50話 ジャコモの「…………」
「おお! ルーナにクロム。待っていたぞ」
ギルドに入るや否や、レギンが待ちわびていたように駆け寄ってきた。
髭親父に駆け寄られてもな……
「すでに解体は済んでいる。解体場へ行くぞ」
無事にすべての猿の解体が終了したようだな。
解体場には、灰色大猿と大猩猩の毛皮が積み重ねられ、毒吐猿の毒袋が袋に入れられていた。
そして、床には三人の解体職人が……
「毛皮と毒袋はいるが、こいつらはいらんぞ」
「済まんな、多少無理させたもんでな。そのうち目が覚めるだろうから、そのままにしてやってくれ」
どうやら職人たちは疲れて眠っているようだ。
職人たちを起こさないように、そっと素材をしまい、またギルドの事務所へと向かう。
「素材は受け取ったか?」
ギルド長のジェイクが声を掛けてきた。
「数の確認はしたのか? 約束通り、魔臓を全てと大猩猩の毛皮一枚をギルドで貰ったぞ。これでウチの解体料とチャラでいいんだな」
「ああ、それで構わん。」
「それで、成功報酬の方なんだが……」
なんだか申し訳なさそうにしているな。
元々期待などしてないから、気にせずともいいのだがな。
「5人で15000レオネ、一人3000レオネなのだが、いいだろうか?」
まあ、そんなところだろう。
急激な出費にギルドの金も底を突き始めているようだ。
その原因は俺たちなのだから、文句も言えん。
「ああ、それでいい。他の奴らが良ければだがな」
「それなら問題ないな。ザンバたちは、お前たちに任せると言っていたぞ」
どこかで合流したのだろう。
ザンバたちは、三人でギルドに立ち寄ったようだ。
「それに、金もお前たちがまとめて貰っておいてくれと言っていたな」
丸投げだな。
「あともう一つ。今回の件でルーナはBランク、シルバー登録証に昇格だ」
今回はまたまた早い昇格だな。
どうしたんだ?
「ザンバたちも全員Cランク、ブロンズ登録証に昇格だ。もちろんヴィオレッタもな!」
ザンバたちはともかく、ヴィオは昇格なんて興味ないだろ。
そもそもが魔道士であって、冒険者なんてお遊びに過ぎんからな。
「調査の結果、金色大猩猩は、相当厄介な魔物だと判明した」
知っている。
金色大猩猩に進化させたのは、俺だけどな。
「あれを放っておくと、あの森全ての猿を配下にして、周辺の村に大損害を与える可能性があったからな」
なるほどな。
周辺の村の損害を未然に防いだのが、昇格の理由か。
「ではエフィルから、報酬金とシルバー登録証を貰ってくれ。どうせここに来る気はないだろうから、ヴィオのブロンズ登録証もな。」
お前も丸投げだな。
エフィルから金と登録証を受け取って、ギルドを後にする。
時間も頃合いだ。
ジャコモの所に行ってみるか。
ジャコモは今回もまた、カウンターに足を乗せていびきをかいていた。
どいつもこいつも寝てばかりだな。
この世界は食うか飲むか寝る以外に楽しみはないのか?
ないか……。
「おいジャコモ、起きろ!」
「なんなんだ! 人が気持ちよく……あ、ああ……クロムさんとルーナさんでしたか」
毎度毎度、態度急変だな。
「最近よくご活躍の噂を耳にしますぜ! “黒猫使いのルーナ”なんて素敵な二つ名もついたようですし……」
「おべんちゃらはいらん。それよりお前、バックはルグーザの大商人らしいな」
「えっ!? はあ……よく御存じで……」
「別に、お前のバックが誰だろうと俺には関係ないが……いや、関係なくはないな」
「えーっと、何を仰って――」
「いや、お前のバックの大商人とやらに買って貰いたい物があってな」
「もしかして、柘榴猿の魔石ですかい? それならここでも買い取りますぜ!」
「いや、それもあるんだが、それだけじゃないんだ」
「え? と言いますと?」
見せた方が納得するだろう。
俺はジャコモの前に、猿の素材を一つずつ出してみせた。
「柘榴猿の魔石が7つ、そして毒吐猿の毒袋が55個、この灰色大猿の毛皮が5枚、こっちの大猩猩の毛皮は86枚ある」
「え……あ……」
「あとはジュエルドラゴンの鱗が9枚だな」
「ジュ……ジュエルドラゴンですか?」
「あとな、二つほど大きなものがあるんだ」
「大きな……もの…ですか?」
そう、大きな獲物が二つ。
「獅子王蟻と金色大猩猩の、傷一つない死骸だ」
「へっ?! な……何の死骸ですって?」
何度も言わせるなよ。
「獅子王蟻と、金色大猩猩だ!」
「…………」
どうした、ジャコモ? 止まっているぞ。
「……すいません、クロムの旦那。流石にここでは無理です」
だから言っただろ。
「素材ですら全部買い取るには金が足りません。それに……」
それに?
「その二つは、俺には値段の付けようがないですぜ」
相場も何もないだろう。
あえて言うならその二つは“時価”だ。
「だろうな……そこでだ!」
「へ? ……へい」
「お前、その大商人とやらのところに俺たちを連れて行け!」
「ええっ! ルグーザ、に……ですか?」
「そうだ。何か問題でもあるのか?」
「え、いや、あの……い、いつ頃で?」
「そうだな、明日でどうだ?」
「はいぃぃぃ? 明日???」
「なんだ、明日だと何か問題でもあるのか?」
「え、いや、あの、だから……」
「では明日の朝で決定だな。あと一人二人は連れてくるかもしれん。馬車を用意しておけよ」
「…………はい」
せっかくの馬車での旅だ、ルーナ一人よりは誰かも連れて行こう。
そうだな……
出番の少ないラエルと、存在感の薄いグラシアがいいな。
いろんな意味で。
「ああそうだ、護衛はいらんぞ。俺たちが無料でしてやるからな」
「…………はぃ」
タイトルは、うしろゆびさされ組の“渚の「・・・・・」”より拝借
おかげさまで、何とか無事50話を迎えることが出来ました。
ありがとうございます!
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