91話 スローな武器にしてくれ
「そこに寝ているのがリーダーだ」
もうルーナがリーダーでいいよな。
実質は俺だけど……
「なんだと? お前たち正気か?」
正気ですとも。
「こんなドジっ娘がリーダーだなんて、よくパーティーが壊滅しないな」
結成したばかりで壊滅なんてしようもないな。
「こう見えて有能なのか?」
ええ、有能ですとも……その娘の召喚魔が。
「これでもBランクだからな」
「Bランクだと? ……見えんな」
俺にもBランクには見えんがな。
「まあいい。それよりお前たち、金はあるのか? ウチの品物は高いぞ。冷やかしならお断りだ」
言い切ったねぇ。
よほど自分が作った物に自信があるのか?
「心配するな、金ならそれなりにあるぞ」
「あるのです!」
ようやく立ったか。
「それで、何が欲しいんだ?」
「今日はノーラ、暗殺者の武器だ」
「ラビラントで暗殺者だと? ダンジョンで魔物を暗殺する気か?」
いいだろ別に。
気付かれないように殺すのが暗殺なら、人だろうが魔物だろうが暗殺には違いあるまい。
「ん? ……お前、前にも見たことあるな」
「うニャ!」
確かにノーラはこの店に来たことがあるようだ。
本人は何も買ってないらしいがな。
「そうだ! オーバンと一緒に来たな。どうした、オーバンのパーティーは抜けたのか?」
「ううぅ……壊滅したのニャ」
何番目のパーティーかは知らんが、オーバンとやらのパーティーも壊滅しているようだ。
まあ“死神”だしな……
「……だろうな! あいつはリーダーの資質がない。わしの作った剣を値切るような奴だからな」
ふむ……
ジオ爺の店で値切るような奴は、死んでも仕方がない……と。
気を付ける事にしよう。
「まあいい。どれ、何がいいかな……そうだ、アレがあったな」
ジオ爺は壁に掛けてあった二挺の小ぶりな斧を外し、持ってきた。
暗殺者が斧?
かなり小ぶりな斧だが、もしかして……
「これはスローイングアックスなんだが、魔法を三つ付加してある」
やはりそうか。
しかし、いくら小ぶりとはいえ、斧では重くないか?
「一つは所持者が携行中、紙のように軽くなる魔法だ」
ほう……それはメリット高いな。
「二つ目は、投げた後は呪文一つで手元に戻ってくる魔法だ」
「戻ってくる?」
飛んでくるのか?
まさか……歩いて戻ってくるわけじゃないよな。
「ああ、手元に転移してくるようにしてある」
手元に転移だと?
便利過ぎだろ!
「最後は凄いぞ。高速再生を無効化する魔法だ」
「どういうことだ?」
「そのまんまだ。一度でも傷つければ、そいつは高速再生出来んようになる」
そりゃあ凄いな。
高速再生となると厄介だろうからな。
そんな魔物は、まだ見たことないけど。
しかし凄すぎだな。
ノーラには勿体ない武器だが……
「欲しいのニャ♪ クロム、買ってくれなのニャー!!」
まあ、そうなるよな。
「仕方ないな。約束だ、買ってやろう……幾らだ?」
「訳ありだが、それでもいいか?」
「訳ありとはどういう事だ?」
変な物に金は出せんぞ。
「受注品だったんだがな……客が完成前に死んじまったんだよ」
なるほどな、そういう訳ありか。
「そういう物は冒険者には嫌われるから、普通は壊しちまうんだが……」
死んじまった奴の注文品じゃ、生死を掛けてる冒険者にとってはゲンが悪いからな。
「出来が良すぎて、もったいなくてな」
たしかに壊すには惜しい上出来過ぎるほどの逸品だ。
気持ちは分からんでもないな。
「それでも良ければ、半値で売ってやろう」
「俺は構わんが、使うのはノーラだ。どうする? ノーラ」
「そんなの関係ないのニャ!」
そりゃ“死神”には、そんな事は関係ないな。
というより“死神”の通り名に相応しい武器とも言えるな。
「よし、買おう。それで半値で一体幾らなのだ?」
「3万レオネだ」
はいぃ……?
「半値で……それか?」
「何だ、買わんのか?」
「いや…………買う」
せっかくの逸品だ。
ノーラに使わせるのも一興だろう。
ん? 何だ?
誰かが背中を突いてるな……
「ノーラだけずるいのです! ルーナも何か買うのです!!」
ずるいって……
お前、どうせ戦わないだろ!
タイトルは、スローなブギにしてくれ/片岡 義男 より拝借




