78話 フライ,ポテト,フライ
ルーナの朝は……遅い。
ここズッカでも、生まれ故郷のコロロでも、そして近々向かうはずのラビラントでも……
俺は一生ルーナの目覚し時計代わりなのだろうか?
「おい、ルーナ! 起きろ」
「ムニャムニャ……それっ“アゲターテ・ポテト”」
たぶんヴィオの呪文“門よ、開け!”だとは思うが……
門よりも目を開けて欲しいんだがな。
「うーん……あれ? アウロラが猫に?? ……なんだクロムなのですか」
なんだ、じゃねぇよ。
お前がなんなんだよ!
毎朝毎朝寝ぼけやがって。
「揚げたてポテトなら後で買ってやるから、いい加減に起きろ」
「何の事なのですか?」
「さっき寝言で“揚げたてポテト”とか言ってたんだが、そんな夢を見てなかったか?」
「魔法の夢なら見てたですけど……」
「ならフライドポテトは、いらないな」
「それは、いるのです! あとで買うのです!!」
そう言うとは思ったがな。
まあいいだろう。
どうせ今日はヴィオの店に行くつもりだ。
ついでにフライドポテトくらい買ってやろう。
「それで、お前ら……フライドポテト片手に朝っぱらから何のようだ?」
いや、朝っぱらからって……
ほぼ昼だぞ?
それにフライドポテトは、片手にじゃなくて両手にだ。
あと、ピザとライスコロッケ(アランチーニ)もあるぞ。
「ラビラントの事を詳しく聞こうと思ってな」
「で……ラビラントとフライドポテトは何か関係があんのか?」
「いや、全くない!」
しいて言うなら、ただの昼飯だな。
「……だろうな」
じゃあ聞くなよ。
「フライドポテトといったら黒炎酒だが……今はお茶にするか」
納得できんな。
フライドポテトといったら麦酒に決まってるだろ!
後半は同意だが……
「ヴィオの家に、酒以外の飲み物もあるとはな」
「当たり前だろ? オレを何だと思ってんだよ?」
いや、何って言われても……
酒豪爆乳紐パン魔道士だが?
それ以外に何があるんだ?
「で……ラビラントの、何を聞きたいんだ?」
「何って……いろいろ、かな?」
「いろいろだとぉ!」
すいませんね。
田舎者の飼い主と、生まれて間もないの猫なもんで……
「……まあ、仕方ねぇか」
よろしくお願いしやーす!
「とりあえず、ラビラントの説明の前にダンジョンの説明だな。ダンジョンてのは――」
曰く、ダンジョンはある日突然出来るらしい。
地下へと続く洞窟だったり、塔のような建物だったりと、姿も大きさもまちまちなのだそうだ。
ダンジョンの中のは魔物が棲み、宝箱があちこちにある。
早い話が、前世の一般的なRPGと一緒だな。
「で、ラビラントはもともと何もない、名前もないような土地だったんだが、ある日突如として大量のダンジョンが一斉に出来たんだ」
ほう……なかなか興味深いな。
「そうなると当然、冒険者が押し寄せるのが当たり前だろ?」
「まあ、そうだろうな」
「そして冒険者の為の宿屋、飲食店、武具や魔道具を売る店なんかが出来る訳だ」
「で……今のラビラントが出来たって事か」
「そういう事だ。だからラビラントは迷宮都市って呼ばれてるんだよ。いわゆる新興都市だな」
何もないところにダンジョンが出来て、そこの新たな街が出来たという訳か。
まるでどこかのテーマパークだな。
「冒険者の為の街と言ってもいいな。そういう意味ではブロセリアも一緒だけどな」
「ザンバたちが行く、そのブロセリアとはどんな所なんだ?」
「一緒だよ、ラビラントと。魔物が出る場所が、自然の中かダンジョンかの違いだけだな」
同じか?
某夢の国に行くか、キャンプ場に行くかくらい違うぞ。
「で、何故俺たちがラビラントで、ザンバたちがブロセリアなんだ?」
「別に深い意味はないな。お前たちにラビラントを勧めたから、ザンバたちにはブロセリアを勧めただけだ」
もう少し何かあるのかと思ったが、何の意味もなかったのかよ。
適当だな……
「しいて言うなら、自然の中の方が“逃げも隠れも出来る”からな」
後付け感は否めないが、事実ではあるな。
ダンジョン内は逃げる方が戦うより大変だったりするしな。
いや、現実にダンジョンに入ったことはないから、ゲームの話だが。
「それでだ。肝心な事を聞きたいのだが……」
「なんだ?」
「結構詳しいようだが、ヴィオはラビラントに行ったことがあるんだよな?」
「えっ? あ……ああ、そうだな……あるというか何というか」
「何だ、行ったことないのか?」
「いや、あるよ、あるって!」
何なんだよ、いったい。
行ったことある割には歯切れの悪い返事だな。
何だか怪しい気がするが……
まあ、行ったことあるかないかが問題な訳じゃないし、まあいいか……
タイトルは、フライ,ダディ,フライ/金城 一紀 より拝借




