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第24話『膝枕を堪能しました』


 そよそよと爽やかな風に、ほのかに香る草木と土の自然の香り。


 その木陰で、自然からのおもてなしに抗えず、ガッツリ居眠りをしていた俺。

 少しだけのつもりが、ついつい。


 だが、目を覚ますと頭が地面ではない事に気付く。


「やっと起きましたか? 寝過ぎですよ」


 エルミアちゃんの顔が目の前に現れて、膝枕をしてくれていたのだと気付く。


「うわ!? すまん、え、なんでここに?」


 それぞれに村を散策する事にしたし、カノンは遺跡の潜入のために準備をすると言っていた。

 俺はする事がなくて、ここで居眠りをかましていたわけなんだが。


 どぉも酒がないと、やることを見失うダメ人間です。


「えっと、わ、私もお昼寝しよーかなーと、思っていたら、ライゼスさんが寝ていたので」


 ははぁ、なるほどなるほど。


「そうか。 エルミアちゃんも酒場が開いてないと、する事がないタイプだな! 分かるぞぉ」


「いえ、そこは一緒ではないです」


 急に少し辛辣にならなかったか? 

 おいおい、カノンに変な影響受けてないだろうなぁ。


 このコには、いつまでも俺に甘い優しい天使でいてもらいたい。


 確かにエルミアちゃんはどう見ても酒豪ではないだろう。

 そりゃ、こんなおっさんと一緒にされたら嫌にもなるわな。


 日は落ちかけていて、鳥が森へ帰るために鳴きながら去って行くのが見える。


 俺とエルミアちゃんは、そろそろカノンと合流しようかという事を話し、村へ戻る。


「いやぁ、ネコ耳美少女の膝枕とか、最高の体験をさせてもらった~」


「や、やめてくださいよ、もう! 恥ずかしくなってきたじゃないですか。 固い地面で、寝心地悪そうだったので、つい・・・・・・」


 今更になって、羞恥心がこみ上げてきたのかだんだんと声が小さくなっていく。

 横顔からでも分かるくらい、顔は真っ赤である。


 こんなこそばゆいシチュエーションとか何年ぶりだ?


 青春してる若者みたいだぞ? 


「うん、これで今日のカノンの暴挙にも耐える事ができそうだ」


「ぼ、暴挙ですか」


「暴挙だろー。 あれは、人使いの荒さに関しては国のアホな国王より上かもしれん。 駒を手に入れるためにどんだけ念入りなのってくらい用意周到だし」


「まぁ、ライゼスさんも見事に買収されちゃってますもんね」


「そうなんだよ。 でも、最初は疑ったんだぞ? あいつとは長い付き合いだからこれは『何か』あるなとは、身構えたんだがな――」


「物で釣られちゃったわけですかー」


 その通りでございますぅ。

 俺の性格を瞬時に見抜くなんて、エルミアちゃんは洞察力が天下一品ですね。


 この名だたる冒険を経験してきたライゼスをよく観察する。 とてもいい事だと思う。


 先駆者から学べる事は多いからな。


 ・・・・・・俺の場合は、みっともない部分だけど。


「こんなふうになっちゃダメだぞー、エルミアちゃん」


「心配入りませんよ。 なれる気がしません!」


 グサァッ!


 そんな純粋無垢な笑顔で言われても、言葉の裏が聞こえてくるようだよ。

 副音声で『なれる気がしません』から『なりたくありません』に変換されてもおかしくないニュアンスだった。


「確かに、ライゼスさんならカノンさんみたいな人には敵わないかもしれませんね~」


「お、おお俺だって、本気を出せばぁ、あんな魔法使いくらい~、けちょんけちょんに出来ますけどね」


 魔法ではめっぽう敵うはずもないが、1対1の一騎打ちなら賞賛はあると思うんだ。

 腐っても、あいつよりかはいくらか先輩なわけだし。


「そもそもライゼスさんは、仲間にひどい事したりしないですもんね」


「そりゃぁ、そうだろ。 当たり前だ」


「なら、仕方ないですよ。 ライゼスさんの良い所です。 さぁ、急ぎましょ、カノンさんもう待ってるかもしれないですよ」


「あ、あぁ」


 エルミアちゃんは、そう言って笑顔のまま俺の先を小走りに行く。

 その尻尾は、少し垂れ下がっていた。


 彼女は一体、アルバスに何をされたのだろう。


 心配になる。

 この一件が終わって、アルバスとやらと会う事があったなら、まず聞きたい事がいくつか出来た。


 冒険者だから、お互いに過度に内側を探るような事はしないのが常識なところはある。

 だが、エルミアちゃんはすでに俺の中では、仲間として大切な存在である。


 もし良からぬ輩なら、彼女をそのまま元のパーティに戻すような事はできないのだ。



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