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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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59話 元フリーター、本を買う。

 広いな。

 較べるのも可哀想だが、ワルフランの店が屋台のようだ。



「いやっしゃいませ。グレートハンターズへようこそ」


 店内には様々な武具や魔道具、回復薬や毒薬、魔道書までもが並んでいる。

 さすがCランク以上の冒険者御用達の店だけはある。

 グレートと言う名は伊達じゃないようだ。


「“ここにない物は王都に行くしかない”と言われる程の品ぞろえが自慢です。ごゆっくりどうぞ」


 へぇ……そうなんだ。

 怪しいほどの宣伝文句だな。


「私はあちらで剣などを見てきます」

「私は魔道具を見てきますね」


 グラシアとラエルは、それぞれ見たいものを見に行ったが、残る一人が問題だな。

 ルーナが興味を示すような物などここには無いし、どうしたものかな。

 まあ、ルーナが興味あるのは食べ物くらいなのだが……


 って、あれ? ルーナは?



「ねー、クロム! こっちこっち」


 ガキンチョじゃないんだから、うろうろすんなよ。


「これを見るのです」


 ん? どれだ?

 ルーナが興味を示す物なんてここに――


『携帯食 〜5種類の風味で美味しく召し上がれます〜』



 ……あるな。


 あれだ。

 いわゆるカロリーなんちゃらみたいなやつだな。


 

「いやっしゃいませ! これは当店一押しの携帯食でございます。特に女性の冒険者の方に人気なんですよ」


「なるほど……なのです」


「バニラ、チョコレート、アーモンド、オレンジ、チェリーの5種類の風味がございます」


「ふむふむ……なのです」


 おいルーナ、涎が出てるぞ。

 店員が若干引き気味だな。


「あの……ご試食……なさいますか?」


「はい♪ なのです」



「こちらはバニラ味になります。バニラビーンズがふんだんに入って――」

「もぐもぐ♪」


「次はチョコレート味です。カカオが――」

「むしゃむしゃ♪」


「続いてアーモンド味です。アーモンドスライスが――」

「うまうま♪」


「そしてオレンジ味です。オレンジピールの――」

「ぱくぱく♪」


「最後がチェリー味です。ドライチェリーを――」

「ぺろり……ふう、ごちそうさまでした♪」


 店員の説明なんて聞いてないだろ!

 さっき朝食食ったばかりなのに、相変わらず見事な食いっぷりだな。


「おい! 幾らだ?」


「えっ、こ……ねこ? あ、いや、今のは試食でして……」


「だから、買うから一つ幾らだと聞いているんだ」


「あ……そうでしたか。ひと箱4本入りで5レオネのところを、只今4レオネにしております」


「では5箱貰おう」


「えーっと、では全ての味を1箱ずつでよろしいでしょうか?」


「違うな。全ての味を5箱ずつだ」


「えっ?」


「全てを5箱、全部で25箱くれと言ってるんだが」


「す、すいません。では全部でちょうど100レオネになります」


 これでお腹が空いたルーナを黙らせることが出来そうだ。

 これくらいあれば、しばらくは持つだろう。


 ……いや、ルーナのことだ。

 すぐに無くなる可能性は否定できんな。



 支払いを済ませたあとも、ルーナはまだ他の携帯食を眺めている。

 付き合ってられんな。


 ルーナを放っておいて、ラエルの様子を伺いに行ってみた。



「何か欲しいものはあったか?」


 魔道具を眺めているラエルに声を掛ける。


「いえ、別に買うつもりはないので…… どういう魔道具があるのか後学の為に見ていただけです」


 ああ、そうなのね。

 相変わらず勉強第一だな。


「魔道書の方はどうだ? 何なら一つ買ってやろうか?」


「魔道書は特に珍しいものはないですね。所詮、冒険者用の店ですから」 


 手厳しいな。

 たとえズッカと言えど、魔道士ギルドに入り浸るラエルにとっては、冒険者の店に置いてある魔道書ごときでは満足しないようだ。

 時間があれば専門店でも探してみるか。

 

「でも、面白いものが一つありましたよ」


「面白いもの? なんだそれは?」


「私には必要ないんですが、クロムが興味ありそうな本ですよ」


 なんだ???

 俺が興味ある……本?


「こちらにありますよ」


 ラエルに付いて魔道書のコーナーに行ってみる。



「ここですね。ああ、これです」


 ラエルは俺に一冊の本を取って見せてくれた。

 本のタイトルはこうだ。



『獣型高位召喚魔の為の人型変化入門』



 ほう……

 これは…………

 

 ちょっと欲しいな。



 猫の姿が嫌な訳ではないが、俺は元人間だ。どうしても不便に思う時もある。

 猫は猫で結構便利だがな。


 美女と風呂に入れる特典もあるし……


 いや、まあそれはともかくだ。


「一応買っていた方がいいかも知れんな。おい、済まんがこれをくれ!」


 近くにいた店員に声を掛ける。


「えっ? ああ、これですね。80レオネです」


 むぅ? 意外と高いな。

 いや、よく考えたら魔道書の相場が分からんからな。

 もしかしたら安いのかもしれないな。


「何を買ったのです?」


 どこからかルーナがやって来た。


「い、いや……大したものではないぞ。なあ、ラエル!」


「あ、はい。……そうですね」


 

 この本を買ったことは黙っていよう。


タイトルは、フリーター、家を買う。/有川 浩 より拝借

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