↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
53/126

53話 三階の王

 魔法のエレベーターで三階に上がると、そこには大商人アントーニオが……


  いないな。


 扉の先にいたのは、一人の女性だ。


「この先がアントーニオ様の執務室です」


 もうわかったから、その度に言うなよ。


「執務室には結界が張ってあります。攻撃魔法など、ご主人様に敵意のある魔法は全て妨害されますので、心置きを」 


 言いたいことはそっちか。


「強力な結界ですので、余程の方でも攻撃魔法の発動は困難かと」


 入り口で剣を奪い、ここで魔法の使用に釘を刺す、か……

 二連コンボの注意喚起をありがとう、ってね。


 初見の客への対応は万全です、と言っているようなものだな。

 だが逆に、俺が“余程の方”のはるか上なら攻撃できるわけだ。


 ……別に攻撃なんてしないけど。


「私はアントーニオ様にそのような事など――」

「貴方に言っているのではありませんよ、ジャコモ殿」


 女の視線の先は、なぜかルーナと俺に向いている。

 正確にはルーナだけかもしれない。

 普通に考えたら、召喚魔を操っているのは契約者なのだからな。



「別に何もせん。買って貰いたいものがあるだけだ」


 俺の言葉に、女は一瞬怪訝そうな顔を見せた。

 俺が話せることに驚きはしていない。

 ルーナではなく、俺がそう言ったことにいぶかしんでいる様子だ。


 しかし女は、俺の言ったことには何も答えず、奥の扉へ向かっていった。


「アントーニオ様、ジャコモ殿がお連れ様といっしょにお見えです。お通ししてもよろしいでしょうか?」


 女は扉に向かって話しかける。

 扉がアントーニオ? ……ではないよな。


 扉越しに聞こえるとは思えんが、魔法で中に伝わるようにでもなっているのだろう。

 返事はないようだが、扉がゆっくりと開いていく。


「どうぞ、お入りください」


 いちいち仰々しいのが結構ウザいな。

 でも入るけどね。




 アントーニオ様の執務室とやらは無駄に広く、高級であろう美術品があちこちに飾られていた。

 その奥に、これまた高そうな机に向かい、高そうな椅子に腰掛けて、書類を書いている男がいる。


 常識的に考えると、この男がアントーニオなのだろうな。


「久しぶりだな、ジャコモ」


「は……はい」


 なんだ? こいつも猫系の召喚魔持ちか?

 ジャコモの態度がおどおどしてるぞ。


「で、その美しい御客人達は私に何を売りたいというのだ?」


 ここまでの仰々しさが嘘のように単刀直入だな、おい。


「はい、魔物の素材を売りたいと――」

「魔物の素材? 素材にもいろいろあるが、何の魔物の何の素材なのだ?」


「え、ええっとですね――」

「俺が変わろう!」


 ジャコモに任せていては埒が明かん。


「召喚魔が説明とは、面白いな。私としては、そちらの女性陣に説明を求めようと思っていたのだが……まあいい、お主に任せよう」


 何故かいまいち気に入らん奴だが、金のためだ。

 我慢するか。


「売りたいのはカーバンクルの魔石が7個、大猩猩グレートコングの毛皮が85枚、灰色大猿グレイエイプの毛皮が5枚、毒吐猿ポイズンエイプの毒袋が55個だ」


「なんと! 相当な量だな」


「ああ、あとジュエルドラゴンの鱗が大小合わせて9枚。それと……」


「何っ! ジュエルドラゴンの鱗だと!! それに? それに他に何がある?」


 さて、どうしたものか?


 しかし、こいつ以外に買い手も知らんしな……

 仕方ない、言うとするか。


獅子王蟻アントライオン金色大猩猩ゴールドグレートコングの、傷一つない、そのままの死骸だ」


「なっ! なん……だと? 今、何と言った?」


 何度も言わせるなよ。

 全く……


獅子王蟻アントライオン金色大猩猩ゴールドグレートコングの、傷一つない死骸を結界魔法で保存している、と言ったのだ」


獅子王蟻アントライオン金色大猩猩ゴールドグレートコングだと?」


 だから、さっきからそう言ってるだろ。


「傷もない死骸……とな?」


 だから、それもさっきから言ってるっての!

 全部確認すんなよ。

 お前は若そうに見えて、じじいなのか?


「ふむ……嘘でなければ、それら全てをここで出されても困るな」


「俺の契約者かいぬしは、嘘をつきにズッカから出向くほど、暇ではないぞ」


 暇だけど。


「いや、失礼した。そういう意味で言った訳ではない」


 じゃあ、どういう意味だよ。


「アイナ、空いている倉庫はあるか?」


 先程の女はアイナと言うらしい。

 どうせモブキャラなんだから、名前なんていいのに……


「はい。執務室の隣がちょうど空いています」


「では隣へ行こう」


 隣?

 エレベーターからの扉はここしかなかったはずだ。

 あのエレベーターはこの部屋直通という事で、別の階段もあるのか。


「こちらからどうぞ」


 入った扉とは違う扉へとアイナに導かれる。

 扉の先は廊下になっていて、複数の扉があり、その中の一つへと案内された。

 中に入るとそこは、魔物を二体出すには充分すぎるほどの、広さも高さもあった。


「ここならよかろう。さあ、出してくれ」


 アントーニオに促され、最初に毛皮と毒袋を出してみせた。


「おお! うむ……確かに相当な数だな」


 次にカーバンクルの魔石とジェルドラゴンの鱗を出す。


「これは凄い! まさしくジュエルドラゴンの鱗だ。カーバンクルの魔石もかなり大きいな」



 ここまででも充分に驚いてくれたようだが、所詮は普段も取り扱いのある品だろう。

 この先二つがメインディッシュだからな。

 存分に堪能してくれ!


 最初は、獅子王蟻アントライオンと行くか。

 アントーニオだけに……



「こ、これは……」


 よし!

 獅子王蟻アントライオンを出すと、アントーニオは上々の反応を見せた。


「流石の私も初めてだが…… 素晴らしい! 素晴らしいぞ!!」


 大商人様でも獅子王蟻アントライオンは初めてでらっしゃるようだな。

 アントーニオなのに……


「しかも傷一つないとは!」


 流石の大商人様も、神々しくも禍々しい姿の獅子王蟻アントライオンに魅了されているようだ。



「さあ次も……金色大猩猩ゴールドグレートコングも見せてくれ!」


 はいはい。

 言われなくても見せますぜ、大商人様!


 俺は獅子王蟻アントライオンに続き、金色大猩猩ゴールドグレートコングを出した。


「な…………」


 絶句とはこのことか。


 しばしの間、アントーニオは言葉を失い、金色大猩猩ゴールドグレートコングから目を離すことが出来ないようだった。

タイトルは、二階の王/名梁 和泉 より拝借

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。