84話 ファースト・ラビラント
「ようこそ♪ 夢と希望の街ラビラントへ!」
……
…………
なんだこれ?
マジでテーマパークじゃねぇか。
門には衛兵がいるものの、特に何をしている風もない。
代わりに数人の女性が門へと進む人々に声を掛けている。
「冒険者のかたは右の方へ、商人のかたは左の方へ、それ以外のかたは中央へお進みくださーい」
俺たちは、言われるままに右の方へと進んでいく。
「何か違いはあるのか?」
ここの住人であるサクヤに尋ねてみた。
「いえ、右には冒険者ギルドの案内所、左には商人ギルドの案内所があるだけです」
「つまり……どういう事だ?」
「このまま進むと、冒険者ギルドの案内嬢に捕まって説明を受けますね」
「その説明は聞く必要があるのか?」
「いえ、別に……」
じゃ何で右に来たんだ?
そのまま中央でよかったんじゃないのか?
「でもせっかくですから」
何が“せっかく”なのか分からんが……
まあ、仕方あるまい。
「ラビラントは初めてですか?」
ギルドの案内嬢であろう、そろいの服を着た女性の一人に声を掛けられた。
「僕はここの住人ですが、彼女は初めてです」
サクヤがそう返事をすると、女性はルーナに向かい早速話し始めた。
「ようこそ、迷宮都市ラビラントへ♪ 冒険者の方でよろしかったでしょうか?」
よろしかったでしょうか、だと?!
なつかしのバイト敬語か……
フリーターの俺の常用文句だな。
「よろしかったのです」
「ここラビラントには大小様々なダンジョンが御座います。特に二大ダンジョンと呼ばれているのが、あちらに見えます塔のダンジョンと、あの丘の頂上の洞穴から地下へと続くダンジョンです」
ふむ、塔と地下か。
「ちなみに、塔のダンジョンを通称“バベルの塔”、地下ダンジョンを通称“タルタロス迷宮”と言います」
どこかで聞いたような呼び名だな。
「それで、ここからが本題です。ダンジョンに入れるのは冒険者に限られ、なおかつ入場料が必要になります」
にゅ、入場料だと?
ますますテーマパークじゃねぇか。
「もちろん、ダンジョン大きさによって入場料も違います」
もちろん、なのか?
大体にしてダンジョンって自然物だろ?
何を勝手に入場料なんか設定してんだ?
「なお、お得なパスポートも御座います。年間パスポートなんていかがですか?」
……
…………
………………間違いない。
完全にテーマパークだな。
「まさか夜になると、なんちゃらパレードとかが始まるんじゃないだろうな」
「あれっ? 話せるんですか? ……凄いですね」
あまりのテーマパークっぷりに、つい言葉を発してしまったが、たいして驚かれなかったな。
やはり冒険者が多く集う街だけあって、少なからず話せる召喚魔もいるのだろう。
「言ってませんでしたが、この街では、大きな召喚魔や見た目に問題がある召喚魔など、他人の迷惑になるような召喚魔の市街での召喚は禁止されています」
これの事か。
なるほどこれならサクヤの召喚魔は無理か。
炎のドラゴンなど、迷惑千万以外の何物でもないだろうしな。
「俺だったら問題ないのだろ」
「大丈夫ですよ。どうみても子猫ですし」
さっきまではデカかったけどな。
「で、どうすればいいんだ、サクヤ? 買った方がいいのか?」
「うーん……後でもいいじゃないですかね? どこでも買えますから」
「どこでも?」
「ええ、あちこちにギルドの販売所がありますから」
なんだ。
それなら全然問題ないな。
「では後にしよう」
どうせ今日はダンジョンには入らんだろうしな。
「そうですか……では、後で是非お買い求めくださいね♪」
営業スマイルを絶やさないギルドの案内嬢と別れ、ラビラントの中心街へと歩を進める。
ラビラントの街は活気に溢れている。
魔道具店や武器や防具を売る店など、冒険者向けの店。
八百屋や肉屋、服屋に生活雑貨の店など一般の店。
そしてルーナの大好きな屋台。
様々な店が立ち並んでいる。
そしてそこにはたくさんの客が出入りしている。
「王都なみの賑わいだな」
「そうですね。僕も最初はびっくりしました」
王都なんて行ったこともないけどな。
まあ、何となく……イメージ的なものだ。
「あっ、ここを左です」
サクヤは大通りを左へと曲がり、路地へと進んでいく。
路地から出た裏通りも、大通りほどではないが人が行き交っている。
ズッカなら大通りと言っても問題なほどだ。
しかしサクヤは、またそこから路地へ入り、結局ズッカの冒険者通りと変わらぬ程度の通りへと出た。
「あそこがセモリナ亭です。僕も住んでるんですよ」
そこはレンガ造りのこじんまりした宿屋だった。
「話はしておいたので部屋はあるはずですが、とりあえず顔を出しておきましょう」
扉をくぐると一階は食堂になっいるようで、雰囲気もどこか大鍋亭と共通するものがある。
「なんだか大鍋亭みたいなのです」
ルーナも感じたようだ。
「あら、サクヤ。この娘が今日から泊まるっていってた娘かい?」
大鍋亭のおかみさんのようにふくよかではないが、優しそうなおかみさんが顔出した。
「ルーナなのです。よろしくなのです」
「かわいい娘じゃないか。本当に冒険者なのかい?」
「本当なのです。Bランクなのです!」
ルーナは首のシルバー登録証を自慢げに見せている。
ほとんどお前の功績ではないがな。
「うちにもBランクはいるけど、さすがに女の子でBランクはいないわね」
「えっへん!」
だからそれは俺のおかげで、お前は何もしてないだろ!
「裏庭の奥の離れが女性用で、二階の奥が空いてるよ」
なんだ、それも大鍋亭と同じか。
おかみさんもよさそうな女性だし、大鍋亭のように住み心地がよさそうだな。
ルーナも気に入りそうだ。
これで飯が美味ければ、だけどな。
タイトルは、AKB48「ファースト・ラビット」より拝借




