40話 あー昼休み
平和だ。
魔物の住む森のど真ん中で、のんびりと昼食を取る俺たち冒険者御一行様。
まるでキャンプかピクニックだ。
とても魔物退治に来ているとは思えないな。
「美味しかったのです♪」
「そうか、それはよかったな」
鍋に限らず大鍋亭の飯は美味い。
鍋の召喚魔のおかげだけでなく、おかみさんの腕が良いのだろう。
ルーナは何でも美味そうに食うけどな。
「ヴィオ。午後はどうする? 少し休むか?」
「そうだな。あそこまで行ったなら、最深部まではあと少しじゃないかな。少し休んでも問題ないと思うぜ」
あそこから先は、何が起こるかは分からない。
その為にも、少しは休憩が必要だろう。
「ルーナ、少し休もう」
「りょーかい! じゃあクロム、大きくなって!」
何事だ?
よく分からないが、契約者の命令なら仕方あるまい。
俺は、ルーナに言われるままに大きくなった。
考えてみると、契約してから一度も命令されたことがないぞ。
いや……あるな。
罰だとか言って、バッグの中に入らされたな。
猫にとっては罰というよりご褒美なのに。
「そしたらここに寝て!」
ルーナは何がしたいんだ?
これまたよくわからないが、契約者の命令なら仕方あるまい。
俺は、ルーナに言われるままに横になった。
「モフモフなのです♪」
……俺を枕に寝やがった。
スーパー攻撃魔法付き高位召喚魔抱き枕、今だけ9,800円!
いや……ここは98レオネと言うべきだったか。
しかし、ほぼ最初とも言える命令が「枕になれ」とはな……
大した娘だ。
平和だ。
魔物の住む森のど真ん中で、のんびりと休息を取る俺たち冒険者御一行様。
まるでキャンプかピクニックだ。
とても魔物退治に来ているとは思えないな。
「ムニャムニャ……とりゃー! “オサール・ダヨッス”」
きっと“荒れ狂う雷”の事だな。
おさーるだよッスって何だよ。
お前が猿なのか?
それより、なんで本気で昼寝してんだ? しかも寝言付きで。
「おい、クロム」
枕と化している俺の横に、ヴィオがやって来た。
「何だ? 俺は今、ご主人様の絶賛抱き枕中だぞ」
「そのままでいい。お前の意見を聞かせてくれ」
ノーリアクションかよ。
そこは突っ込むところだぞ! と思ったが、真面目モードっぽいな。
「今回の森の異変。どう思う?」
どう思う、とは曖昧な聞き方だが……
「実はな、さっき“脳内図書”で検索したんだが、ある事例が見つかってな」
ある事例?
その前に“脳内図書”って……何だそれ?
いやまて、それは後だ。
「その事例ってのは、大猩猩の突然変異体、白銀大猩猩についてだ」
「興味深いな、続けろ」
「白銀大猩猩は通常の大猩猩よりも数段知能も魔力も高く、周辺の大猩猩をまとめて、群れを作るそうだ」
「群れだと?」
大猩猩は単体行動が基本だ。
それが群れを成すというのか?
「そうだ。白銀大猩猩をボスとした集団になる」
「つまり、それが異変の正体だと言いたいのか?」
分からなくはない。
現に、この森で一度も大猩猩には出会っていない。
森の大猩猩が一か所で群れているのなら、見当たらないのは当たり前だ。
「オレはそう思っている。そしてクロム、お前にも心当たりがあるんじゃないのか?」
「どういう意味だ?」
まあ、言いたい事は分かるがな。
「お前の倒したクイーンスライム、獅子王蟻。どれもある意味突然変異だろ?」
やはり……か。
実際のところ、話を聞いた時から“そういう類いのもの”が森の異変の正体ではないかと、想定はしていた。
今のヴィオの話からしても、その可能性は高いと言えるだろう。
「その正体が白銀大猩猩かどうかは別として、この森でも突然変異体がいるという事か」
もしかして、その突然変異体を倒せば、また魔素の塊りがあるのか?
もしそうなら魔素の塊りは、誰かが作為的に埋め込んでいることになる。
「ああ。しかし、所詮想像でしかないぜ」
そういう事だ。
所詮はどれもこれも、何もかも想像でしかない。
「結局は、確認しなければ分からないという事だな」
「まあ、そういうことだ」
「では、確認しに行けばいいだけだ。ルーナ、起きろ!」
昼寝と言うより爆睡中のルーナを叩き起こす。
「昼休みは終わりだ。そろそろ行くぞ!」
「ふぇ? ふぇーい」
ルーナの間抜けな返事が、午後の活動開始の合図となった。
タイトルは、TUBEの「あー夏休み」より拝借




