70話 コロロモドル
もうすぐコロロに着くらしい。
さっきからオレの背中からルーナの声が聞こえるが……
「うふ……うふふふ♪」
コロロに着くのを楽しみにしているのだろうか?
それとも黒毛野牛の肉を楽しみしているのだろうか?
後者の気がしてならない。
遠くに集落のようなものが見えてきた。
見張り用のやぐらもあるようだ。
「おい、ルーナ。あれがコロロか?」
「見えないけど、そうなのです」
さすがにルーナには見えないのか。
だがこの辺にある村は、コロロしかないようだ。
間違いあるまい。
「ところで、この大きさのままでいいのか?」
今の俺は、ルーナを乗せるために、虎ほどの大きさだ。
このまま村まで行ったら、不味い事になるかの知れんな。
「大丈夫、なのです……たぶん」
たぶん……か。
微妙な返事だな。
まあ、幾らなんでもいきなりは攻撃してこんだろう。
攻撃して来ても何の問題もないけどな。
とりあえずこのまま向かうとするか。
やぐらの見張りは、主に魔物対策だろうが、一応不審人物はチェックもしているはずだ。
デカい猫に乗った少女なんて、不審人物以外の何物でもないからな。
誰かは対応に出てくるだろう。
その時に乗っているのがルーナと分かれば、特に問題はないだろう。
村に近づくと、案の定大型のククリナイフを携えた若者が二人やってきた。
「おい、貴様……ってお前、ルーナじゃないか?」
「久しぶりなのです、ムック。ただいまなのです!」
どうやら話しかけてきた赤毛の男はムックというらしい。
もしかしてもう一人は……
「イヴァンもただいまなのです」
普通だったな。
ちょっとは期待したが、髪も金髪だしな。
緑だったらいろいろと良かったんだが……
「ただいまって、お前……娼婦になったんじゃないのか? それに何だそのデカい猫は!」
ガチャ……いや、イヴァンがそう言って、俺をじろじろと眺めている。
せめて黒豹くらい言ってもらいたかったな。
「娼婦じゃなくて冒険者なのです。これはクロム、私の召喚魔なのです♪」
「冒険者? 召喚魔?? もしかしてこのデカいの……高位召喚魔なのか?」
「もしかしなくても高位召喚魔なのです!」
「マジかよ……」
「マジなのです」
イヴァンは信用してないようだが、残念ながらルーナは冒険者で、この俺は高位召喚魔だ。
ちなみに都会では“ハイスペック”と呼ぶのだよ、イヴァン君とやら。
ズッカは言うほど都会じゃないがな。
さて……
いくらルーナが冒険者だと言ってもイヴァンは信用しないようだから、ここは俺が――
「これを見るのです!」
ちらりん!
ああ、その手があったな。
ルーナは首にぶら下げている高位召喚の護符と、Bランク冒険者の登録証を見せつけた。
「マジか! マジで高位召喚の護符じゃねえか! もう一つは……見たことないな。何だこれ?」
「ビ、Bランクの冒険者登録証、なのです」
「確かに冒険者の登録証みたいだが、シルバーの登録証なんて見たことないぜ?」
だからさっきからBランクだと言ってるだろう。
なかなか疑い深い奴だな。
「冒険者の登録証は、ランクで素材が違うと聞いたことがある。確かBランクはシルバーなはずだな」
「そうなのか? ムック」
「そうなのです。ムックの言う通りなのです」
「ルーナ、お前に聞いてねぇよ!」
どうやらイヴァンは、ルーナが冒険者だと認めたくないようだな。
ルーナに負けるのが嫌なのか?
若干ルーナより年が上のようだが、話しぶりからして幼馴染のようだし……
しかし、護符と登録証を見せても、まったく埒が明かないな。
ここはやはり俺が――
「とにかく高位召喚の護符は本物のようだし、何よりルーナなのだから、村に入れるのには何の問題もないだろう」
……必要なかったな。
イヴァンはまだ何か言いたそうだったが、ムックの方が年上のようで、しぶしぶ納得したようだ。
というより、ムックの言う通り、ルーナはコロロの人間なのだから、入れて当たり前なのだがな。
「しかしムック、このデカ猫を村に入れるのはどうなんだ?」
「ふむ……確かにそうだな」
またイヴァンが文句を言って来た。
大きさが問題なら、元の大きさになるだけだ。
「では小さくなればいいのだな?」
「「しゃ、喋ったー?」」
久々に驚かれると新鮮だな。
実はさっきから喋って驚かしたかったんだが、タイミングをことごとく外されたからな。
「クロムは話せるし、小さくもなれるのです。というよりは元々小さいのです。ねぇ、クロム♪」
そうルーナに言われたので、元の大きさに戻ってみた。
「話せる召喚魔なんて初めて見たな」
「しかも元がこんなチビ猫だなんて……」
デカ猫から一転してチビ猫かよ。
「ま、話せるのはともかく、この大きさなら普通の子猫と変わらん。村に入っても問題ないな」
「あ、ああ……そうだな」
「やっと村に戻れるのです」
足止めを食ったが、ようやくルーナの育った村、コロロに入れそうだ。
ルーナも久しぶりに両親に会えるな。
いや……よく考えたら半月も経ってないんじゃないのか?
タイトルは、nobodyknows+「ココロオドル」より拝借




