77話 これが皆の生きる道
今夜も大鍋亭で、恒例の飲み会が始まった。
いつもの場所でいつものメンバー……
しかし、それもあと数日だろう。
「それでルーナとコロムはどこに行く気なんだ?」
ヴィオが黒炎酒を片手に聞いてくる。
「いや、まだ決めておらんな」
冒険者を続けることにしたのも、ズッカを離れることにしたのも数日前だ。
どこに行くかまでは決めかねているのが現状だ。
「そうか……なら“ラビラント”でも目指したらどうだ?」
ラビラントだと?
それは……
「迷宮都市“ラビラント”だ。この国最大のダンジョンをはじめ、ダンジョンがたくさんある街だぜ」
ダンジョン、ね。
前世ではおなじみだったが、ここではまだお目にかかったことはない。
「それはおもしろそうだな」
「正確には、ダンジョンある街じゃなくて、ダンジョンが出来た場所に街が出来ただけなんだけどな」
ヴィオの話では、ある日突然大小のダンジョンが出現し、そこに徐々に街が出来たのだそうだ。
ダンジョンに冒険者が集まり、その冒険者目当てに色々な店が出来はじめ、だんだんと大きな都市になったらしい。
今では商都ルグーザにも負けないほどの都市と化してしるそうだ。
「冒険者が一度は目指す場所の一つだな。ダンジョン制覇ともなると一躍有名人だからな」
魔道士がイルミンスールを目指すように、冒険者はラビエントを目指すのだ。
「有名人だと! じゃあやっぱり俺も――」
「今、ザンバがラビラントに行ったって、小さなダンジョンすら制覇出来ないぞ……」
「ぐぬぬ……」
「お前らがするべき事は、もっと実力を付ける事だろ! ダンジョンなんてそれからだ」
「ぐぅ……」
ザンバは完全にヴィオに言い負かされたようだ。
まあ、事実だしな。
「ルーナ、ヴィオの勧めだ。ラビラントでダンジョン制覇といくか?」
横で肉にかぶり付いているルーナに話を振ってみた。
「ふぇ? ダンジョン? ダンジョンって美味しいのですか?」
全く話を聞いていないな。
ダンジョンは食い物じゃないぞ……
「ルーナはどこでもいいのです。クロムが決めるのです!」
そう言うと思ってたがな。
面倒なことは全部、俺任せだし。
「では俺たちは、ラビラントに向かうとするか!」
細かいことはともかく、行き先は決定だな。
「……で、結局ザンバたちはどうする気なのだ?」
「ん? ああ、どうしたいいやら……」
「それなら、お前たちの行き先もオレが決めてやるか? そうだな……」
ヴィオが勝手にザンバたちの行き先を考え出した。
変な場所を言い出すんじゃないだろうな。
グラシアもいるんだから、ちゃんと考えてくれよ。
「ブロセリアなんてどうだ?」
「ブロセリア……やっぱりそこが一番か」
ヴィオの勧めにザンバは納得気味だ。
どうやらザンバたちも、そのブロセリアを選択肢に入れていたようだな。
「そのブロセリアとはどういう所なのだ?」
残念だが、俺にはそのブロセリアがよくわからん。
「ああ……ブロセリアは街の名前と言うよりは、地域の総称だな。魔物が多く住む山や森がある」
ヴィオの説明によると、ブロセリアは街の名前だが、冒険者にとってはその街を拠点とした周辺地域全てを指すらしい。
魔物の森パンポン、ドラゴンの棲むドルーク山、水魔の巣窟ルルーガ湖など、まさに冒険者の為にあるような場所なのだそうだ。
その場所場所で魔物の強さが違うらしく、冒険者の鍛錬にはもってこいの所らしい。
「ブロセリアの街はラビラントに比べれば大きくはないが、冒険者のための街だからな。困ることもないだろ」
「そうだな……そうするか、なあグラシア! ドーリ!」
「だからそこがいいって、ずっと言ってたのに……」
「ザンバが決めかねてただけだな」
なんだ。
二人はそこにする気だったのか。
ザンバが悩んでいただけか……
リーダー変えろよ。
「みなさん行き先は決まったみたいですね?」
エフィルは少しさみしそうな顔でそう言った。
「ああ、俺のルーナはラビラント、ザンバとグラシア、ドーリはブロセリアだ」
「そして私とラエルはイルミンスール……みんなバラバラですね」
「せっかくみんなで楽しかったのに……」
ラエルも悲しそうだ。
出会いがあれば、別れがある。
しかも皆、冒険者や魔道士なのだ。
今でなくても、いつかは別々の道を歩むことになる。
そして、またいつか出会う事もあるはずだ。
「すぐに会えるさ、またここでな!」
「いいこと言ったなクロム! みんな強くなってまたここで会おうぜ!」
俺はいつもいい事しか言わんぞ、ザンバ。
それに俺はすでに強いけどな……
「んじゃ、オレとレネットはズッカでお前たちを待ってるとするか!」
「ああ、そうだな! ほい、黒炎酒のおかわりだ」
レネットはともかく……
ヴィオが黙ってズッカで待ってるとは、思えんがな。
「じゃあ、みんなの前途を祝して……かんぱーい!」
だからなぜザンバが仕切ってんだよ?
大鍋亭の、最後から何番目かの宴は、まだまだ夜更けまで続きそうだ。
タイトルはPUFFYの「これが私の生きる道」より拝借




