第19話『こんな人いたかもしれないです』
次の日、俺はギルドの前で猫の獣人エルミアちゃんと、魔法使いのカノンと落ち合った。
エルミアちゃんにとっては、初めましてのカノン。
「あの、こちらの方は?」
「こいつは、カノンってんだ。 見ての通り魔法使いだ」
品質の良さそうな生地のローブ、相変わらずのミニスカート。
複雑にうねりを加えたスタイリッシュな杖を握っている。
「今日は、こいつも一緒について行く事になったんだ。 それで、エルミアちゃんに言わずに決めて申し訳ないんだけど、実は――」
俺は、昨日エルミアちゃんと解散した後の出来事を話す。
そして、バスターソードを修理してもらっている事と、さっきその代わりに予備の格安の大剣をもカノンに買ってもらった事も。
「えっと、つまり借金が残っている上に、更にカノンさんにも借りを作ったって事ですか?」
「・・・・・・はい。 そうゆう事です」
言葉にすると、泣けてくるもうやだ。
「私って、結構心が広い方だとは思うんですよ。 自分で言うのもなんですが。 でも、今回はびっくりです」
ですよね~。
さすがのエルミアちゃんも呆れてしまう程に大人として駄目なのだ俺は。
予備の武器すら買ってもらった事実が、一番言いづらかった。
「でも、仕方ないですね。 一緒に借金返すって約束しましたし。 カノンさんの件もいいですよ。 ちょっと盗賊って面白そうじゃないですか」
そう言って、二つ返事で承諾してくれた。
「あら、この子めちゃくちゃ良い子じゃない。 気が合いそうだわ、よろしくね」
「はい、こちらこそよろしくお願いしますカノンさん」
二人が握手をする。
強引なとこや他にも色々と物申したい事はあるけど、冒険でも金銭面でも頼りになるカノン。
可愛くて、優しくて義理堅いモンク職の戦闘派ネコ耳美少女エルミアちゃん。
俺にはもったいないくらいのメンバーだな。
「飲んだ暮れで、借金まみれで女に奢ってもらい、地を這う中年男のライゼス」
おい、カノン。 なんで今俺の紹介を脈絡もなくしたんだ?
「待て。 地を這うはひどすぎる」
クスクスと笑うエルミアりゃん。
俺が、二人に頭が上がらないのは仕方ないけれど、なんとかやっていけそうな良い雰囲気。
「さぁ、もう荷物も荷馬車にのせておいてもらったし、サクッと依頼を達成して帰ってこよう!」
「待ちなさい。 私の件をなかった事にしないでちょうだい」
「わ~かってるよ。 冗談だって。 さ、行くぞ」
♦♦♦♦♦
俺は馬の手綱を握る。 何度か馬車を扱った事があるので、慣れたものだ。
右側にエルミアちゃん。 左側にカノンが座る。
俺達は、街の門を抜けて目的の村へ向かうのだった。
「はいやぁ!」
手綱をパシッと鳴らして、声高々に上げる御者の俺。
「なに? 急にびっくりするじゃない、やめてよもう」
「それっぽくしてみた。 俺は、しがない荷物運びの御者だ。 家族を養うために他方へ荷馬車を走らせて生計を着実に稼ぐ30歳の若き旦那。 嫁は専業主婦で家をしっかり守ってくれる俺にはもったいないくらいの――」
「借金まみれの独身クズオヤジがなに言ってんのよ」
カノンが俺の冗談を一蹴し、加えて脇を肘でこつく。
こいつと一緒に依頼に行くと、だいたい数回はこうゆうふざけたノリがあったりする。
でも、『独身クズオヤジ』はえげつないと思う。
日々会う度に、俺への罵倒にキレが増していく気がする。
これでも、カノンと始めて出会った頃は気遣いのできる良い子だなという印象を持った事があったような・・・・・・なかったような。
もう随分前の話だ、そんな奴はいなかったかもしれない、うん。




