第20話『揉まれちゃいました』
3人を乗せて、2匹の馬が荷物を抱えた馬車を引いて進む。
やがて、街の門をくぐり抜けた。 広がるのは草原で、その中の街道沿いを行く。
たまに石の上を車輪が通過し、ガタッと車体が揺れる。
その度に、俺の両端に座るどちらかが俺に持たれかかるわけなんだが。
いいね! なんかこの感じ、ちょっと羨ましがられるんじゃないの?
エルミアちゃんは見ての通り、内面の良さから醸し出るような美少女だし、カノンも見た目だけはスラッとした美人な女だ。
俺の内情がクズすぎるとは思えないほど、すばらしい構成のパーティじゃなかろうか。
「ライゼスさん。 どうしたんですか、そんなに頬を緩めて」
隣から顔を覗き込むようにして聞いてくるエルミアちゃん。
美女二人に引っ付かれて、良い気分でした! なんて口が裂けても言えない。
「あ~、いや、たまにはこんな風にのんびりしたのもいいなと思ってな」
「そうですね~。 今日は、天気もいいですし。 良い風吹いてますもんね。 ピクニックとかしたくなっちゃいますね」
純粋! 健気! 可愛い!
こんな金の奴隷のような男と一緒でごめんね。
「どぉせ、女二人に密着されて浮かれてんのよコイツ」
カノンが、俺の本音を読み取ったように言う。
まさか、こいつ心まで読める魔法を使えるようになったんじゃないだろうな。
・・・・・・それはないか。
だって、さっきからたまに俺の腕に当たる二人の胸なわけだが、立派なエルミアちゃんに対して、「ちっせーなぁカノン」と思っていた事はバレていないようだし。
もし心を読める魔法を使っていたら今頃、俺は馬と共にこの荷馬車を引っ張っていたに違いない。
「カノン、俺が変態みたいな言い方はやめなさい。 エルミアちゃんに誤解されるだろう」
「ふ~ん。 ねぇ、エルミア。 こいつに変な事されてない? 大丈夫? されたら私に言いなさい。 私が八つ裂きにしておいてあげるから」
や、八つ裂き!?
俺の額に汗の粒が浮き上がる。
脳裏には、『宝樹のダンジョン』で不本意とはいえ、エルミアちゃんに働いてしまった不祥事。
「だ、大丈夫ですよ。 ライゼスさん、いい人じゃないですか。 私の事情も知ってて同行もさせていただいているんですし・・・・・・」
そんなに俺の事を慕ってくれるのは、君だけだよ。
俺は、そんなエルミアちゃんのために冒険者としては格好良くあろうと思う。
「でも――」
!? でも?
「2回だけ胸揉まれちゃいましたけど」
・・・・・・・・・。
俺の左側から杖がヌッと伸びて、左頬に無機物の感触が力強く押し込まれた。
今から何が起きるかは、言うまでもあるまい。
これから、カノンの目的も果たさなければいけないのだから、殺されることはないはずだ。
「あ、でもでも、それはたまたまですし。 私も気にしていないので!」
エルミアちゃんが、擁護の言葉を付け足してくれたが、時すでに遅し。
ありがとうな。 でも、君は悪くないんだ。
俺が、ぜーんぶ悪い。 ぜーんぶ――――。
「エルミア、男はね甘やかすとつけ上がるから、もっと厳しくしてもいいのよ。 こんなふうにね!」
「ぎゃああああああああああああぁぁぁ―――――――・・・・・・」
♦♦♦♦♦




