表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
49/126

49話 カラコーゾフの兄弟

 さてどうしたものか……

ふむ。


「ルーナ、行く所を思い出した。早く好きなものを好きなだけ買ってこい」


 確か、レネットがヴィオの店に行くと言っていたな。

 まだいるといいが……



「どこに行くのですか?」


 食い物を両手いっぱいに抱えたルーナが戻ってきた。

 その小さい体の、どこにそんなに食い物が入るのだ?


「ヴィオの店だ」


 別に用などないがな。


 レネットがいるなら店は開いているはずだ。

 店が閉まっていてもあの路地裏なら、いろいろと便利だしな。

 どうあれ、相手の出方次第なのだが。


『ルーナ、少々厄介ごとが起こるかもしれん。俺の念話に即座に反応しろよ』


「えっ? あ……」


 ルーナは不思議そうな顔で声を出しかけたが、理解したようだ。


『うん分かった。りょーかいなのです!』


 相変わらず軽いな。




 通りから路地裏に入り、ヴィオの店へと迷路を抜けるように歩いていく。


 やはり間違いない。

 気のせいではないようだ。


 二つの気配は、付かず離れず俺たちの後を追って来る。

 正直あまり上手い尾行ではない。というかバレバレだ。

 諜報系の能力を持ち合わせている訳ではなさそうだ。  


 暗殺者アサシンではない。が……


 アサシンではないだけで、暗殺者ではないとは言えない。

 例えば・・・・冒険者だって暗殺はするかもしれない。



 すでに相手は分かっている。

 あいつ等だ。

 確かカラゾーコフとか言う兄弟だ。


 いや……カラコーゾフだったかな?


 ともかく、スライムの件でザンバがパーティーを組んでいた、あの兄弟だ。


『ルーナ、もうすぐヴィオの店だ。俺をバッグに入れろ』

『りょーかい!』


『道は分かるな? 店まで走れ』

『分かるのです。りょーかいなの、でーす!!』


 返事をするや否や、ルーナは全力で走りだした。


 ……早いな。

 あっという間に店の前だ。


 トロそうなくせに、身体能力はやけに高いんだよな。

 田舎育ちだからか?


『扉が開くなら、店に入れ!』

『りょーかいなのです』


 思い切り開けた店の中には、案の定、ヴィオとレネット、そしてトリヴィアがいた。


「おいおい誰だよ、オレの店が壊れる…… あれ? ルーナ?」

「どうしたんだ? クロムは一緒じゃないのか?」

「ホーッ! 鞄にいるわね」


「追われてるのです! 厄介ごとなのです!!」


 うーん……勘違いしそうな言い方だな。



「何故だか知らんが尾行されていてな。ちょっと店先を借りるぞ」


 ヴィオに断りを入れ、ルーナを置いて店を出る。

 もちろん返事など聞いていないが……


 店の前には、キョロキョロと辺りを探している二人の男。 

 間違いなくカラゾー、いやカラコーゾフ兄弟だ。


「何を探しているのだ? 手伝おうか」


 声を掛けると、二人とも驚いたようにこちらを見る。

 これでは冒険者としての器も、底が知れているな。


「いらん! 探していたのはお前だ」


 ……何故言う。

 兄か弟か知らんが馬鹿なのか?


「はて? 俺はお前らなど知らんぞ」


「俺たちを知らねぇだと? 俺たちはズッカでも一二を争う冒険者、カラコーゾフ兄弟とは俺たちの事だ!」


 ほう。

 ズッカで一二を争うのなら、今売出し中の“黒猫使いのルーナ”とやらは三番目という訳だな。

 つまり、この俺より強いという事かい?


「カラコーゾフ兄弟のコニィとアレーニを知らねぇとは、相当な田舎もんだな!」


 馬とコニィ鹿ねアレーニ……

 納得の名前だな。


「済まんな。田舎から出て来たばかりなんで、そんな有名人だとは知らなかったよ」


 皮肉だぞ。

 何を嬉しそうにニヤニヤしているのだ?


「それで、ズッカの有名人様が、田舎者の俺に何の用だ?」


「あ……」「う……ん……」


 阿吽とか、仁王か狛犬か何かですか? 

 何か言い訳くらい考えとけよ。


「それとも、用があるのは……俺のご主人様かい?!」


 いくら鈍感な馬鹿どもでも、俺の殺気を込めた言葉に気が付いたようだ。

 それぞれが腰の得物に手を掛ける。


 得物を抜くのか?

 それとも召喚魔を出す気か?


 この馬鹿兄弟の召喚魔が何なのか知らないが、俺の相手になるとは思えん。

 まさか……

 馬と鹿なんじゃないだろうな!



 一触即発とも思えたその時……


「おいおい、お前ら。オレの店先で荒事か?」


 店の扉を開けて、ヴィオが顔を出した。


「ヴィ、ヴィオ……レッタぁ?」

「ここは……ヴィオの店?」


 さすがにヴィオの事は知っているようだ。

 と言うより、何だか俺に対している時よりビビってないか?


「何だお前ら、知らねぇでここで騒いでたのか?」


「あ、いや……」

「お、おい兄貴! 帰ろうぜ」


 得物から手を離し、馬鹿兄弟は逃げるように去って行った。


 なんなんだ?

 俺の殺気には臨戦態勢で、ヴィオの顔を見ただけで逃げるのかよ。

 ヴィオと何かやらかした事でもあるのか?


「ヴィオ、お前。……わざと逃がしたな」


 ヴィオは、完全にあいつらを逃がすために出てきている。


「何言ってんだ? 冒険者同士の諍いは禁止されてんだぞ。……建前上はな!」


 もしかして、ヴィオが助けたのは……俺と、ルーナ?


 ルーナの命を狙ったとなれば、あいつらをりかねないとでも思ったのだろう。

 召喚魔が正当な理由もなく人を殺めれば、その契約者は死罪になりかねない。

 俺があいつらをったとして、ルーナの命を狙ったという証明が出来なければ、ルーナは死罪となるのだ。


「済まんな……ヴィオ」


「いや、そこまではしないとは思ったんだがな。あいつら馬鹿だから、いらねぇこと言って相手を怒らせるんだよ」


 やはりヴィオは、あいつらとひと悶着起こしたことがありそうだ。


「お前、あいつらに何かしたことあるのか?」


「ん? あいつら酔っぱらってオレの胸揉みやがったからな。ちょっと懲らしめてやっただけだよ!」


 ああ……そう、なのね。


「それより、中でお茶でも飲ん行けよ!」



 本当にお茶なのか?

 酒じゃないんだろうな。

タイトルはカラマーゾフの兄弟/、フョードル・ドストエフスキー より拝借

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ