58話 華麗なるキャットと美人
朝日に薔薇が映えている。
庭が綺麗だ……
「あっ! おはようございます」
「あ、ああ……おはよう……」
何故だろう。
グラシアの顔がまともに見れない。
昨夜は大変だったな。
いや、大変と言うのもなにか変だな。
しかしあれにヴィオもいたらと思うと……
ヴィオの生乳も見てみたい気もしないではないな。
「どうかしました?」
「あ、いや……どうもしないぞ」
「昨日は飲みすぎちゃって、よく覚えていないんですよ。私、何か変なこと言いませんでした?」
「いや、何も」
「そうならいいんですけど」
変なことを“言っては”いないな。
「そろそろ、ルーナとラエルも起こしてくれ」
「そうですね。わかりました」
不味いな……
どうしてもグラシアの美乳がちらつくぞ。
平常心、平常心。
せっかくなので朝食は本館のカフェで取ることにした。
夕食と違って、大層なマナーもないだろうから大丈夫だろう。
朝食は、いわゆるイングリッシュ・ブレックファストとか言われるような奴だった。
紅茶とともに、ワンプレートにてんこ盛りの料理が乗っている。
目玉焼きにマッシュポテト、ベーコンにソーセージ、トマトにマッシュルーム、そしてパン。
なかなかのボリュームだ。
ルーナはぺろりと平らげたけど……
「今日は夕方まで特に何も予定はないぞ。何かしたいことはないか?」
「屋台巡り! なのです」
「何か良さそうな武具あるか見てみたいですね」
「魔道具とか魔道書があるところに行きたいです」
三者三様だな。
ルーナは言わなくても分かってたけどな。
「では魔道具屋に行ってみるか。魔道書や武具もあるかもしれんしな」
上手くいけばグラシアとラエルのご希望は叶うな。
「屋台……なのです」
今腹いっぱい飯食ったばかりじゃねぇか。
よく食い物の事考えれるな。
「大きい街だ、屋台なんてどこにでもあるだろ。魔道具屋の前にもあるかもしれんぞ!」
「う、うう……わかったのです」
ジト目は止めろって。
連れて行かないなんて言ってないだろ!
俺が悪者みたいじゃないか。
俺の人気が落ちたらどうすんだよ。
そもそも人気があるのかどうかは知らんが……
「ルーナ! お昼にいっぱい屋台巡りすればいいんじゃない?」
グラシアがそう言うと、ルーナの目が輝きだした。
「お昼にいっぱい食べるのです♪」
そうしてくれ。
いくらルーナでも、今持ってる金がなくなるほどは食えんだろうしな。
さて、と……
「おーい、済まんがちょっといいかな」
「はい、なんでしょう?」
子猫の召喚魔のお呼びでも、給仕は普通にやって来るんだな。
「街へ行きたいんだが、どうすればいいかな?」
ここはそれなりの敷地を要するせいか、街から少し離れた郊外にある。
街へ歩いていくには、若干遠すぎるのだ。
「それでしたら馬車をご用意いたします。どちらまで行かれますか?」
「うむ。魔道具屋の類いで武具も置いてある所はあるか?」
「それでしたらアントーニオ様が営んでいる、冒険者の為のお店でしたら魔道具も武具も御座います。そちらはいかがですか」
大商人様は手広くやっていらっしゃるな。
「あっ! でも、確かCランク以上の冒険者しか入れないはずなので、お客様達だけでは入店は難しいかと……」
流石にこの服装では冒険者には見えないようだな。
ある意味成功という訳か。
「それなら問題ないな。一応Cランク以上の冒険者だ」
「えっ! あ、いや失礼致しました。この美しく清楚な方々が冒険者の、しかもCランク以上の資格をお持ちとは……」
せい……そ?
清楚な方々は、酔っ払って風呂で猫をモフモフしたりはしないと思うがな。
「では馬車の手配を致します。お部屋の方で宜しいですか? それともそのままこちらから?」
そうだな……
冒険者の店なら、冒険者の服装でいいだろう。
いったん部屋に戻るか。
「部屋の方へ回してくれ」
「かしこまりました。では後程お伺いいたします」
俺たちを乗せた馬車は、市街の一角にある、大きな店の前に停まった。
ワルフランの店の10倍はありそうだ。
「こちらが、Cランク以上の冒険者御用達のお店“グレートハンターズ”です」
馬車の扉を開け、御者はそう説明をしてくれた。
たしかに店に掛かった看板には『華麗なる冒険者たち』と書いてある。
大層な上に、安直な名前だな。
大商人様はそういった名前がご趣味のようだ。
馬車をお降り、店の中に入ろうとすると、入り口に立っていた男に声を掛けられた。
「すいません。この店は、Cランク以上の冒険者とその同伴者しか入店でき――」
ちらりン!
グラシアが、首から下げたブロンズ登録証を見せた。
「失礼した致しました。Cランクの冒険し――」
「わたしもあるのです」
ちらりン♪
「え? えっ? シルバー……登録証? この娘が?!」
当然の反応だな。
Cランク以上の冒険者しか来ない店だ。
シルバー登録証では驚くこともないだろう……
持ち主がルーナでなければな。
「こ、これは、つい……いや、失礼致しました」
「ぬふふふふっ! 気にしなくてもよいのです♪」
何を自慢気にしてるんだ?
お前は何もしてないじゃないか。
まあ、ルーナの召喚魔である俺の功績は、そのままルーナの功績だからな。
仕方ないな。
「私だけ……何もない……」
そもそもラエルは冒険者登録なんてしてないからな。
仕方ないだろ?
「とにかく……店に入ろうか」
「そ、そうですね。ルーナ、ラエル、中に入りましょう」
「むふふふふっ♪」
「私だけ……ない……」
大丈夫かこの二人は?
まだ酔っ払ってんじゃないのか?
タイトルは、華麗なるギャッツビー/F・スコット・フィッツジェラルド より拝借




