石は、皮膚ではなく鎧みたいな役割のようだ。 どうやって皮膚に張り付いているのかは俺は知らないけど。
石と石の間には、隙間がある。
そこを突けば、無駄に剣の切れ味を落とさなくて済む。
エルミアちゃんは、自分の爪を上手にその隙間、つまりロックゴブリンの急所に攻撃を当てている。
大したものだ。
かくいう俺は、慣れない安物の大剣を使いこなせずに、力押しで倒していた。
剣の意味を成していない。 おかげで、大剣の切れ味は皆無。
鉄の板を振り回しているに過ぎない。
「あんた、一応剣士でしょ? もうちょっとマシな戦い方しなさいよ」
「いや、んな事言ったって、この剣、重すぎなんだよ」
そもそも俺のバスターソードと、この大剣では素材からして価値も効果も段違いなのだ。
「筋力が無いんじゃないの? アンタも歳取ったわね~」
「なんだと!? 俺は、繊細なんだ! こんな安物の板切れじゃ、俺の本領は発揮されんのだ。
「鼻くそ半裸男の、ど~こが繊細なのかしら」
「それもうやめろ、ホントに泣くぞ」
これ以上、心の傷に塩を塗るのは止めてくれ。
沸いてくるロックゴブリンより、味方であるはずのカノンの方が、俺にダメージ与えてるよ。
「これくらいじゃ折れるような男じゃないでしょ」
長年の付き合いでしょ、と言わんばかりの言葉。
不器用な彼女なりのコミュニケーションのつもりなのかもしれない。
意外と可愛い所もあるじゃないか。
「ま、まぁ、そうだな。 『俺らだからこそ』だもんな」
「そうね。 さっさと雑魚共やっちゃってちょーだい。 エルミアの方がよっぽど頼りになってるわ。 エルミア~、疲れたら休んで良いからね、このおじさんが後はやってくれるから」
ふむ、事実である。
同時に、カノンは不器用なのではないのも事実なのを思い出す。
人によって、立場によって、しっかりと言葉も態度も切り替える事が出来る奴だった。
そして、俺に辛辣なのは不器用ではなく。
「お前、俺の事嫌いだろ」
「そんな事ないわよ。 使えるおじさまって思ってるわ♪」
「お前もそんな変わらん歳・・・・・・――」
「ハ?」
「さあ、張り切っていくぜーー!」
本気の殺意を感じた。
彼女を必死でお守りする事に徹する事にしよう。 そして、後でたくさんお酒にすがって泣いてやるんだ。
でも、もう少し俺に優しくしてくれてもいいと思うのだ。




