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吾輩は召喚魔(ねこ)である  作者: 画猫点睛
第一章 ズッカ編
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38話 猿ヶ森

 ルーナとヴィオの準備はOK。

 遠話装置兼簡易魔標門ゲートも持った。

 昼の弁当も、もちろん持った。


「さあ行こうぜ」

「しゅっぱーつ! なのです」

「では、留守を頼むぞ」


 いつものように大きくなり、ルーナとヴィオを乗せて森の奥へと向かう。

 今日もヴィオは紐パンなのか、昨日と同じ感触が俺の背中に伝わってくる。


「ヴィオの胸が当たるのです。むにゅむにゅなのです」


 上は上で、ルーナが何か言ってるが、気にしたら負けな気がする。

 聞かなかったことにしよう。



木よ避けろ!フィガ・アルボス


 昨日も聞いたヴィオの呪文で、木々が道を開ける。


「わぁ! 木のトンネルぅ♪」


 ルーナ……それ、どっかで聞いたことがある台詞だぞ。



 木のトンネルを森の奥へと緩やかなスピードで進む。

 所々に魔物の姿や気配を感じるが、攻撃してくる様子はないようだ。

 あちらから攻撃してくる気配がないものを、こちらから攻撃する必要はない。


 金になる魔物は別だがな。


 エイプの森と言われるだけあって、森林緑猿グリーンエイプ悪魔猿デビルエイプのような小型のエイプをちらほら見かける。

 ちなみに悪魔猿デビルエイプという大層な名前がつているが、見た目が悪魔のようだというだけで、大したことのない魔物だ。


 厄介なのは毒吐猿ポイズンエイプ灰色大猿グレイエイプ大猩猩グレートコングといったところか。


 毒吐猿ポイズンエイプはその名の通り、毒を吐くエイプで、群れを成しているのでかなり厄介らしい。

 灰色大猿グレイエイプは固い鱗のような毛に覆われた大型のエイプで、普通の剣では傷つけることも難しいようだ。

 そして、大猩猩グレートコング


 森の王者と言われるこの魔物は、エイプとしては大型で、2mはあるらしい。

 岩をも砕く怪力と、獅子王蟻アントライオンのように衝撃波の咆哮を使い、知能もそこそこ高いらしい。

 なかなか厄介な魔物だが、単独行動の性質なのが唯一の救いと言える。



「おいクロム、少し先に灰色大猿グレイエイプがいるぞ」


 灰色大猿グレイエイプ大猩猩グレートコングと違って、数匹の群れで動く魔物だ。

 攻撃性もあるし、何よりその固い毛皮は金になる。

 ここは先制攻撃しかないな。


「五匹、といったところか。るぞ!」


「はいよ、守りは任せとけ!」


 ヴィオは攻撃より、防御や補助系が得意なのだろう。

 というより、まだ一度も攻撃魔法は見ていないな。


 灰色大猿グレイエイプどもに見つかる前に、スピードを上げて近づき魔法を放つ。


「“荒れ狂う雷エチャール・ラヨス”!」


 呪文とともに稲妻が次々と灰色大猿グレイエイプを襲う。

 五匹の灰色大猿グレイエイプは、こちらに気付く暇もなく息絶えた。


「……えげつないな」


 ヴィオに言われると、なんだが腹が立つのは気のせいか?


「守りも何も、一瞬じゃねぇか」


 いや、撃ち漏らす可能性もあるだろ。


「楽でいいだろ」


 それより魔素だ、魔素。


 お約束の、魔物の死骸から放出される魔素を吸い込む。

 使った魔力の分よりは少ないが、多少の回復にはなる。


「金になるのは、毛皮と魔臓か」


 灰色大猿グレイエイプをいつも通り異次元に放り込む。

 あとでまた、ザンバたちに解体させるか。


「しかし何だな、灰色大猿グレイエイプももう少し奥に住んでるはずだぜ」


 柘榴猿カーバンクルのように、灰色大猿グレイエイプも奥から逃げてきたという事か。


「やはり、森の奥に何かあるな」


「だろうな」


 問題は、その“何か”が、何なのかだが……

 まあ、考えても仕方ないな。

 実際に森の奥へ行ってみるしかあるまい。



「ところでクロム、あの辺に柘榴猿カーバンクルがいる。止めるぞ!」


 ヴィオは突然そう言うと、間髪入れずに呪文を唱えた。


止まれ!!クラウディティス


 マジか、早ぇよ!


“氷針散弾銃”イエロ・デ・エスコペタ


 三匹なので、何とか場所を把握できた。

 放った無数の氷の針は、どうにか柘榴猿カーバンクルに命中したようだ。


「ヴィオ、お前。早過ぎなんだよ!」


「いいじゃねぇか! 命中しただろ」


 命中したからいいとか、そういう問題じゃないだろ。

 阿吽の呼吸で動けるほどコンビ組んでないって!


 動いたけど。






 その頃……


「暇だな」


 ザンバは魔標門ゲートの前で座り込んでいる。


「暇、暇って言ってないで、何かしたらどうなの?」


 グラシアはひたすら剣を振っていたようだ。

 ドーリは魔道書を読んでいる。


「何か、と言われてもな……」


「せっかく時間があるのだから、自分の召喚魔ルフォールと対話出来るように努力してみろ」


 ドーリが魔道書を閉じ、ザンバに忠告する。 


「はいはい。 ドーリはいつもそれだな」


 ドーリはいつも忠告しているようだが、どうやらザンバには真剣味が足りない様子だ。


「まあ、暇だしやってみるか」



 これではザンバがルフォールと対話が出来るのは、まだまだのようだ。

 

タイトルは、猿ケ島/太宰治 より拝借

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