第25話『子供みたいですね』
「おっそーい! 何やってたのよ。 実行する前に作戦会議しなきゃでしょ?」
村の真ん中に象徴のように噴水前に集合予定だったのだが、すでにカノンは到着して待ち呆けていた。
両手には。なにやらたくさんの手荷物を下げている。
一体何をする気なのやら。
「すまんすまん、ちょっと野暮用で忙しくて」
「嘘なのバレてるか。 昼寝で寝過ぎただけじゃない」
俺の肩から、以前に彼女が俺の監視用に使っていたムシがカノンに吸い寄っていった。
「あぁ! お前、またそんな小汚ねぇムシつけてたのかよ」
「あんたから目ぇ離したら、どこでまた問題起こすか分かったもんじゃないもの」
「寝てただけで、そこまで言われるとは思わんかった」
「あら、可愛いお膝で良い思いしてたじゃない。 このロリコン」
「ロリコンじゃねぇ!」
やたらと、突っかかってくるな今回は。
俺に当たり散らかしたカノンは、「さっさと行くわよ」と場所を移動して、作戦を立てるようだ。
しっかりと謎の荷物を俺に押しつけて・・・・・・。
俺もその後に続くが、エルミアちゃんは思わぬ飛び火で、ぶつぶつと「ロリ? 私ってロリなの?」と軽くショックを受けていた。
酒場の看板が【OPEN】になっていた。
比較的新しい酒場のようで、木造で出来た作りで、まだ新築のような匂いがした。
そして、俺の大好きなお酒がカウンターの奥にずらりと棚の隅から隅まで敷き詰めて置かれていた。
見た事のない酒名もあって、カノンの作戦の事なんてどうでもいいから、あれを飲みたい。
そんな事は許されるはずもなく、俺達は席に着き作戦会議を始める。
「もちろん、今日はお酒なしだから。 店主さーん、このお肉の野菜詰めとアップルジュースを3つちょーだい」
「あいよ~」
店主は、キッチンへ引っ込み注文を作るようだ。 カウンターには、もう1人女性の店員がいて、雰囲気から察するに夫婦で経営しているみたいだ。 その女性の店員は、店主の嫁さんなんだろう。
そんな事より、
「アッッッッッッッップルジュース~~~~!?」
そんな可愛らしい飲み物、ここ数年飲んだ事ねぇよ!
「なに? ご不満? お酒はダメよ。 アンタ役に立たなくなるもの」
「え~~~~~~~~~~~」
子供みたいに駄々をこねる俺だが、一文無しの俺は必然的に今頼んだアップルジュースですらも、奢ってもらっている立場な訳で。
それ以上の我儘は、許されるわけもないのだ。
「ふふっ。 ライゼスさん、子供みたいですね」
「!? こここ子供じゃね~しぃ? 俺くらいになると、ジュースのアップルのアップルレベルがどれくらいアップルかをひと舐めで分かりますがね」
禁酒への不満とエルミアちゃんからの子供扱いのショックで、自分で何を言っているのかも分からなくなった。
「アンタ、なに言ってる分かんないわよ?」
「俺もワカラナカッタ」
エルミアちゃんに、笑われた。
カノンと一緒だとこれだから嫌なんだ!
まっっっったく大人の威厳というものを、後輩冒険者に見せる事ができない。
今日は、なにを言っても無理だと悟った俺は、静かに作戦を聞く事にした。
「はい、アップルジュース3つです。 農家さん自慢の林檎を使ってるので美味しいですよ」
店員さんが、アップルレベルのあるジュースを運んできた。
「・・・・・・はやく始めよーぜ、大した作戦でもねーんだろうけど・・・・・・って、美味えぇ!?」
酒を諦めて、半ば投げやりになった俺はアップルジュースをちびりと飲んだんだが。
それが、めちゃくちゃ美味しくて、度肝を抜かれた。
「ほんと! これすっごく美味しいですねぇ!」
「うふふ、お酒以外にも美味しい飲み物はたくさんあるのよライゼス。 もっと見聞を広めなさいな」
「まさか年下に諭されるとは思わなかったよ」




