第18話『一緒に盗賊まがいです』
「さ~て、私からのお願いなんだけど」
バスターソードの件でご機嫌になっていた俺は、冷たい水を被せられた気分になった。
修理代、更には強化の要求までしてしまった。
どんな事を言われても、断れる立場ではない。
「こ、ここまでしてもらってなんだが、無茶は言うなよ? 一応、明日の依頼もあるって事も忘れるなよ?」
「えぇ、そんな事は分かっているわ。 依頼には私も同行するって、受付嬢さんにはすでに言ってあるしね」
「いつの間に」
俺とエルミアちゃんが晩ご飯を食べている間に、ムシに監視させながら自分はギルドで根回ししていたって事か。
「依頼先の村の近くには遺跡があるのだけど――」
もうこの時点で、俺は興味を失っていた。
遺跡って古代文字や痕跡ばかりで、遺産が稀にあったとしても情報源としてギルドに回収されてしまう。 売ることはできないし、所有する事も許されない。
だから、金にならんのだ。
魔法使いとか研究者は、探究心が旺盛で歴史とかも知りたがるが、俺は全くそそられない。
「ちゃんと聞いてる? その遺跡が最近になって突然閉鎖されちゃったらしいのよ」
「へー」
それがどうしたというのか。
なんか壁でも崩れたんじゃないの? 遺跡ってボロいし。
「アンタが、興味ないのは分かるけど、そこまであからさまだと腹立つわね。 それでね、明らかに厳重なのよ。 過ぎるくらい。 国の衛兵が何人も入り口を見張ってたりしてね」
確かに、ただ壁が崩れたとかだったら、国の人間が動くほどの事じゃない。
俺らの暮らす街は、大きな国の中の1つである。
最近は、『宝樹のダンジョン』が新しく出現したので、国の上の人間は経済が回って喜んでいるとかなんとか。
「じゃあ、そこに行っても何もできなくないか? 見張りがいるんだろ? ただの冒険者の俺達じゃ追い払われて終わりだろ」
「そうね。 その通りだわ。 アンタみたいなおっさん冒険者はともかく、さすがの私でも結局は冒険者。 近づけないのよね」
なんで今、俺はディスられたんだ?
おっさんかもしれんが、おっさんと言われたくない気持ちもあるんだぞ。
不用意な発言は控えてもらおうか。
俺は、少しだけ言葉のトゲに引っかかったので言い返す。
「お前だって、俺と2つしか歳の変わらないオバ――」
「イッタラコロス」
笑顔の裏側に殺気を感じるとかのレベルではなかった。
純粋に殺意を表情に出し、手に握るスタイリッシュな杖を俺の喉仏に突きつける。
カノンは怒ると、本当に手加減をしない事を俺は知っている。
以前、他の冒険者とちょっとしたイザコザがあった時に半殺しにしている所を見た。
幻影魔法で精神を揺さぶり、更にトラップ魔法で自滅させ、「下僕にしてください、と言いなさい」と命令し、その場でそれを言わせるまでに叩きのめしていた。
「~~イワナイ、イッテマセン。 カノンさん、続きを聞かせてください」
禁句を言い切る前に、言い止まった俺の命は救われた。
そして、そんな俺に魔法使いカノンは言うのだった。
「忍び込もうと思うの。 1人じゃ不安だから、ライゼスあんたに一緒に来て欲しいのよ」
盗賊みたいな事を言い出した。
そもそもお転婆な性格というのは理解していたが、こんな事を言い出す日が来ようとは・・・・・・。
「忍び込むって、お前! エルミアちゃんもいるんだぞ」
「大丈夫よ。 あの子、獣人でしょ。 すばしっこくて頼りになりそうじゃない。 それに、いざとなったらアンタを囮にすればオールオッケーよ」
どこもオールではなかった。
「これは決定事項よ! あの猫娘ちゃんが心配なら街に置いていけばいいじゃない。 荷馬車引いて、食料届けるだけでしょ? あの子、必要ないじゃない」
「ん~」
確かにその通りなんだけど、どうしてもエルミアちゃんは離れたがらない節がある。
というか、仲間のアルバスと再会するのを怖がっているのだ。
もしその時が彼と会う時は一緒にと言ってしまったので、無下にはできない。
俺が街にいない間に、アルバスが戻ってくる可能性は十分にある。
ダンジョンで死んだりしていなければ、よっぽどホームのギルドに帰ってくるはずだ。
「いや、エルミアちゃんは連れて行く。 約束してるからな」
事情を話せば、あの子なら分かってくれる気がするのだ。
また彼女の優しさに甘えてしまうようで、申し訳ないが。
「ふ~ん。 やけにあの子に入れ込んでるようね。 ロリコン?」
「ちげーよ! 色々あるんだよ! てか、ロリではないだろ」
16歳だというエルミアちゃんは、この国では一応成人扱いになる。
断じてロリではない。
あと、俺は別に恋愛感情で甘えている訳ではない。
お金がなくて、困っている俺を助けようとしてくれる天使様に甘えているだけだ。




