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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
65/126

65話 今はもうない(○○が……)


「おい、クロム」


 ヴィオが黒炎酒ブラヴォドを片手に隣へ座ってきた。


「儲けは均等に五等分ってのは本当か?」


「本当だ。明日にでもきっちり分けるぞ」


「いいのか? ほとんどお前だけでったようなもんだぜ?」


「お前まで言うか。パーティーってのはそういうもんだろ」


「しかし……」


「それに、お前の魔法が無ければあんなに、簡単にはいかなかっただろ」


「そう言ってもらうと、やった甲斐があるってもんだがな」


「それとも何か? ザンバたちあいつらは三人で一人分でいいとか思ってんのか?」


「思ってねーよ!」


 まあ、ヴィオがそんなことを思ってるとは、俺も考えちゃいないがな。


「そこまで言うなら仕方ねぇな、貰っておくか」


 ああ、そうしてくれ。


「金なんて、酒が飲める分があればいいんだがなぁ……」


 ヴィオは世捨て人と言うか何と言うか、俗世にあまり関心がないようだ。

 その割には世の中の情報に詳しいが、まあ魔道士なんてそんなもんなのかね。


 だが、金は無いよりはあったほうがいいぞ!

 電気を止められそうになった元フリーターが言うんだから間違いない。



「話は変わるが、あのアントーニオに直接会ったんだって?」


「ん? ああ、そうだな」


“あの”ってのがよくわからんが、大商人って意味か?


「じゃあ、召喚魔にも会ったんだろ? どうだった?」


「召喚魔? いや、知らんぞ」


 ジャコモも言っていたが、アントーニオは高位召喚魔持ちハイスペックだったな。

 だが、肝心のその高位召喚魔ハイスペックは見なかったな……


「おかしいな。噂じゃお前と同じ常時召喚で、いつも傍らにいるって話だったんだがな」


 いつも……傍ら……だと?

 もしかして……


「おい! その高位召喚魔ハイスペックってのはもしかして……人型じゃ、ないよな?!」


「そうだな。人型の、しかも女性の姿って話だ……ってなんだよ、知ってんじゃねぇか」


 確か……アイナって言ったな。

 あいつ召喚魔だったのかよ。

 そう言われれば独特の雰囲気だったが、全く気が付かなかったぞ。


「その高位召喚魔ハイスペックのおかげで、あれだけ儲かるようになったって話だぜ」


 アイナのおかげであそこまで儲かるようになったってことは、アイナの能力は秘書なのか?

 何だ? 能力が秘書って……

 いや、自分で突っ込んでどうする。


 しかし、人型の召喚魔だったとはな。

 あまり多くはないはずだが、早速お目にかかっていたとは驚きだ。

 知っていたらもう少し観察するんだったな。


 人型と言えば、人化の魔道書を買ったんだった。

 どうする?

 一度ヴィオに聞いてみるか?


「ところでだ……人型変化入門って魔道書を買ったんだが――」

「何だ、クロム! お前、人化したいのか?」


 声が大きい。

 もう少し小声で話せ! 恥ずかしいだろ。


「どれだ? 見せてみろよ」


 異空間から本を出して渡すと、ヴィオはページをめくって中身を確認し出した。


「ふむふむ。なるほどねぇ……。まあ間違った内容ではないけどな」


 ないけど……何だ?


「お前、そもそも人化の必要を感じてるのか?」


 む?

 そう言われると……微妙だな。

 元人間だから人型になりたい気持ちはあるが、必要性と言われれば……

 今のところは無いな。


「こういうのは、強い思いが必要だからな。魔道書読んで、その通りやればなれるって訳でもないぜ」


 そういうものなのか?


「逆に言えば、必要に迫られたらこんなもの読まなくても人化出来るはずだ。お前の魔力ならな!」



 つまり俺は、何となく人化したいと考えているだけで、今のところは猫のままでいいと思っているって事か。

 まあ、実際に猫の生活も楽しいしな。

 魔法も使えるから、特段不便もないし……


 美女と風呂に入って、生乳も拝めるしな。

 猫だから意味ないけど。


 これで人型になったら、多少は興奮するのか?

 いや、そもそも……



 今まで黙っていたが……

 俺って、生殖器無いんだよね。


 召喚魔だから。



 召喚魔は生殖の必要はないし、排泄もしないからな。

 必要ないから無いんだよ……きっと。


 でもこれって人型になったらどうなんだ?

 まさか天使のような感じで、股間に何も付かんのか?


 それも微妙だな。


 ふむ……

 何だか人化が楽しみなような、そうでないような……




「――クロム。おい、クロムって! 何だ? 考え事か?」


 何だ、ザンバか?


「ああ、ちょっとな。何か用か?」


「何だよ、用が無けりゃ話掛けんなってか?」


 そうだな。

 特にザンバ、お前は。 


「おい、クロム! 森での儲けは五等分ってのは本当か?」


「何だ? 足りないのか?」


「そうじゃねぇ、多すぎだ。俺たちはもっと少なくてもいいんじゃないのか?」


 ザンバ、お前もか。

 こいつらは欲が無いのか?

 貧乏冒険者だっただろ! もっと金を欲しがれよ。

 金は大事だぞ。


 ガスを止められそうになった俺が(以下略)


「五等分だ。グラシアにも言ったはずだが?」


「グラシアからは聞いてるが、せめてクロムとルーナの分で、三分の一を取るとかしないか?」


「いや、俺はルーナの召喚魔だ。一人分でいい」


「しかしだな……」


「しかしもお菓子も無い。召喚魔の分と言うのなら、ヴィオのトリヴィアだって偵察したぞ! グラシアのジュレもお前のルフォールも戦っただろ」


「だがなぁ……」


「だがも駄菓子も無い。それとも何か? 召喚魔を持たないドーリへの差別か?」


「分かった、分かったよ! って言うか、何だよダガシって」


 ん?

 そうか……駄菓子はこの世界には無いな。

タイトルは、今はもうない/森 博嗣 より拝借

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