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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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79話 明後日はどうだ


「いや、ラビラントに行ったことがあるかを聞きたかった訳じゃないんだ」


「じゃあ聞くなって! で……何を聞きたいんだよ」


「いやな……宿屋とか知ってるのか聞きたかったんだが……」


 大体にして、ラビラントに行ったことがあるか聞いただけで、挙動不審になる方もおかしいだろ。

 ラビラントに何かあるのか?


「何だ、そんな事か……」


 そんな事って……

 宿屋は大事だろ!

 特に食い物が不味いところだと、ルーナにとっては死活問題だ。



「それなら“セモリナ亭”って宿屋がいいぞ。パスタが美味いし、いい黒炎酒ブラヴォドもある!」


 黒炎酒ブラヴォド情報はどうでもいいな。

 と言うよりも、ヴィオはどこに行っても黒炎酒ブラヴォドなんだな。

 黒炎酒ブラヴォドに良いも悪いもあるのだろうか……

 あるんだろうな。

 

 セモリナって名前からしてパスタがメインなんだろう。

 パスタが美味いってのはいいかもしれんな。

 ルーナ的に。


「それともう一つ……」


 もう一つ?

 おすすめ宿がもう一つあるのか?


「セモリナ亭の一本裏手に、小さな魔道書店がある」


 魔道書店だと?

 俺たちにあまり関係なくないか?


「オレの昔からの知り合いの店だ。ラビラントに行ったら訪ねてみろ」


 魔道書……知り合い……

 何か聞いたことがあるワードだが……


 ……

 …………!!


 ああ、あれだ。

 トリヴィアが店の奥で人化してた時だ。

 あれは、そこの店に納める魔道書を書いてたんだな。

 挙動不審の理由はそれだな。 

 もしかして、そうやって海賊版の魔道書を売って生計を立ててるのか?


 ヴィオも悪よのう……


 って、悪代官風に言ってみたが、ここじゃ著作権なんて概念ないしな。

 悪でもなんでもないな。


「おい、クロム! 聞いてんのか?」


「あ、ああ……魔道書店だろ、聞いてるよ。で、その友人の店主とやらはどんな奴なんだ?」


「どんな奴って言われてもな。まあ、元魔法剣士の魔道書収集家だな。趣味が高じて店をやってるような奴だ」


 元魔法剣士ねぇ…… 

 魔道書収集家とか、怪しすぎな気もするが大丈夫なのか?

 ヴィオの昔馴染みってのもあるし、正直微妙だな。


「ちょっと変わった奴だが、腕は立つぞ」


 ヴィオから見て“ちょっと”なら、相当な変わり者じゃないのか?


「魔法はイマイチだけどな」


 それもお前から見ての話だろ?

 ヴィオから見たイマイチは、世間一般的には充分過ぎるレベルだったりしそうだな。


「とにかく、困ったことがあったら……いや、なくてもその店に顔を出して色々と聞けばいいさ」


 困ったことが無くても行くのかよ。

 早い話が、説明が面倒になってきたから、後は現地でそいつに聞けって事だな。


「了解だ。ラビラントに行ったら最初に寄ることにしよう」


 見知らぬ街だ。

 知り合いがいるに越したことはあるまい。

 とにかく、宿の見込みは付いたし、困ったときの現地人も確保できそうだ。

 あとは尽きてから考えるとするか。



「ところで、ヴィオ……フライドポテトフリッツは食わんのか? 無くなるぞ!」


「何言ってんだよ、あれだけあったのに無くなる訳……」


 ルーナを甘く見るなよ。

 他に取り柄はないけどな。





 今夜も大鍋亭には、いつものメンバーが集合している。


「おい、レネット。黒炎酒ブラヴォドと……フライドポテトフリッツをくれ!」


「なんだ、ヴィオ。最初からつまみも注文なんて珍しいな」


「いや、何となく……な」


 違うな、俺は知っている。

 昼に食い損ねたからだ。


「ところで、エフィルたちはいつ出発するんだ?」


「私たちは明後日出発するつもりです」

「こうしてみんなと一緒の夕食も明日までです」 


 エフィルもラエルも寂しそうだ。


「俺たちも明後日に出発するつもりだ!」


 ザンバに聞いたつもりはなかったんだが?

 

「クロムとルーナはいつ出発するんだ?」


「まだ決めてはいないが……」


「どうだ? 俺たちやエフィルたちと同じく明後日にしないか?」


「別にかまわんが、何か理由でもあるのか?」


「いや、どうせならみんな同じ日に出発ってのも粋だろ?」


 卒業式か何かか?

 ザンバらしいっちゃザンバらしいが……


「まあ、いいだろう」


 別に準備する物もないしな。

 急ぐ必要もないが、ザンバの言う通り、みんなで一斉に出発するのも一興だろう。



「決定だな! ではみんなの門出を祝して……かんぱーい!!」


 いや、それは明日やれよ。

 というか、なんでいつもザンバが乾杯するんだ?


 まあ、それも明日までか…… 

タイトルは、奥田民生「明日はどうだ」より拝借

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