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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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80話 彼女らは行くの、迷宮に


「みんなの門出と明るい未来に……かんぱーい!」


 ザンバよ、それは昨日もやっただろ?

 毎回乾杯したがるくせに、何のひねりもないな。

 田舎の町会議員かよ。


 相変わらずのザンバの乾杯で、最後の酒宴は始まった。


 俺とルーナは迷宮都市ラビラント。

 ザンバとグラシア、ドーリは魔物の森ブロセリア。

 エフィルとラエルは魔道都市イルミンスール。

 ヴィオとレネットはズッカに残るが、明日になれば皆がそれぞれの新天地へと向かうことになる。


「クロムー! モフモフさせて!」

「私もお願いね」


 ラエルは泣き顔で俺をモフり出す。

 エフィルも若干涙目だ。


「私もよろしくね」


 グラシアもちょっと泣きそうだ。


「ラエル、泣くならモフらせんぞ! エフィルもグラシアもな」


「えー! 泣いてないし!」


 ラエルは泣きながらも笑顔を作った。

 エフィルもグラシアも涙を拭き笑顔を見せる。


 それでいい。

 美人は笑顔が一番だ。


「泣いてないから、オレもモフらせろ!」


 ヴィオも便乗してきやがった。


「俺も泣いてないぞ」


 ザンバ……お前はダメだ。

 男はモフらせんぞ! 絶対にだ!!!



 しかし俺は幸せ者かも知れんな。

 一度死んだ身だが、生まれ変わって召喚魔として、この世界に降り立った。

 契約者かいぬしのルーナをはじめ、ザンバたちやエフィル姉妹、レネットそしてヴィオ……

 短い間だが、このズッカで素敵な仲間と巡り会えた。

 

 前世では仲間なんて存在しなかった俺だが、今はこうして別れを悲しんでくれる人もいる。

 とうに死んだ両親や、事故で死んじまった兄に、今の俺を見せたいところだ。


 とはいいつつ、俺も死んじまってるんだがな……


 ラエルたちの涙のせいで、少々感傷的になっちまったようだ。

 せっかくの最後の酒宴だ、楽しく飲もうか!


 まあ、隣で平常運転で、美味そうにご馳走を頬張っている奴もいるがな。 

 あと黒炎酒ブラヴォドを飲んでる奴もな。

 ルーナとヴィオのことだがな。



 酒宴は続き、最後はレネット、そしておかみさんまで参加して夜更けまで続いた。

 明日は皆、それぞれ旅に出るのに大丈夫なのだろうか?

 俺は酔わんから問題ないが……






「おい……! おい、ルーナって! 起きろ、朝だぞ」


 新たな旅たちの日でも、ルーナは相変わらずだな。

 


「ムニャムニャ……とう!“コンペートー・ガ・ネーゾ”」


 金平糖なんて、この世界には初めからねーよ!

 たぶん“雪の嵐”(タンペート・ド・ネージュ)の事だろうが……

 やっぱり相変わらずだな。


「いい加減に起きろ! 皆、出発するぞ」


 せっかく全員一緒に旅立つ予定なのに、お前のせいで台無しになっちまうぞ。


「あれ? もうラビラントなのですか??」


 まだズッカだよ。

 出発すらしてないだろっ!!

 やっぱり……相変わらずだな。






「これでやっとみんな揃ったな」


 すまんな、ザンバ。

 寝坊したくせに、朝食はしっかり取る奴がいてな。


 ザンバの提案で、別れの場所は大通りの中心広場になっていた。

 ここから三方に分かれるのだそうだ。

 別に大鍋亭の前で充分だと思うんだがな……

 

「これから俺たちは、別々の道を歩むこととなる」


 つい謝ったが、何でザンバが仕切ってんだ?

 しかも演説をぶってるし。


「だが心は一つだ。お互い頑張ろうぜ!」


 お前と心を一つにした覚えはないけどな。


「みんな! また会いましょうね」

「みんな楽しかったわ、元気でね!」


 エフィルとラエルは、名残惜しそうにイルミンスールへと向かっていった。


「俺とルフォールは、ルーナとクロムに負けないくらい強くなってやるぜ!」


 いや、ルフォールは俺に匹敵するほどの強さはあると思うぞ。

 お前が強くなればいいだけだな。


「またね、ルーナ、クロム。ヴィオとレネットも今までありがとう」

「……また会おう」


 グラシアもドーリも、これから大変だろうが頑張れよ。

 ザンバのお守りが、な。


 ザンバたち三人も、何度も後ろを振り返りながら、ブロセリアへと旅立っていった。



「さてと、後は俺たちだけだ。ルーナ、忘れ物はないな?」


「ないのです!!」


「ではヴィオ、レネット、世話になったな。行って来るぞ!」

「ありがとうなのです♪ 行って来るのです!」


「ああ、元気でな!」

「気を付けるんだぞ」


 二人に別れを告げ、広場を後にする。

 ルーナは一度だけ振り返り、二人に向かい大きく手を振り、意を決したように俺に話しかけてきた。


「昼ご飯は……買ったのですか?」


 まだだが……

 買うのは二人が見えなくなってからにしてくれ。




 こうして俺とルーナは、短くも濃い時間を過ごしたズッカの街を後にして、新天地ラビラントへの一歩を踏み出した。






 昼飯を買ってからだが……

タイトルは、彼女らは雪の迷宮に/芦辺 拓 より拝借


第1章ズッカ編、完となります。

幕間&少々の充電後、第2章迷宮都市ラビラント編を始めたいと思います。

詳しくは活動報告にて。

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