90話 ピザなのです!
窓の外は朝の日差しが眩しい。
ラビラントで迎える初めての朝。
なのだが……
ルーナは相変わらずだ。
「おい、ルーナ。起きろ!」
「ムニャムニャ……そーれ! アラーネムイ!」
眠いのはいつもだな。
ヴィオの魔法、蜘蛛の巣のつもりだろうが、全然違ってるぞ。
毎回、毎回、面倒な奴だな。
「眠くても起きろ、朝飯にあり付けんぞ」
「……ご飯? ご飯なのですか? ってあれ???」
飯と聞くと目覚めるのが早いな。
「クロム……ここ、どこなのです?」
「セモリナ亭だよ、昨日ラビラントに着いただろ?」
「……そうなのでした。そういえば、パスタをたくさん食べた気がするのです」
気がするだけじゃなく、食ったんだよ!
五人前ぐらいな。
「朝食は何なのですかねー♪」
脳内飯だらけ、だな。
食堂に行くと、サクヤとノーラがすでに朝食を終えて待っていた。
「済まん、待ったか?」
「いえ、今食べ終えたばかりですよ」
サクヤの前には、まだ食べ終えた皿が残っている。
「朝食は何なのです?」
皿を覗き込むなよ。
もう何もないぞ。
「ピザなのニャ!」
「ほほぅ〜……なのです♪」
なんだその“ほほぅ”は……
マジで頭の中が食い物だらけなんじゃないのか?
席に座ると、おかみさんが朝食のプレートを持ってきた。
ルーナにはベーコンたっぷりのピザとミートローフ、サラダにコーンスープ、俺には魔素水とミートローフだ。
しかし、どういう事だ?
ルーナのピザは明らかに他の客より多いぞ。
「ルーナちゃん、だったわね。あなた沢山食べるから、ピザも二人前にしておいたわよ」
昨日の晩も、相当食ってたしな。
すでに大食い認定されたようだ。
まあ、その分の料金は後で取られそうだが……
「今日は装備を揃えに行くんですよね?」
「そうだ。とりあえず武器屋だな。どこかいい店はないか?」
「そうですねぇ……」
「それなら、ジオ爺の店がいいニャ!」
「ジオ爺とな……」
まるで近所の駄菓子屋のようだな。
「ジオ爺はドワーフなのニャ。自分で作ってる売ってるのニャ」
ふむ……
オリジナルのワンオフ物か、面白そうだな。
「よし、まずはそこに行ってみるか」
「わかりました」
「いいのニャ」
「ピザ美味しのです」
約一名、何も聞いてないな……
ジオ爺の店は、人通りの少ない路地裏にひっそりと建っていた。
店自体は小さいが、裏手にも建物が建ってる。
その建物で武具を作っているのだろうか。
「しかし、こんな場所で商売になるのか?」
「隠れた名店なのニャ。意外と客が来るのニャ」
量産品とはまた違った魅力があるのだろう。
何にしても、いい物はどこのに店があっても売れるという事だな。
「ノーラは何か買ったことがあるのか?」
「ニャッ!! …………」
無いのか。
「た、高くて買えないのニャー。貧乏人には無理なのニャー」
ワンオフだし、高いのは仕方あるまい。
少なくとも、貧乏冒険者向きの店ではないようだな。
「でも値段分はあるのニャ。魔法が付加されているのニャ」
高いだけのことはあるようだ。
まあ、店の前で話していても意味ないな。
百聞は一見にしかず、入ってみるか。
ルーナに抱かれ店へと入る……
「お嬢ちゃん、大丈夫かい? 店は刃物だらけだ、気を付けるんだぞ」
店に“転がり込んだ”ルーナに店内にいたドワーフが声を掛けた。
久々にすっ転んだな……
毎度のことだが、猫でよかったぞ。
猫でなければ巻き込まれてるところだ。
「……痛いのです」
「だろうな」
その転び方で居たくない方がおかしい。
顔面が真っ赤だぞ。
「客か? まさか店を壊しに来たわけじゃないんだろ?」
「客だ」
「客です」
「客なのニャ」
「……客なの、です」
いや、起きてから言えよ。
「そうか……わしがこの店の主、ジオだ。皆はジオ爺と呼んでいるがな」
「クロムだ」
「サクヤといいます」
「ノーラなのニャ」
「……ルーナなのです」
だから起きろから言えって。
「ふむ、喋る子猫に若武者と猫耳族の娘っ子、それにドジなお嬢ちゃんか……」
的確だな……最後が。
「まさか、これでパーティーを組んでるなんて言わんだろうな?」
すいませんね。
「その“まさか”だ」
「何だ、しかも子猫がリーダーなのか?」
別にリーダではないな……召喚魔だし。
しいて言うなら、そこのドジっ娘がリーダーだな。
たぶん……
タイトルは、チームしゃちほこ「ピザです!」より拝借




