61話 食う気を求めて Coming Up for Food
「次はあれを買うのです♪」
えーっとですね、ルーナ……さん?
もう、いい加減にしませんかね?
いったい幾つ食えば気が済むんだ?
今で何件目の屋台なんだ?
ルーナの胃袋は、俺の異次元収納空間並みだな……
グレートハンターズを出て、大通りを歩いてみたが、なぜか屋台が一つも出ていなかった。
「屋台がないのです……」
これは不味いな。
試食の携帯食如きで終わりでは、ルーナはご立腹……
いや、ご空腹だ。
「どこかに屋台の通りか広場があるのかもしれません。聞いてみますね」
グラシアが通行人に尋ねてみた。
「もう少し歩くと大きな広場があって、そこにたくさんの屋台が並んでるそうですよ」
「たくさん?♪」
ほう……たくさんあるのか。
それはそれで不味いな。
「たくさんの屋台目指して……さあ、みんな急ぐのです!」
いや、急ぎたいのはルーナだけだがな。
広場は思っていたよりも大きく、多くの人で賑わっていた。
噴水や子供の遊具もあって広場と言うより、公園に近い。
市民の憩いの場といった場所なのだろう。
そして、お目当ての屋台は……
「本当に、たくさんあるな」
広場のあちこちに、様々な屋台が点在している。
「まずは、あれからなのです!」
ふむ……ポップコーンか。
そういえばズッカでは見なかったな。
「いやっしゃい!」
「一つください、なのです」
「はいはい。何味にしましょう?」
「何……味?」
「はい。普通の塩味と蜂蜜、黒胡椒、カリー、チョコレートがあります」
なん……だと?
まるで某テーマパーク並みだな。
しかもそれが一か所で買えるとか、ある意味某テーマパーク以上じゃないか!
えっ? 某テーマパークに誰と言ったのかって?
一人で行く訳無い……
内緒だぞ。
「じゃあ、一つづつください」
「えっ?」
「全部の種類を一つづつなのです」
「あ、はい。大と小がありますが……」
「じゃあ、だぃ――」
「小にしておけ。ほかにもいろいろ食うんだろ?」
「う、うう……小で、いいのです」
「はいおまたせ! 全種類を小一つずつね。一つ3レオネで15レオネです」
「ありがとうなのです」
「私も持ちますね」
「ありがとう、グラシア。みんなも食べていいのです♪」
当たり前だ。
こういうのはみんなで食うから美味いんだ。
前世では一人寂しく食ってたやつが言うんだから、違いないぞ!
某テーマパークで、一人ポップコーン制覇とか……
なぜだろう、涙が出てきた。
「次はこれなのです♪」
チュロスか……
これってただの長いドーナツだよな。
美味しいけど。
チュロスと言えば、某テーマパークで――(以下略)
「今度はこれなのです♪」
チキンレッグか。
ターキーも美味いよな。
某テーマ――(以下略)
「これも食べるのです♪」
ホットドッグか。
ソーセージ系も某――(以下略)
さらには、ピザやらニョッキやらピンチョスやら……
「みんなは食べないのですか?」
「いや、私はもう……」
「お腹いっぱいです」
グラシアもラエルも、とっくに食べるのを止めている。
今食べているのはお前だけだ。
「次はあれを買うのです♪」
もう、いい加減にしませんかね?
いったい幾つの屋台でいくら食えば気が済むんだ?
ルーナの胃袋は、俺の異次元収納空間並みだな。
日本に生まれていたら、大食いアイドルとしてデビューできるぞ。
“もしも”の時は、日本に転生させてもらいたいものだ。
まあ、俺がいる限り“もしも”なんてあり得ないがな!
キリッ!!!
って……猫がしても、目が怖くなるだけだな。
もうやらない事にしよう。
「あれ? あれも美味しそうなのです♪」
もうやめてくれ。
こっちが腹いっぱいになってしまう……
タイトルは、空気を求めて Coming Up for Air/ジョージ・オーウェル より拝借




