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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第二章 ラビラント編
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92話 買いたいショー


「わたしも何か欲しいのです!」


 ……ただ買いたいだけだな。


「ルーナにはククリがあるだろ」


「魔法が付いたやつが欲しいのです!!」


 魔法が付いたって、どうせ使わないだろ?


「俺がいるんだから必要ないだろ」


「……命令なのです。買うのです」


 出た!

 伝家の宝刀“命令なのです”かよ……

 一応、召喚魔の立場としては従わざるを得ないな。


「はいはい……それで、どんなのが欲しいんだ?」


「んーっと…………」


 そうだろうな。

 ただ買いたいだけだからな。

 

「何だお前、ドジっ娘の召喚魔だったのか? その割に偉そうだな」


 済まんな、偉そうで。


「まあ、強そうでもあるがな。ふむ……だからドジっ娘がリーダーなのだな」


 ルーナがリーダーな理由は正解だ。

 召喚魔がリーダーになる訳にはいかんからな。

 しかし、残念だが“強そう”じゃなくて“強い”んだよ。



「アレとか良さそうなのです」


 ルーナは壁に掛かってある剣を指差しているが……

 その“とか”って何だよ。

 本当に欲しいのか? 

 しかもククリっぽいぞ。


「ククリナイフなら持ってるだろ。違うのに――」

「おお! なかなかの目利きだな。その剣は良いぞ!!」


 いらん事言うなよ、爺さん!


「ほほう……良い、のですね♪」


 ……ほらな、すぐその気になる。

 どうせ使わんのだから、何でもいいだろ。


「この剣は三日月の剣ルーナクレッシェンテと言ってな……かなりの逸品だぞ」


「ルーナ? わたしの名前もルーナなのです!」


 ……非常に不味いパターンだ。

 しかも、またもや逸品かよ!

 いったい幾らするんだ?


 しかし、確かにククリナイフと言うには湾曲が大きい。

 その名の通り、三日月のようだが……


「鞘が無いようだが?」


「その通り……鞘はない」


 本当に無いのかよ!!


「だがな、この剣には鞘が必要ないんだ」


 必要ないというよりは、曲がり過ぎて鞘に収めれないだけじゃないのか?


「この剣は、念じればペンダントとなるのだよ」


 何だ、その便利機能は。

 ここは便利グッズの宝庫だな。


「だが本当の凄さはこれからだ。この剣はだな……魔法が切れるのだっ!!!」

 

 ……………………。


「おや……反応がないが、どうした?」


「意味が分からん」


 何が“魔法が切れるのだっ!!!”だ。

 仰々しく言っているが、アバウトすぎてさっぱり分からんな。


「もう少し、詳しく説明しろよ」


「説明か……難しいな」


 難しくても説明しろよ。 

 このまま終了では買わんぞ。


「例えば結界だな。ドラゴンの結界でも切り裂くことが出来る」


「ドラゴンの結界を、切り裂くだと?」


 マジかよ……相当な魔力が必要だぞ。

 多分だけど。


「他にも、防御壁シールドなどの防御魔法や炎、氷、風などの攻撃魔法、一切の魔法を切り裂くことが可能だ」


 マジもんじゃん。


「もちろん、ドラゴンの炎さえも切り裂くぞ」


 またドラゴンかよ。

 ドラゴン以外の比喩は無いのか?

 大体にしてドラゴンなんて、リューイ以外に会ったこともないからな。

 何となく凄い、としか分からんぞ。


 に、してもだ。

 かなりの剣だという事だ。


「だがな。一つだけ欠点がある」


 まあ、有りがちなパターンだな。


「魔法以外は切れん!」


 ……

 …………

「………………はあ?」


「魔法以外の物は、りんご一つ、紙一枚切れん」


 つまり……果物ナイフにも、いやペーパーナイフにすらならんという事か?

 攻撃には一切役に立たん訳だ。  

 逸品どころか欠陥品だな。


 ……いや、待てよ。


 防御と攻撃補助は一級品だが、攻撃は不可。

 攻撃は俺が得意。

 つまりは……


 ルーナ向きってことか?


 ふむ。

 隣で目をキラキラさせている奴もいることだし……買うか?


「よく分かった。それで……幾らなのだ?」


 問題は値段だな。

 欠点を差し引いても、それなりの額だろう。

 

「10万レオネだ」

「は? 10万???」


 予想をはるかに上回ったな。

 もしかしてこの店、ぼったくりなんじゃないのか? 


「どうした……金が足りないのか?」


「いや、意外と安いと思ってな」


 出せない金額でもない。

 ルーナの為に出してやるか。


 まあ、実際はルーナの金なんだけど……






 大金と引き換えに、二つの逸品を手にしたクロムたちは、ジオ爺の店を後にした。

 残されたジオ爺は、店の奥へと声を掛ける。


「言われた通りに、あれを売ってやったぞ」


「済まんな」


 奥からは、姿も見せずに声だけが聞こえてくる。


「いや……。しかし大丈夫なのか?」


「何がだ?」


「あれをあの娘に預けて……」


「心配か?」


「まあな。誰だってそう思うさ」


「だが、他に手立てはないぞ……たぶん、な」


「それもそうだな」


「では、もう行くぞ」


 声の主はそう言い残すと、気配を消した。

 ジオ爺は窓の外を眺めながら一人呟く。


「まあ、今のわしに出来る事は、これだけだ。託すしかあるまい」


 窓からは、先程のドジっ娘率いるパーティーの後ろ姿がまだ見えているのだった。



「クロム、そろそろお腹空いたのです」

「買い物がまだ終わっとらん!」

「ルーナさんって、お金持ちなんですね」

「にゅふふ♪ 新しい武器なのニャ!」



 相変わらずの会話を交わしている彼女たちには、何を託されたのか知る由もない。

タイトルは、奥田民生「解体ショー」より拝借

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