69話 コロロへ向かう帰り道
「さて、ルーナ。準備はいいか?」
「大丈夫なのです♪」
大鍋亭のおかみさんにはコロロに行く事を伝えたし、昼飯も屋台で買った。
荷物はいつも通り異空間に収納済みだ。
ところでこの異次元収納ってのは、俺が死んだらどうなるんだ?
取り出し不可能だよな。
「おい、ヴィオ! ちょっと聞くが、異空間に収納した物は俺が死んだらどうなるんだ?」
わざわざ大鍋亭に付いて来たヴィオに聞いてみた。
「んー……取り出しは不可能だな」
じゃあどうなるんだ?
永遠に異空間に置かれたままなのか?
「噂じゃ、迷宮の宝箱の中身は、死んだ召喚魔の異次元収納物だって話だぜ!」
横からレネットが口を挟んできた。
「まことしやかな噂だが、しょせん噂だぜ。誰も確かめようもないしな」
しかし宝箱の中身の出所が、死んだ召喚魔の収納物ってのも考えられなくもない。
宝箱の中身は、当たり外れがある。
誰かの持ち物がランダムで入っているなら、当たり外れがあって当たり前。
そもそも宝箱の中身はどこから来てるって話になる。
あながち間違った話じゃないのかも知れんぞ。
……いや待て!
もし俺が死んだら、異次元に収納しているルーナの下着も宝箱から出てくるのか?
それは……不味いな。
いや宝箱と言うくらいだ、下着なんて出てこないのか?
そんな話聞いたこともないしな。
いや待て!!
美少女の下着だぞ。
ある意味、お宝だな。
人によっては、聖剣どころの騒ぎじゃないぞ。
あ……
誰の下着かなんて分からんのか。
まあ何にせよ、下着を異空間に収納するのはやめておこう。
って……
よく考えたら、下着はルーナのバッグだったな。
いらん心配だった。
「クロム、まだ行かないのですか?」
「ん? ああ、すまん。行くとしようか」
「気を付けてな!」
「ちゃんと戻ってこいよ!」
「ああ」
「はい! なのです」
ヴィオとレネットの見送りで、俺たちはコロロへと向かうためズッカの街を後にした。
コロロへ向かう道を、ルーナを乗せて疾走する。
この道はル、ーナが不安いっぱいでズッカへと来た道だ。
今はお金いっぱいでコロロへと向かっている。
お腹は……昼前だからいっぱいではないな。
時々弱い魔物の気配は感じるが、他には何もない。
のどかな草原の一本道をひたすら走る。
暇だな。
景色にあまり変化がないのは、正直なところ何の面白味もない。
いっそ魔物でも襲って来てくれればいいんだが、その魔物の気配もあまり感じられない。
昼飯までひたすら走るか……
「ねえクロム。お腹空いたです」
おっと、走りに夢中になり過ぎたか?
「おお。じゃあ休憩にするか」
道から少し外れているが、池のほとりに木々が茂っていて涼しそうな場所を見つけ、そこで昼食を取ることにした。
昼食は屋台から買って来たものだ。
俺はパンのないホットドッグ……つまりソーセージだな。
ルーナはホットドッグにピザ、それに肉まんだ。
相変わらずの量を難なく食べている。
案外父親の借金の原因は、ルーナの食費なのかもしれないな。
食後にまったりしてると、魔物の群れの気配を感じだした。
さほど遠くない場所に、数十匹はいるようだ。
「結構な数の群れだが、何の魔物だろうな」
凶暴な群れでなければ特に問題はない。
まあ、凶暴でも問題ないはないが……
「群れ? もしかして……」
何だかルーナの目が輝いている。
なんだろう。
「黒毛野牛かも……」
なにやら狩猟民族の顔になってますけど?
ちょっと怖いんですけど。
「クロム、命令なのです! 群れを確認するのです!!」
命令キター!
涎を垂らしながらだけど……
どうも俺の契約者の命令は低レベルな気がするが、気のせいかな?
って、もう背中に乗る気かよ。
「さあ、行くのです!」
「……リョーカイ、ナノデス」
やる気満々だな。
黒毛野牛とやらはそんなに美味いのかね?
ルーナを乗せて草原をひた走る。
遠くにそれらしき魔物の群れが見えてきた。
どうやら気配の感じから、お目当ての黒野牛のようだ。
「お目当ての魔物のようだが、どうする? 全部狩るのか?」
「駄目なのです! 全部狩ったらいなくなるのです」
おおっ! さすがだな。
全滅させれば次はないからな。
「村のみんなで食べても一匹あればいいのです」
ルーナの話ではコロロは100人ほどの村のようだ。
黒毛野牛は500?はあるだろうから、食える分でも100?以上はあるな。
確かに1匹あれば充分だ。
「いや、でも……干し肉にする分もあったほうが……あと……」
なにやら欲望が渦巻いているようだ。
「クロムの異空間って肉は腐らないのですか?」
「腐らんな」
「そうなのですか……」
どうも食欲の方が打ち勝ちそうな気配が……
「さ、三匹だけ狩るのです! 命令なのです!!」
どうやら一匹は今晩の為、もう一匹は干し肉用、そしてもう一匹は……
俺の異空間にしまっておいて、後で食う気だな。
どれ、三匹だけならちゃちゃっと狩るとするか。
「水の塊り」
群れの端の方にいた三匹を、水の塊りで包み込む。
「凍結!」
あっという間に、黒野牛の瞬間冷凍の出来上がりだ。
牛肉と言ったら冷凍だろ?
異空間に入れるから関係なんだけどな。
タイトルは、いきものがかり「明日へ向かう帰り道」より拝借




