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第16話『鍛冶屋のシルナの所にいきます』

「そんな事言われるまでもなく分かってらぁ。 だが、俺だってもう中年だ。 少しはペースを考えないとだな・・・・・・」


「まだまだ若いわよ。 あんなデカい剣を振り回せるんだもの――。 あら、その剣ボロボロじゃない。 熱で溶けたみたいな」


「あぁ、魔石を使ってな・・・・・・。 直す金もないから、とりあえずコイツの修理代だけでも稼いでこないと、強いモンスター討伐も無理ってわけだ」


 バスターソードを振ってこそ、俺の力の真骨頂。

 貴重な火の魔石は使ってしまったし、あるのは『宝樹の短剣』とかいう手に入れたダンジョンでしか使えない木剣のみ。


 心許なくて、そうそう危険なダンジョンには踏み出せない。


「あらあら可愛そうに。 いいわよ。 私がその剣の修理費出してあげても」


「まじかよ!?」


「えぇ、まじよ。 今から鍛冶屋に行って、一晩で直してもらいましょ」


「今からって。 鍛冶屋ももう店閉まいしてるだろ」


「あの子なら、叩き起こせばやってくれるわよ。 だって、私に借りがあるもの」


 こいつは、俺以外にも揺する相手を数多く用意しているんだなと理解した。


 あの子というのは、鍛冶屋のおやじさんの娘の事だろう。


 最近は鍛冶スキルも成長して、彼女個人にお客さんが頼みに来る事も多いのだとか。


「さて、寝ていても叩き起こしに行こうか。 早く相棒を直してもらおう。 金はまかせる。 出来れば、パワーアップさせてもらいたいなぁ」


「はぁ。 やっぱりあんたってお金にがめついわね。 クズね」


「うるせー。 お前が言い出したんだろ。 もう引っ込められないからな。 すげー請求きても、俺は一銭も払わないぞ」


 お金を出してくれるとなれば、頭の切り替えが早いのが俺の利点なのだ。

 もはや、カノンから代償に何をやらされるのかの一抹の不安は吹っ飛んでいた。


 スタコラと宿屋を出て、鍛冶屋に向かう俺の後に続くカノン。 

 その整った美顔が、してやったとばかりに笑みを零していたのに俺は気づいていなかった。



♦♦♦♦♦



今は、日もとっくに沈んで、夜の10時を回っている。


酒場はともかくとして、ほとんどの商売屋は店閉まいをしている。

 街の大通りも昼間と違って静かなもんだ。 


 点々と一定感覚に灯っている街灯のおかげで、闇夜に飲まれず安心して歩ける。


 俺とカノンが向かっているのは、シルナという女性がやっている『シルナ鍛冶工房』だ。


 1年前までは、シルナの父親はやっていたのだが身体の調子を壊してからは彼女が引き継いだ。

 前々から鍛冶屋を継ぐために修行をしていたので、1人で店を任されてからも立派に切り盛りしている。


 むしろ、先代よりも繁盛してるのではなかろうか。


 シルナは、ドワーフと人間のハーフで、身長が低い。 けしからんバストはドワーフ譲り、引き締まったボディは人間の母親譲りの別嬪さんだ。


 鍛冶の技術も父親に負けず劣らずで、長年の鍛冶屋の威厳を保っているすごい女の子だ。


 シルナ鍛冶工房は、2時間前には閉店している。 朝も仕入れやなんやらで、早起きなのでもしかしたらすでに就寝に入っているかもしれない。


 しかし、カノンは。


「シルナ! 開けなさいっ。 至急。 急いで! もう待てないわ」


 店の前に着くなり、2階のシルナの部屋に向かって、大声で彼女を呼ぶ。


「お、おい。 近所の迷惑になるだろ」


「大丈夫よ。 ここは路地裏。 周りの建物はほとんどが倉庫よ」


「お、おう」


 鍛冶屋は職業上、剣や装備を作るのに大きな音を立ててしまう。

 そのため、一般民が住む住宅地から離れた場所にある事が多い。 それは、シルナの店も例外ではない。


 2階のシルナの寝室であろう部屋の明かりが灯る。


「起きたな。 やっぱ寝てたじゃねぇか」


「いいのよ、仕事だもの」


「そーゆうとこ、お前ホント遠慮がないよな」


 窓が開き、パジャマ姿で上半身をだけ覗かせたのは、やっぱりシルナだった。


「なんなんですかぁ? こんな夜更けにぃ――。 げっ、カノンさん!?」


「今の『げ』はなんなのか、降りてきて説明しなさい」


「いやぁ、あはは・・・・・・」


 シルナは「少しお待ちを」と言って、服を仕事着に着替え、店の裏口から出てきた。

 表の入り口は、内側に看板など仕舞ってあるので、という事らしい。


 むしろ、例外なんだから当たり前な話なのだが。

 鍛冶場から店に入るのは初めてだ。


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