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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第二章 ラビラント編
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85話 再会のラビラント


「待たせたな」


 食堂で待っていたサクヤに声を掛ける。

 料金を前払いし、部屋を下見しに行っている間、サクヤは食堂で珈琲を飲んでい待っていた。


「いえ、大丈夫です。部屋はどうでした?」


 部屋は、大鍋亭と大差のない大きさと調度の部屋だった。

 離れには他にも宿泊客がいる様だ。

 どんな住人なのかは会ってみない事には分からんが、概ね問題はないだろう。

 そもそも大鍋亭の時のように、住人みんなで和気あいあい、なんてことは稀だろうしな。


「良い部屋なのです♪」

「ああ、問題はないな」


「そうですか、それはよかった。……では、行きましょうか」


 例の魔道書屋か。

 別にこれと言った用はないんだが、せっかく案内人まで用意してくれたんだ、行ってみるか。

 それに、誰も知り合いのいない街だ。

 頼れる者も必要だろう。


「近いのか?」


「ええ、すぐですよ」


 セモリナ亭を出ると、サクヤはすぐに路地へと入って行った。

 その後を、ルーナが俺を抱えて付いて行く。

 迷路のような入り組んだ路地を抜けると、細い通りに出た。


「あそこがミラベルさんのお店です」


 こじんまりとした店はレンガ造りで、木製の扉には“ミラベルの魔道書屋”と書かれた小さな金属のプレートが掲げられている。

 路地裏の雰囲気といい、どこかヴィオの店に通じるものがあるな。

 まあ、類は友を呼ぶと言うから似たもの同士なのだろう。


 いや、待てよ。

 似た者同士という事は……

 ミラベルとやらも、大酒飲みじゃないだろうな?


 俺の心配など気にも留めず、サクヤは店の扉を開ける。


 店の中には小さなカウンターとテーブルセット、それに猫足のソファー。

 そして、壁には所狭しと魔道書が収められている。


「ミラベルさん、いますか? ルーナさんを連れてきましたよ」


「はーい」


 店の奥から軽快な返事が聞こえ、一人の女性が出てきた。


 オレンジ色の髪のショートボブに丸メガネ。

 年齢的にはヴィオやレネットと同年代であろう。

 

「サクヤ、済みませんでしたね」


「いえ、いつもお世話になってますから」


「ええっと……あなたがルーナ、そして……君が、例のクロムくんね」


「ルーナなのです」

「クロムだ、よろしくな」


 例の、がどういう意味か気になるな。

 ヴィオがいらぬ情報でも植えつけたか?


「私はミラベル。この魔道書店の店主です。そして……」


「オレの旧友だ」


 店の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 相変わらずの黒い飾り気のない魔道士のワンピース。

 手入れもしていない濡羽色の長い髪。

 そして、たわわな爆乳……


 そう、声の主はズッカにいるはずのヴィオだった。


「あれれ? ヴィオがいるのです」

「ヴィオ……お前何でここにいるんだ?」


「何でって……お前たちが来るのを待ってたんだろ?」


 いや、そういう事ではなくてだな。


「意外と遅かったじゃねぇか、待ちくたびれたぞ!」


 いや、だからだな……


「どうやってここに来たの、なのですか?」


「言っただろ? 一度行った所には転移出来るって」


 ……

 …………

 ………………それって


「もしかして、それで俺たちもここに転移出来たんじゃないのか?」


「ん? ああ……出来るな、簡単に」


 くそっ! やられたな。

 にやにやしながら言いやがって。

  

「こういうのは自分たちの足で旅するからいいんだろ? それに……頼まれなかったしな」


 いいんだよ、そんな一般論は。

 そもそもルーナなんて、自分の足で旅してないぞ!


 気付かなかった俺も悪いから反論も出来んがな。


「それに、あのシチュエーションでお前らだけ転送ってもの、恰好付かないだろ?」


 今になれば、ザンバが同じ朝に旅立とうなんて言い出したのが、いい迷惑だったって事だな。

 まあ、今さら何を言っても仕方ないか。


「で……何しに来たんだ?」


「何だよ、冷たいな。せっかく来てやったのに……」


 別に誰も頼んでないぞ。


「いや、ほら! いくらオレの知り合いだといっても初対面だし……」


 …………


「ああ、もうぉ! 暇だったんだよ!!  いいだろ、来たって」


 最初からそう言えよ。

 どうせ、誰のいなくなって酒の相手もいないんだろ?

 レネットは忙しいしな。 


「ということで改めて紹介するぞ。魔道書屋のミラベルだ。」


 それはさっき本人から聞いたぞ。


「こう見えて元冒険者だ」


 冒険者、だと?

 見えんな。

 まあ、隣にも冒険者に見えん奴はいるが……


 ヴィオの旧知ということは、一緒にパーティーでも組んでいたのか?

 魔道書屋をしているくらいだから、魔道士なのか?

 しかしヴィオも魔道士だし、そもそも服装が魔道士のそれではないな。


「一応、しがない魔法剣士でした」


 何が“しがない”のか知らんが、ヴィオと組んでいたのならそれなりの腕前だったのだろう。

 魔法剣士と言えば、グラシアがそうだ。

 しかし今は、そんな雰囲気は微塵も感じないな。

 どこから見ても書士か何かにしか見えんぞ。


「そういうことで、顔合わせと称してみんなで一杯やろうぜ!」


 まだ昼なんだがな。

 それに昼飯もまだだ。

 飯抜きなどルーナが許すわけもない。


「お酒よりご飯なのです」


 ほらな。


「お酒は夜にして、今は昼食にしましょう。軽くサンドイッチでも作ります。それでいいわね、ヴィオ!」


「うっ! そ、そうだな、夜でいいよな。夜で……」


 旧知の仲だけあって、ヴィオの扱いも上手いな。

 それに料理も出来るとは、女子力も高い。

 どこぞの残念美少女にも見習って欲しいものだが……


「サンドイッチ……昼食……♪」


 昼飯と聞いただけで、この調子だ。

 それは無理と言うものだろうな。 

タイトルは、河合その子「再会のラビリンス」より拝借

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