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第14話『魔法使いのカノンがいました』

 俺はギルドに戻り、さっそく依頼を受ける事にした。


 今度は、コツコツ地道にやっていこうと思う。


 強敵との戦いを毎回繰り返していたら、身が持たない。


 今回は、いわゆるお買い物クエストだ。


「私も行きます。 借金一緒に返すって約束でしたもんね」


 エルミアちゃんは、やたらと律儀だ。


「そんなにしてくれなくてもいいんだぞ? 十分助かってるんだし」


 俺のした事なんて、所詮ドロカラスを一時的に追い払ったくらいだ。


 むしろ、一緒にその後戦ってくれたり、偽物だったが宝箱の中身を運んでくれたり。


 もっと言えば、初めての出会いは食べ物を恵んでくれた。


 むしろ、俺が彼女になにか恩返しをするべき立場なのだ。


「いえ、その、一緒にいたいというか。 その、あの人と会うのが・・・・・・その」


「あの人って誰の事だ?」


「えっと、一緒にダンジョンに潜った人・・・・・・です」


 確かアルバスって男だったか。


「なにか訳ありなのか? 再会を嫌がっているように見えるけど?」


「えっと、いろいろと。 その怒ると怖い人で。 怒られたら、私泣いちゃうので・・・・・・」


 そんなに気性の荒い人物なのか。

 なんでそんな奴と一緒にいるんだ? と聞こうとしたが、冒険者にはいろいろ事情もあるのだ。


 言葉を濁しているところみると、言いたくない事もあるのかもな。


「まぁ、いつかギルドで再会するんだろうけど、エルミアちゃんが怒られる道理はないな。 その時は、あれが一緒にいるから安心しな」


「!? ありがとうございます」


「むしろ、俺がお礼を言いたいくらいなんだよなぁ」


「いえいえ、お役に立って見せますよぉ。 さぁ、張り切って行きましょう!」


 街の門へ向かって、ずんずんと進むエルミアちゃん。


「待て待て。 今日は、これで休憩だ。 休みなしはヤバいだろう」


 ダンジョンから帰って、まだ一度も休憩を取っていない。


「そ、そうですね。 ライゼスさんも疲れてますよね」


「あぁ、もう身体のあちこちがクタクタだ。 出発は明日の朝にしようと思うんだけど」


「・・・・・・わかりました」


-------


 そのあと、二人で飯を食べた。 

 今回の俺の分の報酬金は、全額借金に消えてしまったので今日は腹を鳴らして寝るのを覚悟していた。


 だが、エルミアちゃんが奢ってくれると言ったため、それに甘えた。


 本気でクズだと思う。 でも、自分にとことん甘い俺は、甘やかしてくれる人の言葉には、もっと甘かったのだ。


 さすがに、ギルド内の酒場だと受付嬢さんやら他の冒険者からの視線が痛いので、外で食べた。


 明日の集合場所を話し合って解散。


俺は、自分が寝泊まりしている宿屋へ向かう。


 エルミアちゃんも、自分の使っている宿屋へと帰っていった。

 別れ際に少し渋る様子があったが、さすがに寝る時まで一緒にいるわけにも行かない。


 ギルドの報告だと、まだアルバスとやらはダンジョンから帰ってきていないみたいだし、大丈夫だろう。

 


 俺の借りている宿屋は、それはもうオンボロだ。 管理人のおばちゃんとは、昔からの知り合いだから格安で部屋を貸してもらっているため文句は言えないのだが。


 木造の築50年は経っているから、そこかしこにガタがきている。 いつ倒れてもおかしくないんじゃないか。


 そんな宿でも、俺の家というのは変わらない。


 冒険者をやっていると、野宿も多いので室内で眠れるというのは、ほんっとに安心する。

 真っ先にベッドに入って、今日はぐっすり寝よう!


 そう思って、自分の部屋に向かうと、俺の部屋の扉の前に誰かいるのに気づく。


 魔法使いが好んで着るローブを身に纏い、すらっと長い足を見せびらかすようなミニスカート。 長くて綺麗な髪に目深に被ったとんがり帽子。


「おい、そこでなにやってんだ。 カノン」


「こんばんは、ライゼス~。 随分待ったのよ? はやく部屋に入れて?」


 さも当然のように言う彼女は、魔法使いのカノン。

 俺と同じギルドの冒険者で魔法使いだ。 


 まぁ、腐れ縁みたいな感じの仲である。


「俺は、今日ダンジョン帰りで疲れてんだよ」


 一刻も早くベッドに寝転がりたいんだ。


「知ってるわよ。 しかも、持ち帰ったお金も全部偽物だったって事も。 ぷーくすくす」


 カノンはこうゆう奴なのだ。


 俺が、失敗するとすぐにからかいにくるし、タイミングの悪い事にそれをいつも見られる。


 俺とは2つ歳が下のカノン。 何度かパーティを組んで依頼を受けた事があるのだが、性格はともかく、魔法の技術は一流だ。


 かつて師に仰いだのが有名な魔法使いで、その弟子の中でも群を抜いて才能を開花させていったらしい。


 相手を惑わす幻惑の魔法が得意で、幾度もそれに助けられた。


「笑いにきたのか? 悪いけど、今日はとっとと帰ってくれ。 クタクタなんだよ」


 それに、ただでさえ借金完済ならずで落ち込んでるんだから。

 報酬金を差し引いて、あと10万ゴールドだぞ? 泣けてくる。


 嫌なことは、寝て忘れるに限る。 明日の事は、明日の俺がなんとかしてくれるはずさ。


「ふーん。 そんな事言える立場なのかしら、あなた」


 一向に扉の前から退こうとしないカノンは、意味深に言葉を発する。


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