37話 おそようございますの魔道具屋さん
朝だ。
ベッドには、まだルーナが寝ている。
そしてその隣のベッドでは、さっきまでグラシアが寝ていた。
ここはヴィオの店の二階にある部屋だ。
「おーい! 飯持ってきたぞー!」
下からレネットの声がする。
朝食を持ってきてくれたようだ。
「おい、ルーナ。起きろ!」
「ふぇ? ココハドコ……あ、クロム。……おはよう」
これからずっと、毎朝このパターンなんだろうか?
ルーナを起こし、一階へと降りるとグラシアが朝食の準備をしていた。
是非ルーナも見習って欲しいものだ。
「ヴィオはまだ寝てるのか?」
「あいつが早起きするわけないだろ!」
全く持ってレネットの言う通りだ。
こっちはルーナに見習って欲しくないな。
「それに、あいつは朝食は食わねえぞ」
朝食を取らないと健康に悪いぞ。
アルコールの取り過ぎもだがな……
「ところで、昨日はどうだったんだ?」
朝食をとる俺たちに、レネットが昨日の成果を聞いて来た。
「昨日は柘榴猿が数匹といったところだな」
「鱗も拾ったのです♪」
「ジュエルドラゴンの鱗らしいですよ」
「おいおい、さっそく柘榴猿にジュエルドラゴンの鱗かよ! どうなってるんだ、お前ら」
どうなってるんだと言われても、どうもなってはいないぞ。
これが普通だ。
どちらかといえば、昨日こそが柘榴猿がメインだったしな。だ
今日のメインは異変の調査だから、柘榴猿は二の次だ。
なるべく早く森へ行きたいのだが、肝心のヴィオがまだ寝てるんだよな。
「ういっす! みんな早いな……」
朝食を食べ終わったころ、寝癖の髪のままのヴィオが起きた来た。
みんなが早いのではなく、お前が遅いのだよ。
「飯は食わんのか?」
「いらねぇ……それよりシャワー浴びてくるわ!」
朝シャワーかよ、夜のうちに浴びておけよ。
早く森へ行きたいんだがな……
ザンバとドーリも朝食を待ちわびてるぞ。
「ヴィオ、俺たちを先に森へ送ってくれないか? シャワーはそのあとゆっくり浴びてくれ」
「ん? ああ、いいぜ。今でいいのか?」
「ルーナ、グラシア、準備はいいか?」
「はい、なのです」
「大丈夫です。ザンバたちの朝食も準備出来てます」
二人とも大丈夫のようだ。
「じゃあ、いいみたいだな! 門よ、開け!」
え? おい!
ドーリに連絡しなのか? って……
「……急に来たな」
もう、森だな。
すでにドーリが目の前にいるな。
「いろいろあってな……まあ、気にするな」
「気にはしてないが、何のための遠話装置なのか…と思ってな」
うん。まあ……ヴィオだから、その辺の事は諦めろ。
「それより、ザンバはどうした?」
「……寝てる」
「見張りが大変だったのか?」
「いや……ドラゴンの結界の残滓のおかげで暇だっだな」
だろうな。
巣の結界魔法は、かなり強力だったのだろう。
ドラゴンがいなくなった今でも、よほどの魔物以外はこの巣跡の空き地に入れないはずだ。
「ではなぜ、ザンバはまだ寝てるんだ?」
「飲み過ぎだ。火酒をほぼ一人で空けた」
暇過ぎて飲み過ぎたか?
にしても、ふざけてるな。
見張りが爆睡してどうする気だ。
「おいザンバ、起きて飯を食え!」
テントに中で寝ているザンバを叩き起こす。
「うぇ…? どうした! 魔物か!!」
○ね!
魔物の夜襲にあって○ね! 馬鹿者が!!
「魔物など居らん。朝飯だ」
「なんだクロムか、驚かせるなよ」
「お前が勝手に驚いてるだけだ。いいから飯を食え」
どうしてこう大酒飲みばかりなんだ?
自重をしろ、自重を!
「ういーっす!」
来たよ、もう一人の大酒飲みが……
ザンバとドーリが小食を取り終わる頃、何の連絡もなく光とともに魔法陣からヴィオが現れた。
ドーリじゃないが、何のための遠話装置なのだろう。
せっかくの便利グッズが宝の持ち腐れだ。
「今日はどうすんだ? 森の奥に行くのか?」
来た早々、本題かよ。
どちらかと言うとお前を待ってたんだがな。
「そうするつもりだ。とりあえず俺とルーナ、ヴィオで行こうと思うが、どうだ?」
「おい! また留守番かよ」
「門を守るのも立派な仕事ですよ」
「そうだな」
さすがグラシアとドーリは分かってらっしゃる。
それに比べてザンバときたら……
「今日はクロムと一緒なのですか?」
ルーナが嬉しそうに聞いてくる。
「そのつもりだが…… ヴィオ、大丈夫だと思うか?」
「オレはかまわぇぞ。それに、お前が心配してるのはルーナじゃなくて、ザンバたちだろ?」
鋭いな。
ルーナがいる場所へ転移するのは簡単だが、ルーナを連れて行けば、転移で瞬時にここに戻るのは難しい。
ザンバたちに非常事態が起こっても、瞬時に対応するのが困難になる。
「だがルーナは連れて行きたいんだろ? そう言うと思ってな……これを用意したぜ!」
ヴィオはそう言って、黒と茶色が重なった、手のひら程の薄い板を袋から二つ出した。
見ようによってはスマホに見える。
「これは言ってみれば、遠話装置兼簡易魔標門だな」
素材は黒水晶と紫水晶のようだが、見た目は全くスマホだな。
「この二つの間で、遠話と転移が出来る魔道具だ。前に作っておいたのを思い出して、さっき探して持ってきたんだ」
便利だな。
ヴィオ、お前は某ネコ型ロボットか?
便利道具出しまくりじゃね?
「双方にそれなりの魔力が必要だが、ドーリがいるから大丈夫だろ」
ドーリが使える奴でよかった。
それに比べてザンバは……
「あと、レネットが渡し忘れた昼の弁当だ」
弁当も袋からか六つ出してきた。
うん。飯は大事だな、ルーナ的に。
しかし、異次元袋なのだろうが、もはや某ネコ型ロボットのポケットにしか思えなくなってきたな。
あとは青い服を着せて、猫耳でも付けてもらうだけだな。
いや……耳は無いな…………
タイトルは、谷山浩子の「お早うございますの帽子屋さん」より拝借




