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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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63話 ズッカ もうすぐ

 昼下がりの青い空の下、一台の馬車がズッカへの道を進む。

 馬車の中の三人の女性は皆、うつらうつらと居眠りをしている。

 他に乗っているのは一人の男と、そして黒い子猫……そう、すなわち俺様だ。



 結果から言おう。


 昨夜も前日と同様の結果だった。

 前夜の反省から、昨夜は飲む前に風呂に入らせた。

 入らせたのだが、結局酔っ払ってまた全員で風呂に入る羽目になってしまった。


 結局また、グラシアの美乳を筆頭に生乳を押し付けられる結果になった。

 まあ、ルーナはともかくラエルは美乳じゃなくて微乳だからな。

 感触的には何もどうという事はないんだが……


 好きな奴は好きなんだろうし、どこの世界にもいろんなマニアがいるからな。



 えっ? 俺?


 俺は胸より尻派だからな。

 今は猫だから無意味だが……



「――さん? クロムさん?!」


 ん……? いかん、いかん。

 つい思考の渦に飲みこまれてしまったようだ。


「なんだ、ジャコモ。どうかしたのか?」


「いえ……ズッカまで、もうそろそろかと思ったので声を掛けたんですが……」


 返事が無かった……か。


「済まん。ちょっと考え事をしていただけだ」


 内容は言えんがな。


「そうでしたか。皆さんのように、慣れないルグーザでお疲れなのかと思いましたよ」


 いや、皆さんも“慣れないルグーザ”にお疲れなのではないと思うぞ。

 ただの飲み過ぎだ。



「ところでだ。お前とアントーニオはどういう関係なんだ?」


 はっきり言って、商都ルグーザの大商人が、ジャコモ如きを子飼いにする理由は見当たらない。

 裏であくどい事をさせるには、ズッカは距離的に遠すぎるし、そもそもズッカのような片田舎で金貸しをする意味がない。

 何か特別な事情があるとしか思えん。



「実は、アントーニオは…………兄なんです」


 あに? いや……何?


「ズッカでの金貸しは親がやってた商売でして、アントーニオはそれが嫌で出て行って、ルグーザの商人に使われていました」


 ふむ。

 そこまで聞く気はなかったが、身の上話が始まってしまったぞ。


「もともと商才があったのか、商人のおかげで手に入れた高位召喚魔のせいかは知りませんが、その商人の番頭に成り上がり、今はあの通りです」


 なるほどな。

 実の兄だったとは意外だったな。



 そういえば、俺にも出来た兄がいたな。

 コミュ障の……


 プログラミング関連の会社で高給取りだったっけな。

 コミュ障のせいで辞めたけど。


 結局、トラックに撥ねられて死んじまったんだよな。

 って……俺も死んでるのか。


 しかも、俺もトラックに撥ねられたんだよな。



 確か俺が轢かれたトラックは、なんとか運送だったな。

 なに運送だったっけ……


 ああ、ナロー運送とかかいってあったような気がしたが……

 何か思い出して来たぞ。

 ナンバーは760だ。

 760ナローってか! ふざけたナンバーだな。

 というより、ナロー運送って名前がそもそもふざけてるような気もするぞ。 



 しかし何だ?

 兄弟そろってトラックに撥ねられるとか、そういう家系なのか?

 そう言えば両親も交通事故で死んだしな。

 事故家系か?


 まあ、そんな家系なんてある訳無いか……

 ただの偶然だな。

 


「――さん? クロムさん?!」


 ん……? いかん、いかん。

 また思考の渦に飲みこまれてしまったようだ。


「済まん。ちょっと昔の事をな……」


「え? 昔って……クロムさんは最近ルーナさんの召喚魔として生まれて来たんですよね?」


 おっと……不味ったか?

 転生の話は内緒の方がいいのかな?


「昔なんて言っとらんぞ。お菓子だ! ルーナのおやつの事だ」


「ああ、ルーナさんは大食ら……いえ、食欲旺盛ですからねぇ」


 お前今、大食らいって言いかけなかったか?

 言っておくが……


 全く間違ってはいないぞ!



「あっ! ズッカの街並みが見えてきましたね」


 確かに遠くにズッカの街並みが小さく見える。

 しかし、今のは失言を誤魔化してだけだな。


 心配しなくても、失言ではないんだがな。



「あ……もうすぐズッカですか? すいません、居眠りしていたようです」


 グラシアが目を覚ましたようだ。


「えっ! もうズッカ?」


 ラエルも起きて、あとはルーナだけだ。 

 まあ、ルーナが簡単に起きる訳はないな。

 仕方ない、起こそうか。



「おいルーナ、そろそろズッカだぞ、起きろ!」


「ムニャムニャ……えい! “アゲテール・ポテト”!」


 それは“門よ、開けアペリーレ・ポルタ”の事かな?


 今度の寝言は、ヴィオの魔法かよ。

 新しいな。

 魔道士でも目指すつもりなのかは知らんが、その呪文では……


 フライドポテトフリッツしか出てこんな。 

 


 まあ……ルーナにとっては最高だろうがな。

タイトルは、浜田省吾の「いつか もうすぐ」より拝借


今回のお話はちょっとだけ、短編の~日本異世界転生転移機構『NAROR』~が入っています。

よろしかったら、どうぞ。

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