第13話『なんかすごい短剣らしいです』
俺とエルミアちゃんは、ギルドから出て鑑定屋へ向かう。
「その短剣売ってしまうんですか?」
「背に腹は変えられんしな。 特に愛着があるわけでもないし」
いつも一緒のバスターソードは絶対に売らないけど。
そういえば、刃がボロボロだな。 魔石の効果で、刀身にかなりのダメージを与えちゃったからな。
「ライゼスさんは、おっきい剣を使ってるみたいだから、短剣は必要ないんでしょうけど。 ちょっと寂しいですね」
エルミアちゃんは、俺の腰にぶら下がる木剣を見て言う。
「寂しい?」
「ん~、だって一応私達の思い出の品になる訳じゃないですか。 初コンビの討伐達成・・・・・・みたいな」
そんな可愛い事を言われると、売るに売れなくなってしまう。
「思い出かぁ。 まぁ確かにそうだな。 でも、多分売れないと思うぞ。 木剣だしな」
鑑定屋に辿り着いて、まず俺がそこの店主に一言。
「おい、おっさん! こないだの宝石。 もっと高値で売れただろぉぉぉぉ」
そこだった。
ないよりも先にそれを言ってやりたかった。
「馬鹿言えっ。 ほとんどガラス玉じゃねぇか。 ひいき目で見てやった方だ」
鑑定屋の店主は、逞しくしかし整えた髭をさすりながら言う。
ドワーフの家系で、先祖代々受け継いだ鑑定スキルは一流だ。
「そんな、だってそのせいで俺の借金は・・・・・・」
「いつもの事だろう。 そもそもお前は、宝の見る目がない! ガラスか宝石かくらい見極めろ」
「キラキラしてんだから良いだろ! まぁ、いいや。 もう終わった事だ」
どれだけ言っても状況は変わらない。
彼が嘘を言わない人格なのは知っている。
だが、自分の間抜けさを言わずにはいられなかった。
「ライゼスさん、本題本題」
エルミアちゃんが、俺の裾をクイクイと引っ張る。
「あぁ、そうだった。 なぁ、この木剣っていくらかなるか?」
俺は、鑑定屋にダンジョンで見つけた短剣を見せる。
「木剣だぁ? そんなもん売れる訳ねぇだろ。 いわゆる木の棒だぞ」
ごもっともな意見です。
「でも、なんかすごい作り込みでさ。 一回見てみてくれよ」
「なにか特別な剣かもしれませんしね」
エルミアちゃんは、存外ワクワクしている様子。
鑑定屋は、眼鏡型のルーペを取り出し、木剣を隅々まで見る。
「すげぇな。 装飾は丁寧だし、ただの木じゃねぇなこれは」
「ただの木じゃない?」
「あぁ、これは相当な魔力を溜め込んでやがる剣だ。 宝樹のダンジョンで手に入れたんだよな?」
「そうだ。 でっかい鳥のモンスターが守ってたやがった」
「もしかしたら、『宝樹の短剣』かもしれんな」
「なんだそりゃ?」
俺もエルミアちゃんも知らないアイテムだった。
「そのダンジョン内でしか使えない剣だ。 この溜め込んだ魔力も、ダンジョンの外じゃ発動もせんし、剣自体も普通の短剣と変わらん。 しかし、ダンジョンだと何かしらの効果を持つらしい。 噂だがな」
「噂かよぉ。 金にはなるのか?」
「そら、こんだけ特別な品なら欲しがる奴はおるからな。 7・・・・・・いや8万ゴールドってとこだぁな」
なに!? こりゃ売れば、借金完済にかなり近づくじゃねぇか。
「じゃあ頼――」
「売っちゃうんですか?」
それでは、売却の手続きをしましょうかと思った矢先に、エルミアはそう言う。
さっきも思い出の品とか言っていたし、あまり売りたくないのかもしれない。
そんなに俺との出会いは、彼女にとって大きな事だったのだろうか。
「う・・・・・・売るの嫌か?」
「ん~。だって、その、私は思い出を形にしておきたいな~とか思っていたりしてまして」
8万はデカい。 あの大金が偽物だった今、頼れるのはこの『宝樹の短剣』だけなんだよ。
でも、これが手に入ったのはエルミアちゃん居てこそだしなぁ。
最初の約束は、報酬金も宝箱の中身も全部が俺の返済に当てて良いとの事だったが。
それを全部真に受けるほど、俺は落ちぶれたくない。
かなり揺らいで、揺らぎまくって出した結論は。
「じゃあ、この短剣は売らずにしておこうか」
「はいっ。 ありがとうございます!」
満面の笑みで喜ぶエルミアちゃん。
「連れの女の子には弱ぇみてぇだな、ライゼス」
鑑定屋はニヤニヤしてからかってくる。
「うるせー」
金以外を優先しちまうなんて、俺も歳を取ったなぁ。
「金にはがめついライゼスがなぁ」
俺もそう思う。 でも、この純粋な彼女の気持ちを聞いてしまうと、どうしても良心が出てきてしまう。
「はぁ。 また、なんかおいしい依頼でも言って稼いでくるよ」
「次は、偽物もって来んなよ(笑)」
余計なお世話である。




