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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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39話  世界の合い言葉は飯


「この先に厄介な奴らがいるぜ」



 灰色大猿グレイエイプを倒し、森を奥へと進むとヴィオがそう呟いた。


 ある意味では、この森で一番厄介なかも知れない魔物。

 毒吐猿ポイズンエイプ


 吐くのがヴィオのように“毒のある言葉”ならなんてことはないが、こいつの毒はそうではない。

 毒吐猿ポイズンエイプが吐く毒は、付着したら腐る腐食性の毒だ。

 しかも、それが数十匹の群れを成して行動する。

 普通なら避けて通るべき奴らだ。


 が……


「こいつらの毒袋は高値で売れるんだよな」 


 ヴィオの言う通り、毒吐猿ポイズンエイプの毒袋はいい金になる。

 もちろん毒袋が高額なのは、毒吐猿ポイズンエイプに限ったことではない。

 魔物の毒は、基本的に高額買取素材だ。


 つまり、それだけ需要があるという事になる。


 冒険者以外に誰が使うのかは知らないが……



「で……どうすんだ?」


「当たり前だ、るぞ!」


 目の前に“宝の山”があるのに避けて通っていては、冒険者トレジャーハンターの名が廃る。

 正確には俺はただの召喚魔で、冒険者はルーナだがな。


 それに、接近戦では面倒な相手だが、俺のように“遠隔大量虐殺魔法”の使い手には木端も同然だ。



「守りは任せたぞ。……一応な」


「了解だ。一応な!」


 さて、何の魔法を使おうか。

 新しく技名を考えるのも面倒になって来たな。

 さっきのでいいか。


「やるぞ……“荒れ狂う雷エチャール・ラヨス”!」


 雷鳴と同時に無数の稲妻が毒吐猿ポイズンエイプどもを襲う。

 毒を吐くどころか、こちらに気付く暇も無く、次々と毒吐猿ポイズンエイプは倒れていく。


「さっきと一緒じゃねぇか。 もうちょっと工夫しろよ!」


 毒吐猿ポイズンエイプの代わりにヴィオが隣で毒を吐く。


「技名を考えるのが面倒なんだよ」


「なんだそりゃ? 自分で勝手に呪文を唱えてるのか?」


「いや、そもそも呪文を唱える必要もないぞ」


 特に何かを言う必要はない。

 単純に恰好を付けてるだけだ。


 何か言わなきゃ、突っ立ってるただの猫だし……


「そんなの聞いたことねぇぞ! それでよく魔法が使えるな」


 そんなことを言われても、使えるのだから仕方ないだろ。



「それより例の蜘蛛の巣で、早く回収しろよ」


 ヴィオに魔法で死骸を回収してもらい、いつものように魔素を吸い込む。

 30匹ほどの毒吐猿ポイズンエイプの死骸も、これまたいつものように異次元へとしまい込む。

 俺の異次元空間は、只今猿だらけだ。


「ねえ、クロム」


 ん?

 そういえば今日はルーナと一緒だったな。

 ヴィオの毒気で存在感が薄いぞ。

 これも腕輪バングルの効果だったりするのか?


「お弁当はまだなの? お腹が空いたのです」


 飯時だけは存在感を発揮する奴だな。

 乗ってるだけで何もしてないのに、なぜそんなに腹が空くのだ。



「それなら空き地に帰るか?」


 え? ヴィオさん、なんて言いました?? 帰る???


「帰るとか何言ってんだ? ここに戻ってこなれないだろ!」


 帰るのは簡単だ。

 ヴィオとドーリが持っている、遠話装置兼魔標門ゲートで帰ればいい。

 問題なのは、ここに戻ってくる方法がない事だ。


「お前こそ何言ってんだ? オレだけだったら・・・・・・・・行ったことある場所に転移出来るんだぞ」



 ……なるほど。

 そういえばそんなことを言っていたような気もしないではないな。


 つまりは、ここに戻る時はヴィオが先に転移した後で、俺とルーナを遠話装置兼魔標門ゲートで転移させるという事だな。

 これなら実質、ヴィオがいた場所がセーブポイントのようなものだ。


「そうだったな。では、一旦帰ることにしよう」


 食事は安全にのんびり取れるのが一番だ。

 ヴィオを連れてきたのは正解だったな。






 その頃……



「いくらやっても、全く返事もしてくれねぇ!」 


 ザンバはずっと召喚魔ルフォールに話しかけていたようだ。


「ドーリ、教えてくれ! どうすればいいんだよ」


「知らん。自分の召喚魔だろ、自分で何とかしろ」


「グラシア、お前どうやって召喚魔ジュレと話してるんだ?」


「どうやってって言われても、最初から普通に話せたわよ」


「なんだよ、二人とも冷てぇな!」


「冷たいと言われてもな」

「そうよねぇ」


 そんなことを言われても、二人の言っていることは間違ってなどいない。

 はっきり言って召喚魔と意志疎通すら出来ないのは、ザンバくらいなのだ。


「もう止めだ。飯でも食おうぜ」


 ザンバがそう言った時、ドーリの傍らの遠話装置兼魔標門ゲートが光り声が聞こえた。


「ドーリ、聞こえるか? オレだ。ヴィオだ」


「ドーリだ。どうした!」


「今からいったん戻るぜ」


「戻る? 何かあったのか?」


「それを地面に置いて魔力を込めろ」


 ヴィオはドーリの問いには答えず、一方的に言い放った。


「どうしたの?」


 グラシアが心配そうに聞いてくる。


「わからん。とにかくこちらに戻るようだ」


 ドーリは遠話装置兼魔標門ゲートを地面に置き、魔力を込める。



「ただいまなのです」


 光とともにクロムとルーナ、そしてヴィオが現れた。





「どうしたんだ? 何かあったのか!」


 ザンバが掛け寄ってきた。

 ドーリもグラシアも心配そうな顔をしている。

 いったい何がどうしたというのだ?


「何の事だ? 飯を食いに帰っただけだが」


「な……飯? 昼飯を食いに帰って来たってのか?」


「ああ、そうだ」

「そうなのです」

「そういうことだな」


 当たり前のように言う俺たちを、ザンバたちは呆れ顔で見ている。


「なんだそりゃ」

「訳が分かりません」

「……」


 いや、飯は大事だぞ。

 特にルーナにとってはな!

タイトルは、世界の合言葉は森/アーシュラ・K・ル・グィン より拝借

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